昭和~平成の移り変わり期に僕らをドギマギさせた、白倉由美「セーラー服3部作」

昭和~平成の移り変わり期に僕らをドギマギさせた、白倉由美「セーラー服3部作」(2019/4/10日刊サイゾー掲載)

『セーラー服と機関銃』「セーラー服を脱がさないで」『美少女戦士セーラームーン』などなど、昭和から平成にかけて「セーラー服」

はサブカルチャーに多大な影響を及ぼす最重要ワードのひとつでした。みんな好きだったでしょ? え、今でも大好き? 男だけど毎日着てる? いや、それは知らんけど……。

しかし現在、あれほど栄華を誇ったセーラー服は、本来の学生服としてはほぼ姿を消し、コスプレやレトロ感を演出するためのアイテムとなっています。平成が終わり、令和になって、いよいよ「セーラー服」は完全にオワコンとなってしまうのかもしれません。

今回は、そんな昭和を彩った「セーラー服」文化を象徴するマンガ、白倉由美先生の『セーラー服で一晩中』 『セーラー服物語』 『卒業、最後のセーラー服』という3作をご紹介したいと思います。

これらの作品を僕は勝手に「セーラー服3部作」と命名していますが、この3部作に共通する特徴として、超美少女のヒロイン、ちょっと病んでるストーリー、エッチなようであんまりエッチでない作風があります。それに加え、白倉先生特有の「超ゆるふわ」なセリフ回しがあります。

朝ごあん(=朝ごはん)

とおきおー(=東京)

選手こーたー(=選手交代)

かあいー(=かわいい)

かあうい(=かわいい)

ぎゃっこー(=学校)

 


オリラジの慎吾風

などなど。「ぎゃっこー」とか、かなりハイレベルです。ちょっと気を抜くとわからなくなりそうなこの不思議な言語感覚、昭和×セーラー服の組み合わせが生んだ奇跡のひとつでしょうか。

 

■『セーラー服で一晩中』(「週刊少年チャンピオン」秋田書店/1987年作品)

セーラー服度:★
エッチ度:★
病んでる度:★★★★★

 

17歳の女子高生・川原砂緒(かわはら・すなお)は、秋元康氏のような売れっ子業界人に見初められて結婚。しかし、旦那が速攻で死んでしまい、結婚からわずか5日で未亡人となります。

傷心の砂緒のもとに、死んだ旦那の弟・藤井貴生が北海道から上京して住み込むことに。しかも、砂緖と貴生は同い年の同級生……同い年の義姉弟がひとつ屋根の下でドギマギするストーリーです。要するに『めぞん一刻』にセーラー服をかけて2で割ったような感じでしょうか。

 


同級生が義姉で未亡人

女子高生の未亡人が、たまたま同い年の、死んだ旦那の弟と恋に落ちる――なかなかありえない設定ですよね。しかし、ありえないと思われる設定でも強引に成立させてしまえるのが、昭和という時代を席巻した「セーラー服」の持つパワーなのです。

白倉先生の描く超美少女と『セーラー服で一晩中』という刺激的なタイトル。そして掲載誌は「少年チャンピオン」ということで、読者はどうしても……その……エッチな感じの方向性を期待しちゃったものですが、そういったシーンはほぼ皆無。というか、「セーラー服」自体もそれほど出てこないという驚きの内容です。

 


リスカで情緒不安定アピール

とはいえ、未亡人となったヒロインの情緒不安定さはなかなかのもので、死んだ旦那のセーターを抱えてベッドでむせび泣く、突然リスカする、病院の屋上から飛び降りようとする、なんの脈絡もなく小説を書き始めるなどなど。こういう不安定な少女を支えてあげてるうちに、恋に発展……というのも、昭和のラブコメっぽい感じですよね。

 


昭和を感じさせますなあ

ちなみに『セーラー服で一晩中』というタイトルについては、砂緖がセーラー服姿、貴生がタキシード姿で夜中の砂浜を一晩中走り回るというシーンがあるので、一応ウソではありません。正直、タイトルからもっとエロいやつを想像してましたが、冷静に考えると少年誌なのでこんなものなのかもしれません。

 

■『セーラー服物語』(「週刊少年チャンピオン」/88年作品)

セーラー服度:★★★★
エッチ度:★★★
病んでる度:★

 

こちらはセーラー服を着た女子高生による、1話完結型の短編集形式の作品。ほぼ毎回セーラー服の女子高生が出てくるという意味で『セーラー服物語』の看板に偽りなし、といったところでしょうか。清楚系からビッチ系まで、例外なく美少女に描いてしまう白倉先生のすごみを堪能できます。

 


アカン

前作同様ダイレクトにエッチなシーンが出てくるわけではないのですが、ストーリー上のエッチ度は増しています。少女売春とか処女喪失がキーワードになっている作品が、結構な頻度で出てきます。っていうか、この時代って、そんなにカジュアルに「少女買春」ってキーワードが使われてたんですね。

 


アカンて

 

■『卒業、最後のセーラー服。』(「ヤングチャンピオン」/89年作品)

セーラー服度:★★★★★
エッチ度:★★★
病んでる度:★★★

 

舞台を少年誌から青年誌に移し、ストーリーの背徳度が増しているのが本作。草薙優恵17歳、雄高16歳の、2人の美形姉弟の物語。お互いが愛し合ってるのに、姉弟だから一線を越えられない……みたいな、いろんな意味でギリギリな設定の作品です。

 


背徳のシスコン&ブラコン漫画

制服モデルをしているほどの美少女・優恵は、スキが多くて、学校の男子に狙われまくり。女子にもやっかまれまくり。不良たちに囲まれ、服を脱がされ、貞操の危機……みたいなシーンも頻繁に出てきますが、ストーカー並みに姉のことを心配している弟の雄高が駆けつけ、間一髪で助けてくれる鉄壁のシスコン&ブラコンストーリー。

 


よく襲われるヒロイン

そんな中、本格的に芸能課にスカウトされる姉の優恵、人気ロックバンド「ストーカー」のボーカルに抜擢された弟の雄高、2人の間に次第に距離ができ始め……というストーリー。文字通り「ストーカー」ってバンドが出てくるのが笑えるのですが、この当時はおそらく「ストーカー」は本来の「獲物に忍び寄る者」という意味で使われていたんでしょう。そう考えるとクールなキーワードですが、今だと普通に犯罪者扱いの言葉ですから、時代を感じさせます。

 


完全に二人の世界

禁断のキンシンソーカン物かと思いきや、後半で実は血がつながっていないことがわかるお約束の展開もあり、セーラー服度もエッチ度も病んでる度も3部作のラストを飾るにふさわしい仕上がりとなっています。

***

というわけで、昭和から平成への時代の移り変わり期に青少年をドギマギさせた、白倉由美先生のセーラー服3部作をご紹介しました。ちなみに『セーラー服と機関銃』のパロディで『セーラー服と一晩中』いうAVも存在しており、非常に紛らわしいのですが、今回ご紹介したマンガとはまったく関係ありませんので、念のため。

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引用)
『セーラー服で一晩中』
白倉由美/秋田書店/角川書店
『セーラー服物語』
白倉由美/秋田書店
『卒業、最後のセーラー服』
白倉由美/秋田書店

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