謝るとはこういうことだ!土下座マンガの系譜「どげせん」と「謝男」レビュー

謝るとはこういうことだ!土下座マンガの系譜「どげせん」と「謝男」レビュー

土下座、それは命への執着の最終形態。
「土下座」は日本における謝罪スタイルの最上級とも言えます。そんな土下座をこの令和の時代に、公衆の面前で放った漢がいました。その男の名はジュンノスケ・タグチ。元アイドルというプライドをかなぐり捨てて放った彼の土下座の美しさに魅了された人たちも多かったのではないでしょうか。法廷でプロポーズを受けるという男気まで併せ持つ、久々に現れた土下座界のヒーローと言えるでしょう。

今回はそんな土下座をテーマとしたマンガが2つ紹介させていただきます。「どげせん」「謝男(シャーマン)」。なぜほぼ同時期にこの2つの「土下マン」が存在したのか、その発祥の経緯を解説しつつ、「女体盛り」と並ぶ日本の伝統文化「土下座」の素晴らしさを伝えていきたいというのが本稿の主旨でございます。

「どげせん」は板垣恵介先生とRIN(笠原倫)先生の作品。『週刊漫画ゴラク』(日本文芸社刊)にて、2010年10月からスタートした作品です。

 
 
全盛期のマーシー風

主人公は高校の新任教師・瀬戸発(せと はじめ)。ひと目見て分かるかと思いますが、明らかにマーシーこと田代まさし氏をモチーフとしたビジュアルです。しかもこの作品が始まる直前の2010年9月にマーシーが3回目の逮捕をされており、狙ったとしか思えない凄まじいタイミング。

 
 
不敵な笑み

その田代・・・もとい瀬戸はどんなピンチでも、とある特技でくぐり抜けるという特殊能力を持っています。例えば一話目は、ホストに貢いだ借金をヤクザに返さずバックレた女子大生をカッコよく救うシーン。その特技とは・・・

 
 
全く躊躇のない土下座

もちろん土下座です。うん、カッコよくはなかった。

 
 
周りを味方につける土下座

ヤクザ者の前に土下座する一人の男、しかもここは横断歩道のど真ん中、すでに道路は大渋滞を起こし注目の的。そうすると不利な立場になるのはヤクザ者の方ですよね。いたたまれなくなったヤクザはその場を立ち去ります。そう、瀬戸は土下座でプレッシャーを掛けることで相手を意のままに操ることができるのです。土下座はもはや謝罪ではなく、暴力とすら言えるでしょう。

 
 
マスター困ってる

その他にも、店のメニューにないカレーラーメンを作ってくれと頼み込む瀬戸。超コワモテのマスターがスゴみを利かせて拒絶するものの・・・

 
 
土下座で押し切る

突如として繰り出される瀬戸の土下座の迫力に負け、作ったことのないカレーラーメンを作らされるハメに・・・。さすがにそれは土下座の使い方間違ってるだろ。

とにかく瀬戸の土下座の前では、どんなに強気な人間も折れてしまうのです。その恐るべき土下パワーには秘密があったのです。その秘密とは瀬戸の土下座姿が・・・

 
 
土下リミナル!

まるで顔面ごと土下座しているような・・・「土下リミナル状態」だからなのです!
いやその解説、全然意味がわからんし!!

 
 
そんなことある?

柔道部に絡まれた時も土下座のもつ「構え」で柔道部の部長をビビらせたり、

 
 
実はウェットスーツにホカロンで武装

雪が降り積もる中で土下座を続けて相手にプレッシャーを与える「雪中土下達磨(せっちゅうどげだるま)」
など・・・いろいろと必殺技的に豊富な土下座バリエーションを持ちます。

・・・そんな感じで、学校や生徒の間で起こるトラブルを土下座で解決していく破天荒教師の物語なのですが、作品としてもノリにノッていて絶好調の2011年10月、この作品をめぐって突如大事件が起こります。

 
 
ネタじゃなくて本気だった

週間ゴラクで突如掲載された「急告」の文字。なんと板垣・RIN両先生の「土下座に対する姿勢・考え方」の違いにより「どげせん」は終了。両先生は袂を分かち、それぞれ別の土下座マンガを描くことに・・・ネタなのか本気なのかわからない突然の告知に読者の方はお口アングリです。ていうか、土下座に対する考え方の違いて何!?バンドが音楽の方向性の違いで解散しちゃうアレみたいな感じでしょうか?

