ゆでたまご先生の短編集「お~い!!マンガだよ~ん」

短編集の究極系?「お~い!!マンガだよ~ん」











短編集は宝の山である!

そんな言葉を皆様はご存知でしょうか?聞いたことがないのも無理はありません。J君が今さっき考えましたから。そう、一人のマンガ家の光と影がもっとも浮き彫りになる作品といえばなんといっても短編集。できればファンに知られたくなかった若気の至りをあんなことやこんなことまで晒されてしまうまさにお宝作品集なのであります。



当サイトでご紹介済みの短編集といえば、伝説の自虐パロディ「リングにこけろ」が掲載されている車田正美先生の「実録!神輪会」や、すごい身勝手なキャプテン・翼太郎が登場する高橋陽一先生の「100Mジャンパー」がありますが、まだマンガ史上、最も重要な短編集をご紹介しておりませんでした。それはズバリ、ゆでたまご先生の短編集「お~い!!マンガだよ~ん」であります。


「お~い!!マンガだよ~ん」・・・この短編集に対する意気込みを微塵も感じさせない脱力感溢れるタイトルはいかがでしょうか?さすがゆで先生というほかありませんね。タイトルのセンスがヤバすぎます。ヤバ過ぎて逆にダサカッコよくすらあります。



早速、本短編集に掲載されているゆでイズム溢れる珠玉の作品群を、ものすごくサラッとご紹介いたしましょう。あまりに濃すぎるので深入りすると危険です







■喰いだおれ野郎



伝説のゆでグルメ作品「グルマンくん」のベースになっていると思われる漫画がこの「喰いだおれ野郎 」。タイトルの投げやり加減も相当なものですが、主人公のフケ顔っぷりがグルマンくんの更に上を行っており、30代後半の面構えに小学生の体形をカップリングした気持ちの悪い生き物がこの作品の主人公。こんなのが食べ物扱っていいのか。



 軽くヤバい





ストーリーは喰いだおれ野郎こと、主人公のマスヒロくんとそのライバルフランス料理屋の息子三ツ星吟味くんが遠足の弁当を競ってのバトルを繰り広げます。



 
脅威の弁当箱





もはや弁当とは呼べないレベルの巨大弁当箱から始まり、地面を走り回るF1カー型の弁当が最高にイカしてます。こんな弁当食ったら食あたりしそうですね。



 F1カー弁当







■あすとろボーヤI /あすとろボーヤII



ゆでたまご版鉄腕アトム。宇宙人と地球人のハーフの小柄な主人公が活躍する物語で、その微妙なタイトル付けからも鉄腕アトムを意識しているのが分かりますが、子供向けマンガとしてもギャグマンガとしてもいまいち特徴がなく、正直かなり読んでいてつらいものがあります。



 
全てにおいてイマイチなキャラ



巻末の先生のコメントで「評判が悪かった」と認めておられるのが潔いです。







■キン肉マンスペシャル ロビン・メモの巻



いわゆるキン肉マン外伝。ロビンマスクがキン肉マンやテリーマンなどの弱点を事細かに記していた「ロビン・メモ」を悪者超人に盗まれてしまい、キン肉マン達正義超人がピンチに陥るという、今だったら個人情報保護法の絡みで訴訟に発展しかねないようなロビンマスクの大失策話。



 問題のロビン・メモ





ページ数の関係か、大ピンチの状態からわずかひとコマで形勢が逆転し、最後は強引にハッピーエンドというご都合主義的なオチがゆでたまご的様式美を感じさせます。



 
とってつけたようなフィニッシュ







■デスゲーム



ブルース・リーの「死亡遊戯」に激しくインスパイヤされて描かれたゆでたまご版死亡遊戯



 タイトルがそのまんますぎ



カンフーの達人の主人公ワンが悪の組織に息子を人質に取られ、なぜか七重の塔にいる番人達を倒さなければいけない羽目になります。



 
それはプロレスでは・・・?



死亡遊戯にはないゆでたまご先生独自の要素としては、カンフーの達人のはずの主人公が、やたらとプロレス技を多用したり、





 
ゆでイズム炸裂



2人目の敵がなぜかアントニオ猪木みたいで卍固めをかけられたり、





 はしょりすぎ



例によってページ数の関係か4階から6階の敵をまとめてひとコマで倒したり(なら七重の塔とかにしなけりゃいいのに・・・)などなど、やたらとゆでイズム溢れる作品になっています。







■勇者ビッグボディ



ゴリラの体を移植されたヒーローが、自分の本当の体を奪っていった悪党共から体を奪い返すというストーリー。



 
毛むくじゃらヒーロー



主人公が毛むくじゃらで見るに耐えないという辺りにコンセプトの斬新さを感じます。なぜか「アゴなしゲンとオレ物語」を思い起こさせてしまう存在自体切ない漫画です。





 微妙な必殺技



主人公の必殺技「大胸筋斬」もわりと意味不明です。

巻末コメントではゆでたまご先生がコンセプトをでかくしすぎて失敗したと潔く認めておられます。うん、これは紛れもなく万人が認める失敗作だと思います。







■下町戦争



ゆでたまご作品で隠れキャラ的に随所に登場するドンピカーデリカオーネ(カプコンのゲームでいう弥七的存在)を主人公にした、ゆでたまご版ゴッドファーザー。マシンガンの替わりにスイカの種を飛ばして他のファミリーと縄張り争いをする小粋なギャグマンガです。ゆで先生の思い入れの高さからか、おそらくこの短編集の中で一番楽しめる作品でしょう。



 
先生おなじみのキャラです





というわけで、ゆでたまご先生の伝説の短編集「お~い!!マンガだよ~ん」、いかがだったでしょうか?「ゆでたまご短編集1」とありながら、なぜか短編集2が出たという話を聞かないのもなにか複雑な大人の事情を感じさせますが、短編集が三度の飯より好きという短編集グルメな方はもちろん、ゆでたまごファンなら必読のマストアイテムであることはいうまでもありません。読んで、そして泣くべし!(いろんな意味で)





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関連) グルマンくん キックボクサーマモル 実録!神輪会 100Mジャンパー
参考)  Amazon →   レビュー →   短編集リスト → 

出典)  「お~い!!マンガだよ~ん ゆでたまご短編集1」 

      集英社/ゆでたまご

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