壮絶!リストラマンガの世界 「55歳の地図」

壮絶!リストラマンガの世界 「55歳の地図」

職のためなら何でもするズラ!

銭ゲバっぽいイントロでこんにちはJ君です。凄まじいばかりの経済不況が吹き荒れており、昨年末の派遣切り問題から始まって内定取り消し、正社員切りまでに波及するリストラもいよいよ本格化。結構シャレになってない状況ですよね。

こんなサイトを更新しているJ君も、そろそろ会社をクビになってもおかしくな・・・まあその話はいいとして、今回はそんな経済不況下に不幸にしてリストラにあってしまった人達はどう生きていくのか?そんな生き様を描くシリーズ「リストラマンガの世界」をご紹介してまいります。


さて、第一弾としてご紹介したいのは「55歳の地図」という作品。本作品は「実録!リストラ漫画家遍路旅」というサブタイトルにもありますとおり、仕事が無くなり食えなくなってしまった漫画家、黒咲一人先生が自分探しのために四国八十八ヶ所の寺をまわる旅、いわゆる「お遍路さん」をするという壮絶なドキュメントマンガです。

リストラ漫画家です

漫画家は実質フリーランスであり「リストラ」という表現は厳密にはおかしい気がするのですが、なんとなくニュアンスは伝わりますね。漫画家が一生食っていくには非常に難しい職業であるということは「バクマン。」などでも描かれている通りですが、才能と実力のみの世界に生きるフリーの人たちこそサラリーマン以上に厳しい状況におかれているといえます。

リストラ決意表明

J君は知らなかったのですが黒咲先生の代表作としては「ハスラー・ザ・キッド」「無頼風」などがあり、知る人ぞ知る名作のようです。そんな黒咲先生ですが、

ジワジワ迫る無職の足音

2003年頃から原稿の依頼が途絶え、連載していた雑誌が廃刊になったりと、マンガの仕事が徐々に無くなり着々と無職へと近づいていきます。そして、遂に完全に漫画家廃業モードになった黒咲先生は身辺整理を始めます。しかしハローワークに行っても漫画しか描けない55歳のオッサンには職が見つかるはずもなく・・・。


まあ、マンガ喫茶だしねえ・・・

マンガ喫茶に生原稿を無償提供しようとしたのに断られたり・・・。

これは切ない

そして、結局原稿や書き溜めていたネームは燃えるゴミへ。いろいろと切な過ぎますね。

さとう輝先生

そんな黒咲先生を心配して駆けつけてきたのが漫画家仲間のさとう輝先生

ちなみに当サイトで以前ご紹介した異常に長いドライバーが登場するゴルフマンガ「アルバトロス」の作者でもありますが、現在は「江戸前の旬」がロングヒットしておりリストラとは無縁なお方です。

ナイスガイ金太郎

さらに御大、本宮”金太郎”ひろ志先生もビルのワンフロアーをタダで貸してくれるなどと言ってくれます・・・うーん、いい人だ。

犬マンガの帝王「銀牙」「銀牙伝説WEED」などでおなじみ高橋よしひろ先生も電話をかけてきました。

完全に犬化してる・・・

なんとビックリ。高橋先生って犬だったんですか!

いや、薄々そうじゃないかとも思ってたんですが・・・そうですか。やはり犬か。

犬働かせすぎ!

驚いたことにアシスタントまでも犬・・・完全にワンワン共和国状態ですね。だから「甲冑の戦士 雅武」みたいな作品が生まれるんですねわかります。

せっかく心配して声をかけてくれてるんだから、素直に仕事手伝えばいいじゃんと思うのですが、そこはきっとかつて自分も一線級で描いていたというプライドがあるのでしょう。あるいは犬と一緒に仕事するのが嫌だったのかもしれませんが・・・結局、自分探しの道、四国遍路の旅を選びます。

「55歳の地図」というタイトルでふと尾崎豊の「17歳の地図」という作品を思い出してしまいます。尾崎豊は「盗んだバイクで走り出す」のですが、黒咲先生の場合は

55の夜

「5000円で買った中古三輪チャリ」で走り出します。これが55歳の青春なんでしょうか・・・。あまりの先行き不透明感で読んでるこっちも暗澹たる気分になります。

それにしても黒咲先生、どうも要領が悪すぎるというか・・・自らピンチを招きいれている感があります。

出発の日は冬が差しせまる11月、どう考えても春や夏に比べて、放浪旅をするには辛い時期です。さらに土砂降りの雨。なにもこんな日を選ばなくても・・・って気がしますが。しかも運が悪いことに途中で三輪車のタイヤがパンク

トラブル続き

パンクを修理するために土砂降りの中を右往左往し、予定のフェリーの時間に間に合わず・・・。

まだ東京です

四国に渡る前に既に瀕死です。まだ東京なのに・・・大丈夫なのか、こんなんで。

マイホームて!

