皆さんは巻来功士先生をご存知でしょうか。巻来功士先生といえば週刊少年ジャンプの代表作「ゴッドサイダー」がありますが、その他にも強烈な描写でジャンプ読者にトラウマを残しつつ壮絶に打ち切られた「メタルK」や「ザ・グリーンアイズ」という作品を残しています。
今回は巻来功士先生の自伝的マンガ「連載終了!- 少年ジャンプ黄金期の舞台裏-」で描かれている、採用されないネーム、打ち切られるマンガ、次々変わる編集担当、そしてライバルマンガ家達へのジェラシーなどなど、ジャンプ全盛期を体験した巻来先生の当時の苦悩をご紹介しつつ、個人的に最高なトラウマ作品「メタルK」や「ザ・グリーンアイズ」もご紹介したいと思います。
■「連載終了!」
「連載終了!- 少年ジャンプ黄金期の舞台裏-」は巻来功士先生の自伝的側面と、少年ジャンプ全盛期のマンガ家の苦悩を知ることのできる貴重な資料的側面がある作品。1980年代~90年代の黄金期のジャンプをリアルタイムで体験している世代には、とっても気になる作品です。
■なかなかデビューできない最終候補止まりの新人時代
九州の大学生だった20歳の巻来先生は授業をサボりアパートで漫画に没頭。最終候補まで残るもののあと一歩で入賞できず、なかなかデビューできずという日々だったようです。
自分の描いた画に欲情する巻来先生
もともと画力がすごい巻来先生。劇画チックな絵柄は少年誌よりも青年誌向けだったのですが、あくまで少年漫画で勝負していたのでした。なかなか運に恵まれない巻来先生は大学を中退し、一念発起して東京に進出。出版社に持ち込みまくりの日々でした。
少年キングで遂にデビュー
少年ジャンプや少年サンデーでのデビューを目指していた巻来先生だったのですが、何気なく持ち込んだ「少年キング」の少年画報社でいきなり連載OKをもらい、遂にデビュー決定。歓喜の舞です。同時期に「とどろけ!一番」ののむらしんぼ先生のアシスタントに誘われていたりもしたのですが、一本立ちしてデビューできるわけですからそりゃ断っちゃいますよね。しかしほどなくして・・・
少年キングまさかの休刊
少年キングがまさかの休刊・・・マンガ家は自分の作品が打ちきりになる恐ろしさももちろんありますが、掲載誌が休刊・廃刊して仕事がなくなるというパターンもあるんですよね。個人事業主としての辛さですよね。
■北条司、原哲夫、荒木飛呂彦・・・ライバル作家が次々ビッグネームに
少年キングの廃刊以降、どこからも連載のオファーが来なかった巻来先生、ジャンプに持ち込んだりするも、新人漫画家同然の扱いの日々。そんな時、「北斗の拳」で後に大ブレイクする原哲夫先生のアシスタントをやっていた時代がありました。
原哲夫先生のアシスタント時代
原哲夫先生にモヒカン野郎の目玉が飛び出すシーンを教える巻来先生。なかなかのお宝シーンですよね。
新人時代からすごかった北条先生
また、「キャッツ・アイ」「シティーハンター」の北条司先生には因縁が有りました。なんと同じ大学の同期だったのです。大学時代に目が出ず散々苦労していた巻来先生を尻目に、天才として華々しくジャンプにデビューする北条先生。
貴族のような北条先生
なにしろ同郷で同年代ですから、その後もなにかと意識してしまうのはしょうがないですよね。
作風が被っていた荒木先生
他にも「ジョジョ」の荒木飛呂彦先生とは「ゴッドサイダー」と作品の方向性が似ていたことからジャンプ編集部内ではなにかと比較される存在だったようです。
■次々変わる担当者
名コンビの図
少年漫画の大ヒット作は漫画家と編集者の名コンビで作られるというのが定説とされているのですが、巻来先生の場合はその定説とは縁がなく、作品の途中でもコロコロ担当が変わっていたようです。
サクッと担当が変わっちゃいます
一人でも大丈夫・・・
なぜかいつも「巻来君は一人でも大丈夫だから」と言われて編集担当が去っていってしまうので、もはや編集に頼らず天涯孤独で戦うことを誓う巻来先生。ちなみになぜ巻来先生の担当がコロコロ変わってしまうのか、その辺の真相は「連載終了!」の巻末の対談記事で明かされています。
■メタルK
というわけでここからは「連載終了!」でも紹介されていた2作品を紹介したいと思います。まずは「メタルK」ですが、1986年に少年ジャンプで掲載された初の連載作品です。どんな話かといいますと・・・
慶子だからKです
ヒロインの冥神慶子は冥神工業の美しき社長令嬢。しかし実はこの世には生きていないはずの存在なのです。なぜなら、冥神家は冥神工業の乗っ取りを狙う組織(ユニオン)により親子共々皆殺しにされてしまったからなのです。
オイル的な何か
こんな感じで、黒い涙を流しはじめたと思ったら・・・
おいおい・・・
皮膚が溶け始めて、最終的に・・・
これはトラウマになる
ギャー!!!!
