伝説の体操マンガ『空のキャンバス』が重すぎる……登場人物全員悲劇! 全員号泣! 

登場人物全員悲劇! 全員号泣! 伝説の体操マンガ『空のキャンバス』が重すぎる……(日刊サイゾー掲載2017/10/21)

 日本を代表する男子体操選手といえば内村航平、そして白井健三。白熱する2人のライバル関係もあり、東京オリンピックに向けて、体操ニッポンの活躍が大いに期待できるところですが、マンガの世界で男子体操マンガっていうと……とても数が少ないです。しかしその中で突き抜けた存在の作品がありました。

そう、男子体操マンガの金字塔といえば、今泉伸二先生の『空のキャンバス』をおいて他にないのであります。「週刊少年ジャンプ」(集英社)誌上において、1986年から87年にかけて連載され、連載期間こそ長くないものの、なんの予兆もなく突如として登場した体操マンガは、その感動的ストーリーでジャンプ読者に多大なインパクトを残しました。

『空のキャンバス』の凄さは、男子器械体操という競技の地味さを補うかのように徹底的に盛り込まれた「泣き」要素にあります。主人公の北野太一やその周囲の登場人物に、これでもかと言わんばかりに次から次へと襲いかかる苦難。そして作品終盤では、ページをめくるたびに誰かが号泣しているという……これほどまでに暑苦しく息苦しく、あざといまでにお涙頂戴な展開のマンガは、ジャンルに関係なく、なかなかお目にかかれるものではありません。


号泣シーン多数

主人公、北野は14歳の中学生。幼少期に出会った、月面宙返り(ムーンサルト)ができる運動神経抜群の少年「あいつ」の存在を追いかけて体操に打ち込み、天才的な才能を開花させます。しかし、太一はその「あいつ」が崖から落ちたのを助けた時に脊椎に負った大けがが原因で全身麻痺に陥り、回復した今も、いつ再発するかわからないという切迫した状況にあります。


子供の頃の太一と榛名

本作品のヒロイン・赤城榛名は、かつて体操の五輪選手だった赤城コーチを父に持つ、女子体操のジュニアチャンピオン。そんな榛名の家に、体操のトレーニングをすることになった太一が居候することになります。少年漫画の主人公らしく、エッチなイタズラを連発する太一に榛名はビンタで応酬するなど、ツンデレ上等のラブコメ要素が盛り込まれています。


最初の頃はドタバタラブコメだったが・・・

そして実は、幼少期の榛名こそ、太一がずっとライバルとして追いかけてきた「あいつ」だったのです。しかし、ずっと追いかけてきたライバルが女だったことを知ったら、ショックを受けて立ち直れないかもしれない……そう思った榛名は、真実を告げることを封印します。おバカなラブコメ展開と、登場人物たちのさまざまな苦悩が表裏一体となってストーリーが進んでいきます。

というわけで、『空のキャンバス』の凄いところを、以下にまとめてみました。

 

■北野太一に襲いかかる悲劇の総量が半端じゃない

体操でジュニアチャンピオンを狙えるほどの圧倒的な才能を持ちながら、幼少期の脊椎のケガが元で、競技中に突然腕が動かなくなったり目が見えなくなる、などの後遺症を抱えています。


とにかく不憫

医師には、いずれは全身が麻痺して死ぬ、とサジを投げられた状態。そんな中、宿命のライバル「あいつ」と闘うことだけを目標に気力で体操をしているのですが、その「あいつ」は、実は女の子。しかも一つ屋根の下の同居人、赤城榛名です。しかし太一は作品中で、決してその事実を知らされることはないのです。なんという悲劇!

作品後半、成功率は限りなく低いが、うまくいくかもしれないという難手術を受け、見事手術は成功! 奇跡が起こったかに思われましたが、手術後、記憶喪失に陥り、今までのことをすべて忘れてしまいます。なんという悲劇!


記憶喪失もあります

記憶喪失のまま、過去を思い出すために体操に打ち込む太一、次第に記憶が蘇ってきます。そして、ついに記憶が回復! 再び奇跡が起こったかに思われましたが……全身麻痺の症状が再び太一を襲います。なんという悲劇!