ようやっと船で徳島へ上陸。旅路用にホームセンターでテントを買って一国一城の主気分に。

なんというポジティブ思考

一戸建て!いや、それは・・・テントとはだいぶ違う気が。

しかし、相変わらず四国に渡った後も黒咲先生大ピンチです。なにしろ、総重量20キロの全財産を自転車に積んでいるため、漕ぐことが困難。結局、常に自転車を押すことになります。それってかなり無謀なのでは・・・?

ちゃんとメシ食ってるか?

案の定、徳島で早速死にそうになっている黒咲先生。なんと、朝から胃袋に入れたのは缶コーヒーとビールのみ・・・カロリーメイトぐらい買っておけばいいのに。ちなみに、まだお遍路さんのスタート地点にも立ってません・・・。まさにスペランカー状態。頑張れ55歳。

まさに亡者

ようやっとスタート地点である第一番札所「霊山寺」に到着。ここでお遍路さんのコスプレ・・・もとい衣装に着替え、お遍路さんに変身。しかし、延々と続く山道を20キロの重量を積んだ自転車を押し続けるわけですからこれは相当大変です。

ボロボロすぎ

せっかく有り金をつぎ込んで宿に泊まっても風邪を引いてしまい、食事もとれずボロボロになっている黒咲先生。死に装束風のお遍路さんのカッコも相まって、いつ逝ってもおかしくない雰囲気。読者をもれなく「おくりびと」気分にしてくれます。

・・・J君はお遍路のことを「ちょっとスケールのでかいスタンプラリー」ぐらいに思ってたのですが、どうやら金無し、宿無しのガチでやると本当にアドベンチャー状態になるようです。まあ、ここまで要領がアレなのはさすがに黒咲先生だけのような気もするのですが・・・そんな常に瀕死の黒崎先生を見るに見かねたのか、謎のオヤジが登場。

謎のオヤジ登場

「死ぬで!!」

このハードボイルドなホームレス風のオッサンは一心さんという人で、彷徨えるお遍路さんに付き添ってアドバイスしてくれる、お遍路の「先達さん」をライフワークにしている人でした。まさに黒咲先生の命の恩人。

ラーメン美味そう

作品の中盤まで、ラーメンを作ってくれたり、テントを張るベストポジションを教えてくれたり、効率のよい寺の周り方などをアドバイスしてくれたり、お供え物のゲットの仕方まで・・・とにかく至れり尽くせりで生きる方法を教えてくれます。

農作物ゲット

お供えゲット

これが都会だったらこの後、コンサル料取られたり、魔除けのツボを売りつけられても文句が言えない状況ですが、一心さんの場合はどうやらそういうのは一切無しの完全ボランティア精神です。何といういい人。

さらに、この一心さん以外にも、お遍路さんの最中、親切にしてくれる人が多数出現してギリギリでピンチを凌いでいく黒咲先生。

代理参拝というそうです

お遍路さんにお布施をしてくれる老人

無料宿泊所・・・すげえ

無料宿泊所のリストをくれる人

っていうか、無料宿泊所・・・そんなのもあるのか!

あったか四国その1

タダで修理してくれる自転車屋さん

あったか四国その2

自転車をタダで修理してくれた上、ミカンまでくれる町工場の人

あったか四国その3

壊れた自転車を家族総出でタダで直してくれる地元の駐在さん

ヤバイです。四国の人あったか過ぎて泣ける!

あと、黒咲先生の自転車壊れすぎ!

そんな感じで何度も死にそうになりながら88か所の寺を巡り切った黒咲先生。しかし四国巡礼の真のゴールはさらに高野山へ行くことなのです。その高野山が完全に冬登山モード。遭難必至です。

激寒の高野山

お呼ばれしてます

あまりの寒さに何度もあっちの世界にお呼ばれする黒咲先生。ゴールを目前にして息絶えるのか!?

というところで間一髪。通りがかった車に乗せてもらいなんとか高野山にたどり着くのでした。最後まで人の優しさに頼り切って見事ゴール!本当によかったよかった。

まさに九死に一生

冷静に考えると、数々の申し出を振り切ってまでお遍路さんに行って、自分探しはできたけど職は探せていなくて、実は何の解決にもなってないという元も子も無いオチなのですが、結局お遍路ネタでこのマンガが描けているのですから、これこそがまさにお遍路さんのご利益なのかもしれませんね。

というわけで、リストラマンガというだけでなく、画期的なお遍路ドキュメントマンガでもあった「55歳の地図」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?

不幸にもリストラにあってしまった方は、一念発起して「お遍路さん」をしてみるという選択ももしかしたらアリなのかもしれません。自分探しに出て戻ってくる頃には景気が回復しているかも・・・。

ちなみに「お遍路さんに着て行く服がない」という人は、家でお遍路さん体験する方法もありますのでそっちをやってみるといいかもしれません。J君はインドア派なのでやるならこっちにしたいと思います・・・。

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出典) 55歳の地図  黒咲一人/日本文芸社

参考) Amazon → 

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