「平田弘史のお父さん物語」私のパパは超絶劇画家!?

私のパパは超絶劇画家!? 「平田弘史のお父さん物語」レビュー

「お父さんてホントスケベなのね・・・・」 「え!?」
漫画家が普段の作風とはうって変わったゆるい感じで私生活をエッセイマンガにするケースというのは少なくありません。以前当サイトでご紹介した桂正和先生の育児エッセイマンガ「キビシイです!!」はいつもと違う画風に加え、先生の意外な一面が垣間見れるユニークな作品でした。

しかし、もしバリバリの劇画家が自分の私生活をエッセイ風に描いた場合どんな感じになるのか?その一つの回答がここにあります。その名も「平田弘史のお父さん物語」という作品。血だるま剣法、薩摩義士伝といった時代物劇画で劇画界をリードし、「AKIRA」や「シグルイ」の題字を手がけ、日本漫画家協会賞文部科学大臣賞も受賞するという国宝級の劇画家が描くゆるーいエッセイ、一体どんな作品なのでしょうか。


「平田弘史のお父さん物語」は、東京から伊豆へ移住し、劇画を描きながら5人の子供と奥さんと共に暮らす平田先生の日常生活を説教混じりに描くエッセイマンガです。

平田弘史のスゴさをご存じない方のために、先日発売されたムック本「平田弘史 超絶サムライ画の描き方」(玄光社)の中からちょっとだけその画をご紹介してみます。





この圧倒される画力。漫画とか劇画とかそういうレベルを超えてただただスゴいとしか言いようがありませんよね。先生の画は海外でも高く評価されています。

こんなスゴい画を描く平田先生が、あの超絶な画力のまま、ゆるーいエッセイを描くというギャップがこの「お父さん物語」の面白いところです。


とにかく怒るお父さん

昭和のお父さんて頑固で亭主関白でとにかく怒ってるっていうイメージがありますよね。そのイメージの権化が星一徹だったりするんじゃないかと思いますが、平田先生もまさしく昭和のお父さんそのものです。


親子のガチぶつかり合い

平田先生には5人のお子さんがいます。大家族といって差し支え無いと思いますが、成長の過程で、親と子ってぶつかり合うものですよね。たとえば息子さんが受験で大変なので、家の手伝いをしたくないというシーン。


言ってることは正論ですが・・・

「どんな受験生であろうと自分の勉強だけにこだわっておるのは我利我利の餓鬼道と言うものじゃ!」
鬼気迫る迫力で息子を叱り飛ばすお父さん。言ってることが劇画チックすぎていささか分からないところもありますが、概ね正論であります。そして昭和のお父さんですから子供に手を出すのも速攻です。愛する子でも叩くときは叩く、昔はこうでした。


家族もドン引きするレベル

息子をマウンティングでブン殴っています。ちょっ・・・お父さんそこまでやるか、昔でもここまではさすがにちょっと。まあ言ってることは正論なんですけど。

その他にも、娘と音楽談義をしている時に、長調がメジャーで短調がマイナーだという話になり、お父さんが突然怒り出します。どうやら「長い=メジャー=良い」「短い=マイナー=悪い」つまり短いものは悪いものだとする風潮が気に入らない、とよくわからないことで怒り出します。


常人の理解を超えた怒り

怒りのあまり木刀で庭木をぶっ叩くお父さん。こうなるともう手がつけられません。なにより怒りのポイントが良く分かりません。まあ昭和のお父さんってみんなこんな感じでしたよね?(さすがにそれはない)


動揺を隠せないお父さん

場面は変わって、娘を持つ親の宿命。ついに娘が婚約者を紹介するシーンがやって来ました。普段からあれほどおっかないお父さんですから、絶対に一波乱起こることは必須です。もしかしたら死人が出るかも・・・


超無茶振り

「海になれるか!」
娘の婚約者に無理ゲーすぎる条件を突きつけるお父さん。「海になれ」ってなんだよ・・・。
もちろんそこには平田先生ならではの深い意味があるわけなのですが、どちらにしても「無理です」とはいえない雰囲気です。意味がわからなくても「はい」と言うしかありませんよね。


怒鳴りながらもOK

怒鳴りながらも、結局は二人の結婚を承諾するお父さん。不器用だけど実はいい人なんです。さり気なく「一発はスグするなッ!」って条件つけてますけどそこは大きなお世話だと思います。

ここまでですと、単なる怒りっぽくてエキセントリックなおっさんで全然ゆるくないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。ここからはこの作品ならではのゆるーいシーンをご紹介してまいりましょう。


機嫌悪そう

家の縁側でものすごいしかめっ面で唸りながら本を読むお父さん、ここまでだとさっきと何ら変わらないシーンですが・・・


エロいですな

読んでる本がエロ劇画というね・・・
あの面構えで本を読んでいるとなんか難しい本でも読んでいるのかと錯覚してしまいますね。まさに劇画マジックです。


結局怒ってる

エロ劇画に怒ってる理由はこれです。最近のはやってばっかりでつまらんと。もっとストーリを頑張れと、そういうことらしいです。


奥さんのツッコミが炸裂

で、最後は奥さんに諭されるというね。いいからお前も早くマンガ描けよ、と。ね、ゆるくなってきたでしょ?


娘のツッコミにタジタジ

「お父さんてホントスケベなのね・・・・」
続いては娘の失敬なツッコミ。まあさっきエロ劇画を唸りながら読んでたシーンがあるのでアレですが、実はこれは子供が5人いるってことはそれだけヤッたってことでしょ?という核心を突く娘の質問なのです。


そこ、肯定しちゃうんだ

思春期の娘がいると、こういう親にとって答えづらい質問をズバッとされることがあるんですね。コウノトリが運んできたっていうアレは何歳ごろまで通用するもんなんでしょうか。


プロ級の設備

最後は、平田先生が趣味のシンセサイザーに一日中没頭しているシーン。どうやらかなりのマニアの模様です。劇画のイメージとは全然違いますね。


なんて弱々しい・・・

一日中マンガも描かずにシンセをやっていたため家族全員から皮肉を言われまくるお父さん。
これはキツイ。思わず食欲がなくなっちゃうレベルです。

こんな感じで平田先生のハードな劇画と、ドジなお父さんのゆるさのギャップが楽しすぎる作品、「平田弘史のお父さん物語」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?後半は哲学的な領域まで踏み込んだりして難解な話もあるのですが、最近では見られない昭和らしいお父さん像を読むことのできる貴重なエッセイマンガですよ。J君も娘が大きくなっていつか彼氏を連れてきたら「海になれるか?」って聞いてみようと思います。

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出典)
「平田弘史のお父さん物語」 平田弘史/青林工芸舎/講談社
「平田弘史 超絶サムライ画の描き方」 平田弘史/玄光社

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