というわけで、脳だけを移植されてサイボーグとなった冥神慶子が「メタルK」として、組織(ユニオン)の奴らに復讐するという作品なのです。凄い面白かったんですけど、いかんせん当時の少年ジャンプでは皮膚がドロドロ溶けたりする描写が怖すぎたのか、ファンに惜しまれながら10回で終了という打ち切り作品だったのでした。
硫酸で溶かされます
「あなたはわたしの蜘蛛の巣にとらわれた毒虫、のこるは死だけ・・・」
敵を倒す時にカマす時代劇並みの決めゼリフも痺れる作品だったのですが、いわゆる「俺たちの戦いはこれからだ!」的なラストシーンでした。
あまりに早い打ち切り決定に編集部陰謀説も
ちなみ「メタルK」は続編として同人誌で「メタルK Legend」が描かれているようですが現在入手不可。商業誌では出ないのかー。。。
■ザ・グリーンアイズ
「ザ・グリーンアイズ」はヒット作となった「ゴッドサイダー」の連載終了半年後に満を持して連載開始された作品。巻来先生らしいめっちゃくちゃアクの強い作品となっております。
航空機の事故でアマゾンの奥地に置き去りにされた少年、蘭妙広樹がアマゾンの自然の中で一人生き延び、アマゾンを荒らす組織の奴らから自然を守る戦士「ザ・グリーンアイズ」となるお話。ある意味とってもエコロジーな作品です。
ある意味エコな作品
こんな感じで、アマゾンに生える植物を自由自在に操って悪い奴らをブチのめす設定が斬新です。それはまあいいんですが・・・
虫嫌いの人はダメかも・・・
敵の組織の奴らが昆虫と融合して昆虫人間となり襲いかかってくるという・・・虫だらけの描写が鳥肌モノで、体の中から大量の虫が湧き出したりと「メタルK」以上に読者を選ぶ作品。
ラスボスのキモさが随一
ラスボスも度肝を抜くキモさでした。こちらは単行本にして3巻分で打ち切りとなっております。さすが巻来先生。妥協を許しません。結局の所、こちらの作品もラストシーンは「俺たちの戦いは(以下略)でした。
というわけで、巻来功士先生の渾身の自伝『連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏』と、打ち切られた2作品をご紹介いたしました。きっと皆さん情報量が多すぎてお腹一杯になったと思いますが、実は今回ほとんど紹介してない「ゴッドサイダー」から読むのが一般的だと思いますので、そこのところは自己判断でよろしくお願いします。
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引用)
『連載終了!少年ジャンプ黄金期の舞台裏』Kindle版、単行本版
巻来功士 / イースト・プレス
『メタルK』
巻来功士 / 集英社 / ビーグリー
『ザ・グリーンアイズ』
巻来功士 / 集英社 / ビーグリー
『ゴッドサイダー』
巻来功士 / 集英社 / ビーグリー