「プラ課長 錦四郎」哀愁のガンプラ中間管理職

哀愁のガンプラ中間管理職 「プラ課長 錦四郎」











課長がガンプラ作って何が悪い!

男子にとって永遠不滅のロボットアニメであるガンダムシリーズがこのところまた熱くなってきましたね。「機動戦士ガンダムAGE」「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」などがアニメ化されることが発表され、大人から子供まで楽しめるガンダムラインナップが勢揃いといった趣です。

そのガンダムシリーズの最初の作品である「機動戦士ガンダム」は1980年代にガンプラと呼ばれるプラモデルが社会現象になるほどのブームとなり、ガンダム人気を後押ししていたことは有名です。今回ご紹介するのはそんなガンプラブームを駆け抜けた中間管理職の物語を描くプラモマンガ「プラ課長錦四郎」です。


1980年代に訪れた空前のガンプラブームはJ君にとってもまさにリアルタイムの体験でした。ガンプラはあまりの人気で入手困難なため、数カ月前から予約したり、家族総出でプラモ屋に並んだり、別の高額商品と抱き合わせ販売されたりといろんな社会現象が発生しました。入手困難すぎて「モビルフォース ガンガル」「ザ・アニメージ」といったパチものが出回ったぐらいです。

 
超入手困難

当時の小学生の間には所有しているガンプラによるヒエラルキーが歴然と存在しており、最も人気のある入手困難ガンプラ(シャア専用ザクガンダム等)を持っているものがクラスの男子たちの中で最も地位が高くホワイトベースムサイボールといった不人気ガンプラしか所有していない子供達はクラスの隅っこで羨望の眼差しで彼らを眺めていたものです。ちなみにJ君が持っていたのは超不人気ガンプラ「ドダイYS」だったので後者でした。暗い小学生時代を送ったのは今でもトラウマです。

さて、そんなガンプラブームを駆け抜けたオヤジたちのマンガ 「プラ課長 錦四郎」をご紹介する前に、そのルーツとなる二つの作品を紹介しておかなければなりません。

 
ガンプラマンガのレジェンド

一つ目は、ガンプラブームの事実上の立役者であるコミックボンボンに連載されていた「プラモ狂四郎」(原作:クラフト団=安井尚志先生、画:やまと虹一先生)というマンガです。プラモデル題材のマンガといえばどうしても「ディオラマ大作戦」「ガンプラ甲子園」のように作ったプラモデルを並べて完成度を競うプラモ品評バトルのような展開になりがちですが、「プラモ狂四郎」プラモシミュレーションというバーチャルリアリティのシステムを導入したところが何よりも斬新でした。

 
普通のプラモ屋の店内です

プラモシミュレーションは、自分達の作ったガンプラに乗り込んでまるでアニメのガンダムのように闘えるというガンプラファンの夢をかなえたシステムなのです。これが街のプラモ屋に普通に置かれていたわけですから、これを1980年代に開発していたプラモ屋のおっちゃんは実はマーク・ザッカーバーグの100倍ぐらい天才なんじゃないかと思います。

 
まさに夢のシステム

 
知名度低めの新狂四郎

二つ目は「プラモ狂四郎」の続編となる「新プラモ狂四郎」という作品。初代プラモ狂四郎の後を継ぐ二代目プラモ狂四郎の話ですが、この頃はガンプラブームが過ぎた後で、プラモデルに対する風当たりが強い状況になっています。
大日本造形学園に入学した主人公、新京四郎(あらたきょうしろう)は初代プラモ狂四郎に憧れて、プラモ部へ入部するのですが、じつはプラモ部に入っている生徒は学園内ではクズの集まりという扱いになっており、学園生活で思いっきり虐げられます。その象徴的なひとコマがこちら。

 
何この差別

「ばかもーん プラモ部などに入るやつに制服はない ちゃんと着たければもっと勉強してファミコン部やラジコン部に入れるようにしろ!」
なんと、プラモはファミコンやラジコンよりはるか下層のカス扱い。あれほど栄華を誇っていたガンプラがなんという落ちぶれ方でしょうか。っていうか先生のセリフが人として信じがたいですね。いろいろと。

ちなみに「新プラモ狂四郎」ではプラモシミュレーションの進化版でより格闘技色の強いアーマードバトルというシステムが導入されています。プラモシミュレーションはバトルでプラモデルが破損することはあっても肉体へのダメージはありませんでした。しかし進化したアーマードバトルでは実際に肉体へもダメージが発生するのです・・・って思いっきり悪い方に向かってるんですけど。はたして進化なのか、これは?

