「クッキングボス」 クッキングパパのヤンキー時代(?)を描く幻の作品

「クッキングボス」 クッキングパパのヤンキー時代(?)を描く幻の作品

 


 

ヤンキー同士の抗争は焼肉パーティーで平和的解決!
グルメマンガというジャンルが世に定着して、すでに40年近くが経とうとしています。そんな中でも「美味しんぼ」(1983年〜)と「クッキングパパ」(1985年〜)は現存するグルメマンガの2大巨頭と言えるのではないでしょうか。

特に単行本が168巻(2024年4月現在)という驚異の長寿っぷりを誇るうえやまとち先生の「クッキングパパ」は、「美味しんぼ」のような料理対決路線とは一線を画したアットホームさと人情味溢れるほのぼのした内容で、読者を不快にさせることがない圧倒的安定感を誇る、グルメマンガ界最後の良心と言えましょう。

しかし、そんなグルメマンガ界の超メジャータイトルと言って過言ではない「クッキングパパ」の原型となった、とある作品をご存知な方は少ないのではないでしょうか。本日は、あの温厚なクッキングパパが番長として中学校をシメていた時代を描いた衝撃作「クッキングボス」をご紹介します。

 


スケバンと対峙するクッキングボス
  

「クッキングボス」は1982年にヤングチャンピオン(秋田書店)に3回にわたって掲載された作品で、現在は単行本「クッキングボス〜うえやまとち初期作品集」に収録されています。なんと当初はモーニングはおろか講談社ですらなかったんですね。

 


クッキングパパならぬファッキングティーチャーといった雰囲気
  

主人公は文字通り不良生徒のボス(番長)風の風貌をもつ中学生、荒岩美智。クッキングパパ(荒岩一味)とは名前が若干違いますがその顔はまさしくクッキングパパの若い頃そのもの。学生時代若かりし頃のクッキングパパといった趣きですが、遅刻・宿題忘れの常習犯というなかなかの不良っぷり。さらに独自の決闘スタイルで自分の中学だけでなく他校の不良グループまでシメているのでした。その壮絶なケンカの模様をご紹介しましょう。

 


ヒムロックのようにシャドウのかかった顔が怖い
  

裏山での決闘シーン、待っていたのは第一中の不良グループ。総勢10人以上いる上に、総番長は顔面にキャプテンハーロックのような傷を負っていて中学生なのに5、6人は殺ってそうな凶暴なルックスです。対する荒岩グループはたった3人。どう考えても勝ち目はなさそうです。

 


石を武器に…徹底的に殺る気だ!
  

ついに、決闘開始!荒岩達は地面に落ちている大きな石に手を伸ばします。なるほど!武器で応戦するならたった3人でもどうにかなるかもしれません…と思ったら全然違いました。なんとカマドを組み上げて火をつけ始めました。

 


何やら様子がおかしい
  

相手をド迫力で睨みつけて牽制しつつ、ものすごいスピードでカマドに網を敷き、その上に肉を並べ出します。あまりに異様な事態に相手の不良グループはもちろんキョトン顔です。そして…

 


今…壮絶なBBQがはじまる
  

「ショウガとニンニクがたっぷり利いた牛肉のアミ焼きだ!食え!!」
なんと、番長グループ同士の対決どころか野外焼肉パーティーが始まりました。そう、これがクッキングボス荒岩流の無敗の対決メソッドです。

 


うまいもん食ったらケンカなんてできないッスよね
  

一触即発の緊迫した状況からいきなり旨い料理を振る舞うことで仲良くなってしまうというもの。確かに旨いものを食いながらケンカなんてできませんよね。一度、同じ釜の飯を食ったらマブダチ。そういうことです。

 


1万円ぐらいしそうな弁当
  

そんなわけで番長のようないかつい風貌でありながら、実は単なる心優しい料理好き男子の荒岩美智。隣に住んでいるガールフレンドの虹子ちゃんの分まで毎日弁当を作ってあげています。しかも学生が作る弁当とは思えないハイクオリティさ。なんと鯛がお頭付きで入ってます。正月料理か!

 


怒らせると怖い虹子さん
  


メガネを外すと妖艶な虹子さん
  

ちなみに虹子といえばクッキングパパの奥さんと同じ名前です。そう、昼の仕事も夜の営みもバリバリこなすあの虹子さんですね。この頃から付き合ってたんですな。

 


不良どころかしっかり者です
  

虹子ちゃんだけではありません。お母さんと妹の毎日の朝晩の食事からお弁当まで全て荒岩が作っています。そのため夕食の洗い物が終わった後、夜10時過ぎに翌日の弁当の仕込みに入り、朝は5時起きで朝食と弁当作るという新入りの板前のようなハードな毎日。そりゃ宿題やってる暇もないですよね。

それなのにお母さんと妹がモンスタークレーマーのレベルで難癖をつけてくる外道ぶり。
 


ミニスカ妹の気の強さが尋常じゃない
  

「(学校から帰宅直後の荒岩の顔面にバッグを投げつけて)早く夕食作ってよ、おなかペコペコよ!」
「よっぽどそのへんの犬にやろうかと思ったよ」
「あーまずい お前ホントに料理がヘタだね!」

 


母が海原雄山並みに厳しい
  

これはひどい…どうなってんだこの家族は!全然アットホームじゃないよ!!
それにしてもこれだけボロクソ言われてもなお料理を作るモチベーションを保てるなんて荒岩美智…恐ろしい子!もはや料理好きのレベル超えている気がします。クッキングボスっていうかクッキングマゾですねこれは。

というわけで幻の「クッキングパパ」のルーツ作品「クッキングボス」をご紹介しました。皆さんも街で突然ケンカに巻き込まれたら、とりあえずBBQを始めてみるというのはいかがでしょうか?もしかしたらケンカも丸く収まり、親友関係にまで発展するかもしれません。ただBBQセットを常に持ち歩いていないといけませんけど。

最後にネットで話題の猟奇的な表紙でおなじみ「クッキングパパ29巻」をご紹介してシメさせていただきます。(しまってない)

 


なぜこんなことに…
  

※本レビューは「このマンガ恐るべし」掲載レビューのリライトです
■■■
出典・引用)
「クッキングボス〜うえやまとち初期作品集」 うえやまとち / 講談社
「クッキングパパ」 うえやまとち / 講談社

タイトルとURLをコピーしました