「野球賭博」微妙にタイムリーな社会派ギャンブルマンガ

微妙にタイムリーな社会派ギャンブルマンガ 「野球賭博」











野球賭博ちょっといい話!

W杯とか冬季オリンピックとかなにかとスポーツの話題に事欠かない2010年の上半期でしたが、J君が個人的に一番気になったスポーツの話題はなんといっても「野球賭博」です。「野球賭博」なのになぜか相撲関連ワードになっているところがこのキーワードの摩訶不思議なところですね。



そんな角界を揺るがしている野球賭博問題ですが、いったい何が問題なのか一般的にはあんまり馴染みがないですよね?正直J君もよく知りません。しかしそんな疑問を解決するマンガを発見してしまいました。その名もズバリ「野球賭博」です。まさにこの微妙なタイミングで紹介するにふさわしい作品と呼べるのではないでしょうか。




ちなみに、野球賭博の話が出てくるマンガというのが他に存在するのかを調べてみたところ、「ラストイニング」「ラストニュース」「白竜」「名門!第三野球部」などがありました。しかし、いずれも作品のほんの一部で取り上げているだけです。どーんと野球賭博そのものをフィーチャーしたマンガというのはおそらく今回ご紹介する「野球賭博」だけだと思われます。まあいかにもマンガにするニーズがなさそうですから当然といえば当然ですね。そう考えるとものすごく異質な存在のマンガです。まあ実際、単行本の表紙からしてすごく異質なんですけど。なにしろ





サングラスまで赤い



超赤いです!

表紙が赤いだけならまだしも、サングラスまで赤いって尋常じゃないですよね。まるで内容がレッドゾーンであることを物語っているかのようですね。(考えすぎ)



というわけで早速作品をご紹介していきましょう。本日ご紹介する「野球賭博」というマンガは、実は野球をテーマにした劇画短編集なのですが、全体を通してプロ野球や高校野球で一軍にあがれないまま落ちぶれていった日陰男たちの悲哀をテーマにしています。普通の野球選手がテーマのマンガではなくて、落ちぶれた野球選手専門です。すごい短編集のコンセプトですよね。なんでそんなマニアックな短編集を作ろうと思ったんでしょうか・・・。





たとえば、第一話は、ドラフト5位でスターズ(明らかに巨人がモデル)に入団したもののフォーム改造で肘を壊し、結局一軍にあがることが出来ずに解雇になった滝田という男の物語です。



日の当たらなかった男



超恨んでます







球団の無理な投球フォーム改造のせいで人生を狂わされたことを恨んでいる滝田は、なんとハンクアーロンの755本塁打の記録にあと一本と迫ったスターズの剛選手(明らかに王貞治氏がモデル) を誘拐するという暴挙に出ます。そして身代金1億円を奪い取った挙句、剛選手を殺してしまおうという計画です。100%ピュア逆恨みですね。



スター選手を誘拐&監禁







剛選手誘拐の一報を聞いた刑事達は・・・



カツ丼かよ!



「畜生!なんてことしやがる。明日の中日戦には来々軒の上カツ丼がかかってるってぇのに!」

なんと、剛選手が記録達成するかどうかでカツ丼を賭けていた模様。

ていうか、お前らが賭け事やっちゃダメだろ・・・



結局、最終的には逃走中に警察によって殺されてしまう滝田。世にも悲惨なお話です。この話をまとめますと次のようになります。



プロ野球入団 ⇒ 球団による投球フォーム改造 ⇒ 肘を壊す ⇒ 二軍で燻ぶり続けた後引退 ⇒ TVに出てるスター選手に嫉妬 ⇒ 選手を誘拐 ⇒ 全国に指名手配 ⇒ 警察に銃で撃たれて死亡



最後は銃殺



ルナ先生の妄想並み



プロ野球選手として大成できなかった末路が銃殺という、なんという転落人生・・・これはもう「いけない!ルナ先生」の妄想チャートレベルの悲惨さですね。・・・そんな感じの日の当たらない野球選手たちの切ない話が盛り沢山なわけですが、やはりメインとなるのは第二話の野球賭博ネタの話です。タイトルは「ハンディ師竜二」