 
ガンプラでプロレス

これら「プラモ狂四郎シリーズ」と同じ世界観を持ちつつ、一児の父となったかつてのガンプラ少年、鏑木錦四郎が息子のSDガンダム製作を手伝うのをきっかけに、少年時代を思い出して再びガンプラの世界へ舞い戻るという作品が「プラ課長錦四郎」です。

 
大人のプラモ狂四郎

この「プラ課長錦四郎」の掲載誌がまたすごくて、なんと日本初の課長専門誌「月刊カチョー」という雑誌に連載されていました。
課長専門誌て・・・なんというチャレンジングなコンセプトなんでしょうか。しかもキャッチフレーズが「部長読禁!」。部長は読んじゃだめなのかよ・・・。J君的にはこういったニッチ中のニッチを狙ってくるセンスは大好きなのですが、大方の予想通り(?)第三号であえなく休刊となりました。まあ、課長ぐらいの中間管理職のお父さんが一番お金持ってないですからね・・・パパにはね、新しい雑誌を買うようなおこずかいの余裕はないのですよ。

 
息子が尊敬の眼差し

「プラ課長錦四郎」の内容をご紹介しましょう。商社に勤める課長・鏑木錦四郎は仕事がイマイチのダメな感じの課長です。家でも休日は寝てばっかりの残念なお父さんという感じなのですが、ある日SDガンダムのプラモデルを作っている息子に、かつてガンプラ少年時代に培ったプラモテクを披露。とたんに息子の目が輝きだします。ガンプラで息子の尊敬を得ることができたのです。

 
ガンプラスピリットが復活

その後、息子のガンプライベントに付き添いで参加した錦四郎。そこで、現在模型店をやっているかつてのモデラー仲間と再開。最新のガンプラ事情に刺激を受けまくった錦四郎は、ついに少年時代以来封印していたガンプラの世界に本格的に突入することになるのです。

 
ちょっ何プレゼンしてんの!

 
うわさになってます

封印されていたガンプラスピリットが蘇り、取り付かれたようにガンプラに夢中になる錦四郎。仕事中も取引先に電話しながらフィギュアにカラーを塗ったり、プレゼン中に間違ってガンプラの取説を読み上げたりして「あれがうわさのガンプラ課長か」とか言われたりしています。ガンプラ魂の復活により、仕事の方のダメさ加減はさらに加速してる感じですね・・・。

 
ついにクビの危機が・・・

目に余るガンプラへの傾倒ぶりやミスの連発でついに会社の重役に激怒される錦四郎。ガンプラのせいでついにクビになってしまうのか?覚悟を決める錦四郎でしたが・・・。

 
上司がゴリゴリのミリオタ

なんと実は重役も重度のミリオタでプラモが大好きというオチでした。クビになるどころかプライベートでも仲良くなっちゃいました。ガンプラやって出世コースに乗るという極めて稀なケースですね。ほぼ上司公認でガンプラ製作ができるようになった錦四郎。そんな会社あるのかよ・・・。

 
完全手作りです

「フルスクラッチのGアーマーだ!」
フルスクラッチというのは既製のプラモデルではなく、プラ板を組み合わせて完全に自作で作った模型です。錦四郎のガンプラ技術がものすごいレベルであることを物語っていますね。そして、ついに狂四郎シリーズの代名詞、プラモシミュレーションで若手モデラーと対決をすることになるのです。

 
現代版プラモシミュレーション

親子が力を合わせてガンプラでプラモシミュレーション!まさしくガンプラ世代感涙のシーンと言えますね。・・・例によってどういう仕組みになってるのかはさっぱり分かりませんけど。

というわけで、アラフォー世代感涙のガンプラマンガ三部作「プラモ狂四郎」「新プラモ狂四郎」「プラ課長錦四郎」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?「プラ課長錦四郎」は残念ながら「月刊カチョー」の廃刊に伴い単行本にもなることなく、非常に入手困難な状況ですが、「プラモ狂四郎」「新プラモ狂四郎」については復刻版も豊富に出回っていますので比較的容易に手に入るのではないかと思います。少年時代にガンプラにハマっていた方はこの機会に読み直してみてはいかがでしょうか?願わくば「プラ課長錦四郎」も何らかの形で復刻して欲しいと願うばかりです。その時は部長読禁にしないで頂きたいですね。





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出典) 「プラモ狂四郎」 「新プラモ狂四郎」 クラフト団/やまと虹一/講談社
 「プラ課長錦四郎」 クラフト団/やまと虹一/日本ジャーナル出版
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