勢いが命のグルメマンガ スーパーくいしん坊 part1

グルメマンガは「勢い」が命!
こんにちは、J君です。皆さんは五月病ですか?J君はもう断然、五月病です。もう絵に描いたような五月病。何をやるのもめんどくせー、息をするのもめんどくせー、テキストを更新するのも(以下略)といった按配でございまして、この夏に向けて暑さを乗り切るピリッとした刺激がほしいところ。
そんなJ君と同様にアンニュイな日々を送っている皆様に朗報。本日は思いっきりピリ辛な刺激満載のマンガをご紹介しますよ。・・・といえばもう、皆さんお分かりですね?そう、勢いとハッタリなら天下一品、ビッグ錠大先生のマンガをご紹介いたします。
ビッグ錠先生が描く料理マンガといえば、牛次郎先生とのコンビで描く料理マンガ「包丁人味平」「一本包丁万太郎」という、読んだ人の誰もが確実にお口アングリになるグルメマンガが存在するわけですが、本日ご紹介するのは、そのコンビが生んだ第三の刺客ともいえる作品「スーパーくいしん坊」でございます。
この「スーパーくいしん坊」はビリーズブートキャンプも真っ青の重度なメタボリック体型がトレードマークの主人公、鍋島香介が、中学生だてらにプロの作った料理に難癖をつけまくって料理勝負に持ち込み、奇想天外なブッ飛び料理で大人たちをギャフンといわせるという内容。いわばミスター味っ子などに代表される、少年料理人マンガの黄金パターンの礎となった作品といえましょう。
そして、この「スーパーくいしん坊」における料理バトルにおいて、そこには料理の味であったり、盛り付けの美しさであったりという要素は二の次、三の次。いかにブッ飛んだ調理法をギャラリーに見せ付けるかが勝利のポイントとなっています。要するに「勢い」があったほうが勝ちなのです。かなり画期的な発想ですね。グルメマンガのカテゴリーを完全に飛び出しています。
「勢い」が料理勝負の勝敗を決めるといってもビック錠ワールドの素人の方にはなんのことやらサッパリでしょうからこれは実例を見ていただくしかないわけですが、追々ご紹介してまいります。
主人公の「スーパーくいしん坊」こと香介は、流行に背を向けた頑固一徹な職人気質の父親が経営する「キッチンくいしん坊」の将来を案じて、いろいろと口を出してきます。
ナウッチイのがウケます
「ピザパイとかスパゲティーとかもっとナウッチイのがうけるんだよ」
ピザパイがナウッチィのかどうかは意見が分かれるところかと思いますが、そんな中、食通として名高く、数々のグルメ本を手がけた「味覚人」辻社長が店に現れます。味覚人って肩書きもずいぶん微妙ですが、ビッグ錠先生のマンガにはこのような謎ジョブを持ったキャラがしょっちゅう登場するのでいちいち疑問を感じていてはいけません。なにしろ「おにぎり師」とか出てきますからね。どうやって生計立ててんだ。
話がそれましたが香介は、辻社長に「キッチンくいしん坊」を雑誌で紹介してくれと猛アピール。しかし、それだけの値打ちがない店は紹介できないという辻社長。普通ならここで終わってしまう会話ですが、このマンガは違います。
そっちを挑発かよ!
「君にそれだけの自信があるかね」
なぜか香介を挑発する辻社長。料理人の父親じゃなくて、なぜか息子を挑発するところがポインツです。
お前、店のマスターじゃないじゃん
「ひとつおれの料理を味わってもらいましょうか!」
そして、なぜかノリノリで勝手にケンカを買う香介、料理人の父親は完全に置いてけぼりです。ここから「スーパーくいしん坊」名物の走り出したら止まらない無重力グルメ空間がスタートします。
スゴいアングルで調理開始
「むっ!勝負の料理は!?」 「スパゲティー!!」
勢いありまくり
「アイおまちぃー!」 「いない!?」
忍者かよ
「出来上がりをみるまでもない。エサと見たり・・・味覚人」
どうですか、このライブ感。勝負を受けてから料理を出すまでの一気呵成な勢い感。それでいて決して食欲が沸くことのないビジュアルの悪さ。そして、なにより意味不明なのが忍者みたいな行動をとる味覚人。すべてが「スーパーくいしん坊」ワールドの織り成す小宇宙なのです。
そこからスーパーくいしん坊香介の、オリジナルスパゲティ作りの日々が始まります。すべては味覚人をギャフンといわせるために・・・。そして、
そんなに見事か?
「星型のスパゲティー、スタースパか!」
「みごとだよ香介くん」
星型のスパゲティーを採用するのがそれほどに見事なものかどうかは意見の分かれるところですが香介は得意げに解説します。
例えが微妙
「イカのしょうゆ焼きのときわざわざ切り込みいれるでしょ!!」
えー、スタースパのネタ元はイカ焼きですか?かなり信じがたい。しかし、これだけでは味覚人は納得しませんでした。さらに、いろんな味を一度に味わえるスパゲティのアイディアを要求して、去っていきます。
味覚人が突きつけた難題に思い悩む香介。悩む息子を見て父親も思わず愚痴をポロリ。
ほんと大人げない
「あの社長も大人げねえぜ、こんなガキつかまえて」
そうです、このマンガに出てくる大人は、ほぼ全員大人げありません。この作品における重要なポイント、それは、いい大人のクセに全く大人げがないこと。だからこそこんな無茶な料理勝負が成立するのですね。あと、自分の息子を「こんなガキ」呼ばわりする父親もなかなかのモンだと思います。
しかし、テレビでわんこそばのニュースを見ていてついに香介は画期的なアイデアを閃いたのでした!
やっぱりか
その名もわんこスパ(そのまんま)
カヤクて
「さあどれでも好きなカヤクで食べてもらいましょう」
スパゲティのソースを「カヤク」と呼ぶセンスはいかがなものかと思うのですが、それはともかく味覚人はいたくお気に入りの模様。
やってないよ・・・
「やったな香介くん!!」
全然やってないように思えるのはJ君だけでしょうか・・・?
わんこストップの術
しかし、またしても忍者チックな行動をとって味覚人は香介に更なる課題を突きつけるのでした。わんこのスパの一個の玉の量が多すぎて全種類のカヤクはとても食べれないとのこと。香介は更なる工夫を凝らす必要性を突きつけられました。
どうでもいいですが、「カヤク」とか「玉」とか・・・カップうどんと勘違いしているのではと思えるセンスです。
わんこスパでさまざまな味を楽しめるスパゲティーを考えた香介、しかし、一玉あたりの麺のボリュームが課題となりました、しかし驚くべきアイディアでこれを克服!
なんと、麺一本一本に氷のクギを刺し、麺を縦に真っ二つにして、スパゲティの本数を減らさずボリュームを減らすという荒技を披露します。
根本的に発想がおかしい
あるあ・・・ねーよ!
スパゲティを一本一本裂くとか、手間がかかり過ぎて気が遠くなりそうです。
結局、奇想天外なアイデアとスゴ技によって味覚人との勝負に勝利した香介によりキッチンくいしん坊は雑誌で話題の店として紹介されたのでした。めでたしめでたし。
というわけで、性悪メタボ少年と大人げ無いプロ料理人達の織り成すハーモニーが美しいブッ飛び料理バトルマンガ「スーパーくいしん坊」。今後もシリーズで紹介してまいります。ご期待ください。
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出典) 「スーパーくいしん坊」 講談社/ビッグ錠/牛次郎