主人公はタイトルの通り、ハンディ師の東竜二という男です。野球賭博にはハンディ師と呼ばれる、野球の試合に独自のハンディを設定して賭けを盛り上げるための仕掛人が存在します。



野球賭博のキーマンハンディ師





ハンディ師の竜二は現在はヤクザですが、元プロ野球選手で関西一の凄腕のハンディ師とよばれています。このように


ハンディを設定します



「竜二、明日のハンディは何点や」





目力がすごいですね



「パイレーツに2.5点やな!(くわっ)」

みたいな感じで、ハンディが設定されます。たとえばジャイアンツVSタイガースの試合でタイガースが絶好調で圧倒的大差でタイガースが勝利すると思われる場合は、ハンディ師はたとえばタイガースに2.5のハンディを課します。その場合、実際の試合でタイガースが2点差で勝ったとしても賭けの世界では負けとなります。



ちなみに、0.5というのは、実際の試合が引き分けに終わった場合でも白黒をはっきりさせるために設定されています。こうやって、ハンディ師のさじ加減で実際には大差がつきそうな試合でも緊迫感を煽ることができるのです。そのためハンディ師は元プロ野球選手のような相当プロ野球に詳しい人物がやるのです。



・・・って、やたらルールを詳しく書いちゃってますけど、当サイトを読んでる良い子のみんなはくれぐれもやらないように。人生という名の名古屋場所が中止になっても知りませんよ!



さて、そんな凄腕のハンディ師竜二ですが、客の挑発に乗ってつい八百長賭博に手を出してしまいます。実際のプロ野球選手を脅迫するなどして、勝敗に関わるような八百長をさせてしまう行為です。



目をつけたのはパイレーツのエース投手、尾形。実は竜二とは甲子園時代のライバルでした。尾形投手は、なんと四日連続登板をするなど超人的な活躍をしていたのですが、実はドラッグの「スピード」をやってギンギンになって投げていたのでした。それに気づいた竜二は登板前にスピードを飲む瞬間をカメラで撮影し、それをネタに脅迫したのです。っていうかよく考えると試合中にドラッグやってるエースってのもかなりありえない感じですけど・・・。



現役選手を脅迫





しかし、今でも野球を愛しており、高校時代ライバルだった尾形を苦しめたことに良心の呵責を覚えた竜二はもう八百長はしないと誓うのです。ところが八百長賭博がめちゃくちゃ儲かることを知った組長達は、竜二にもっと尾形に八百長をやらせるように命令します。抵抗した竜二は組と仲間割れ・・・。



仲間割れ





腹をドスで刺されながらも球場に駆けつけ、試合中に苦悩している尾形の目の前でネガを焼き捨てる竜二。





ちょっといい話になってます



「尾形、これであんたは自由の身や!もうなにも恐れることはないで!」

「いいんだな、力いっぱい投げていいんだな、東」


野球を愛する一人の男として最後の良心が働いたのです。しかしその後、組からの刺客に刺され、力尽きてしまう竜二。





いろいろ間違ってます



「歓声や・・・大歓声や、わ、わしは帰って来たんや、この歓声の中に・・・」

なぜか最後がちょっと泣ける話風になってますけど、はじめに八百長賭博を始めたのは竜二本人ですので、どう考えても自業自得です。しかも自分が歓声の中に帰ってきたとか言ってるのも明らかに勘違いですし。



というわけで野球賭博に関わったがために、ルナ先生もビックリの悲惨な末路を迎えてしまったハンディ師竜二の話でした。

繰り返しますが、こんな悲惨な末路が待っていますので賭博にはくれぐれも手を出さないように!人生という名の地方巡業が中止になってしまいますよ!







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出典)「野球賭博」 谷あく斗/ 村岡栄一 / 芳文社

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