最初から最後まで、太一が、とにかく不憫なのです。スポーツマンガ界における悲劇のキャラクターの代表格といえば、心臓病を抱えたままサッカーをする、キャプテン翼の三杉くんですが、正直、北野太一のほうが数段上の悲劇を背負ってます。

 

■偽物の「あいつ」が復数登場し、事態がややこしくなる

いつか「あいつ」と出会えると信じて、命がけで体操に取り組む太一と、自分が「あいつ」だと名乗り出ることができない榛名。そんな太一と榛名の状況を見かねてか、太一の前に立ちはだかったライバル、五十嵐俊が太一を励ますため……


偽物「あいつ」その1

「忘れたのかい、ボクだよ!! ずっと昔、木駄町の公園できみに助けられたじゃないか!!」

などと、自分が「あいつ」だと名乗り出ます。完全に偽者なのですが、太一はこれ信じてしまいます。まあ後で嘘がバレるのですが。

2人目の偽「あいつ」は、全日本ジュニアチャンピオンの鶴巻公次。全身麻痺が進行して、ほとんど動けない状態で体操の練習に打ち込む北野の姿を見るに見かねて


偽物「あいつ」その2

「わからんのかーっ!! オレはお前のライバルだ!! 遠い昔おまえに助けられた男だぞ!!」

と「あいつ」宣言。すでに目が見えず、判断力もなくなっている太一は、あっさり信じてしまいます。しかし、これがきっかけで、太一は手術を受ける決意をすることになります。ナイス偽物!

実は、知らぬは太一ばかりなりで、周りの人はほとんど、榛名が「あいつ」であると知っているのです。このことが何よりも悲劇的という感じがします。

 

■太一以外のキャラの生きざまも結構壮絶

『空のキャンバス』では、主人公の太一だけが悲劇を背負っているわけではありません。太一の周りのサブキャラの悲劇っぷりも、なかなかのものです。

・五十嵐俊

太一の初期のライバルとして登場した五十嵐俊は、少年院出身。少年院のワルな仲間たちの期待を一身に背負っている体操選手なのですが、五十嵐自身は、実は無実の罪で少年院に入れられていたのでした。まさに悲劇!


いい人すぎるだろ・・・

・あずさちゃん

太一と同じ症状で入院していた少女、あずさちゃん。同じ病状ながら、体操の技を身につけ、みるみる回復していく太一の姿に憧れ、車椅子で病院を抜け出し、太一を応援にいきます。しかし応援中に無理がたたり、会場でぶっ倒れて絶命。まさに悲劇!


死亡フラグでまくり

・エレナ・シュトロワ

ソ連から来た女子体操選手で、女子チャンピオン・榛名の最大のライバル。幼少期のころにエレナを捨てて失踪した母を見つけるために、体操で有名になることを決意します。日本で、絶対100パー母親で間違いない、という女性を見つけますが、話しかけても結局名乗ってもらえず。まさに悲劇!


お母ちゃんヒドい

そんな感じで登場人物がそれぞれ、悲劇を背負っており、作品のいたるところに「泣き」要素がちりばめられているのです。どこから読み始めても泣くことができる後方支援体制。それが『空キャン』の凄いところ!!

■わかる人にはわかる!? 超秘技の数々

壮絶すぎるストーリーばかりが気になって、本来の体操競技の攻防が全然頭に入ってこないのですが、実際のところはかなり激しく、本格的な技の攻防が描写されています。文字通り、ウルトラCとかウルトラDな技が次々と繰り出されるのです。

「後方伸身宙返り2回ひねり」「屈身モリスエ」「イエガー宙返り」「ギンガー宙返り」「マルケロフ飛び越し」「伸身クエルボ飛び2回ひねり」「後方伸身3回宙返り3回ひねり」等々……。


知ってる人には凄い技なはず・・・

どれも常人ではできないスゴ技のはずですが、体操の知識がないので、今ひとつピンときません。クエルボって何? 食えるの? ……みたいな。体操マンガが地味な印象を拭えないのは、このへんの技がよくわからない感のせいでしょうか。

というわけで、泣ける体操マンガ『空のキャンバス』をご紹介しました。今泉伸二先生のもう一つの代表作『神様はサウスポー』も、泣きのシーンがグイグイくる作品ですので、2作品まとめて読んで涙腺を崩壊させてみるのもいいかもしれません。

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引用)
『空のキャンバス』
今泉 伸二 /集英社/ビーグリー

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