 
 

ということで、土下座マンガの系譜を図にまとめるとこんな感じになります。創業者亡き後のラーメン屋の暖簾分けのゴタゴタ感に近いものがあります。

 
 
■謝男(シャーマン)

 
タイトルが秀逸

「どげせん」では原案・原作の立場だった板垣恵介先生が自ら2011年12月から漫画ゴラクにてスタートさせたマンガがこの「謝男(シャーマン)」です。土下座マンガにふさわしい響きを持つタイトルです。

「謝男(シャーマン)」の主人公は、拝一穴(おがみ いっけつ)。「どげせん」の瀬戸発と同じく高校の新任教師です。全く同じ設定をぶつけて来るあたりに「どげせん」の原案は俺だ、と言わんばかりの意地を感じます。

 
 
田代っぽさゼロ

しかし、主人公のビジュアルは田代っぽさは全くなく、刃牙シリーズにも通じる、板垣先生らしい、爬虫類っぽさと細マッチョさを併せ持つ感じの男です。ここは全く変えてきましたね。

 
 
生徒はポカーンです

拝は、新任教師紹介で、全校生徒の前で自己紹介・・・をするのかと思いきや、いきなり土下座をかまします。生徒全員の前で土下座、別に不祥事を起こしたわけではないのに何故・・・ってザワつきますよね。しかし、土下座をうつやいなや、超常現象が発生。

 
 
謎の地震発生

拝の土下座とともに、まるで地震のような衝撃。全校生徒が前のめりに倒れます。そう、これが土下座の持つスピリチュアルなパワーなのです。

 
 
教師の土下座に困惑する生徒

つまり、ここが「どげせん」「謝男(シャーマン)」との最大の違いともいえます。どちらも土下座をもって、学園内のトラブルを解決したり、生徒を助けたりするマンガではあるのですが、「謝男(シャーマン)」の方は土下座のもつ精神性とか神秘性みたいなものがやたらとクローズアップされており、高尚な雰囲気でもあり、ストーリーもより難解です。そりゃ土下座観も違うわけだ!!

 
 
勃たせるなよ・・・

高尚といったのを即翻すようですが、やたらとシモネタに走りがちな側面もあります。土下座をしているとエレクトしちゃう的な。まあ、そういう意味でもスピリチュアル的とも言えるんですけど。

 
 
やれやれじゃねーよ

「やれやれ・・・君たちを想ったら漏らしちまった」
いやいや、ちょっとカッコいい風に言ってるけど、教師がおもらしするの全然カッコよくないから!!

 
 
露出狂か

全裸土下座で「秘所」を見せて相手にプレッシャーを与えたり・・・もう、土下座する意味全然わかんねーな。

 
 
■どげせんR(リターンズ)

 
Rとかいてリターンズ

板垣先生と袂を分かったRIN先生が描く「どげせん」の正当な続編といえるのが2012年3月からスタートした「どげせんR」。登場人物も設定も何もかも「どげせん」と一緒ですが、掲載誌は「ヤングキング」に移っています。大人の事情が色々とアリアリな感じですね。

内容は「どげせん」とほぼ同じ・・・なはずなのですが、前作より尖ったところがなく、ややマイルドといいますか、田代似の瀬戸先生がなんかとっても生徒思いのいい先生になってるんです。前作にあった変人ぽさというかアウトローさみたいなものが薄くなり、生徒のピンチを土下座で助けてくれる、生徒に慕われるいい先生という感じです。

 
 
いい先生すぎる

不祥事で水泳日本代表を取り消しになった生徒を復帰させるために土下座して直談判する瀬戸先生。メチャメチャいい先生ですよね。正直ちょっと泣けるシーンです。

マイルドになった「どげせんR」ですが、すごい見どころが1点あります。単行本1巻の巻末に「グッドジョブ」という読み切りがあるのですが、これがIT業界の歴史を覆すようなすごい作品。

 
 
どうみてもジョ◯ズ

新製品の開発でスランプに陥っていた、某◯ップルの◯ティーブ◯ョブズ氏。日本で座禅修行をしていたところ、とある男がバイクで事故った勢いでその寺の池に飛び込み、高価な錦鯉を殺してしまうという事件が起こったのです。その男が瀬戸発でした。

 
 
スケルトン土下座

ずぶ濡れ姿で住職にスケルトン土下座をする瀬戸の姿があまりに美しく、感動した◯ティーブ◯ョブズは、その姿をモチーフに◯ップル再興のきっかけを生んだ伝説の名機・初代iMacを作り上げたのです。

 
 
土下座からiMacは生まれた

なるほど・・・比べてみるとまさに瓜二つ!つまり、瀬戸の土下座がなければiPhoneは生まれていなかったとも言うことができます。知られざるIT業界の伝説ですね。

というわけで土下座マンガ「どげせん」「謝男(シャーマン)」そして「どげせんR」をご紹介してみました。結局の所、板垣先生とRIN先生の個性がぶつかり合っていた初代の「どげせん」が、一番作品としてバランスが良く、面白かったというのが個人的感想です。

ちなみにこちら板垣先生のインタビュー記事ではRIN先生との決裂の経緯とか、作品がドラマ化された時に復帰作として田代まさし本人にオファーがいくよう、あえて田代まさし似の主人公にしたという裏話とかが書いてあって、いろいろとビックリさせられますので合わせて読んでおくといいと思います。

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