ネタ系ゴルフマンガの神髄「アルバトロス」
地味ましておめでとうございます。
本年の当サイトの抱負は「地味」で行きたいと思います。昨年よりさらに地味で目立たない、あわよくば忘れ去られるような、世間に「そんなことより、お前の方は元気か?ちゃんとメシ食ってるか?」とか心配されるぐらいに磨きのかかった地味さを醸し出していければと思っております。
というわけで新年の一発目のレビューも洗練された地味さでお届けしたいのですが、ご紹介するのは少年マガジンに掲載されていた「アルバトロス」というゴルフマンガ。ゴルフマンガとしてはいかにもな記憶に残りづらいタイトルといい、クセのない絵柄といい・・・素晴らしく地味。それもそのはず、わずか12話という、昨今のIT社会のようなスピード感で終了した作品なのです。しかしその内容の狂いっぷりは幾多のメジャーマンガに引けを取らない存在でした。
ゴルフマンガといえば、マンガの中では比較的メジャーカテゴリーになります。「プロゴルファー猿」「あした天気になあれ」「上がってなンボシリーズ」など・・・有名作品をあげていったらキリがありません。
そんなゴルフマンガですが、大きく「リアル系」と「ネタ系」の2系統に分けることが出来ます。前者は徹底的にゴルフのリアルさを追求したマンガ、後者はゴルフクラブやスイングのフォーム、コース、ライバルキャラなどありとあらゆる物があり得ないことになっているゴルフマンガ・・・いわゆる当サイトの大好物です。
そのネタ系ゴルフマンガの中でもブッ飛び具合、知名度共にNo1の存在といえば、前述した「プロゴルファー猿」といえましょう。良くも悪くもとにかく目立つ存在です。先日、Wii版プロゴルファー猿が発売されたかと思えば、ファミ通レビューで史上最低点を叩き出し、プロゴルファー猿のスピンアウト作品である「ホアー小池さん!!」などに至っては異色すぎて読んでいて失禁できるレベルでした。これほど話題に事欠かないゴルフマンガは他にありません。
・・・と、その「プロゴルファー猿」をネタ系ゴルフマンガ界の「陽」とするなら本日ご紹介するゴルフマンガ「アルバトロス」はまさに「陰」の存在。陰も陰、微塵も知名度のないドマイナーゴルフマンガです。しかしながらネタ系ゴルフマンガとしてはかなりの逸材であります。早速ご紹介しましょう。
舞台はプロとアマ混合で競う、逢魔ヶ谷オープンの予選大会。意外にも大会のスコアトップは無名のアマチュア選手でした、まさにハニカミ王子がデビューした時のような状況です。そのアマチュア選手とは全くデータのない彼方完(かなたかん)という無名の少年、そしてパートナーは「アフロ」という名の黒人キャディという異色コンビ。この少年、彼方完がマンガの主人公です。
少年と黒人の異色コンビ
実は主人公の少年がここまで勝ち上がってきたのはトッププロ顔負けの圧倒的な飛距離を誇るパワフルなドライバーにあったのです。
その秘密とは・・・そう、ここで早くも登場するのが、ネタ系ゴルフマンガのマストアイテム「あり得ないゴルフクラブ」なのです。
なんだこの演出
「なっなんだ・・・まだ出てくる・・・」
「いったいいつになったらグリップが出てくるんだ!!」
ありえません
長っ・・・・!
プロ並みのパワフルショットの秘密は主人公の持つ異常な長さのゴルフクラブによるものだったのです。それにしても、ゴルフクラブがゴルフバッグから抜き出されるまでのほんのわずかな間でこれほどまでに勿体つけて・・・もといドラマティックな演出をするゴルフマンガをJ君はいまだかつて見たことがありません。
ただ・・・ゴルフクラブが異常に長いためか、構図も色々と不自然なことになっています。
異様な光景です
なんだこれ。
どう考えても普通のゴルフマンガではあり得ない構図ですよね・・・。
特筆すべきは、この超ロングドライバー「アンフィニ」をスイングした瞬間の描写。ゴルフクラブがコマの中に描ききれないほどの長さのため、スイングした時の描写も異様なことになっています。
触手系ゴルフマンガ
ごらんの有様だよ!
超ロングドライバーがまるでムチのように・・・っていうか、むしろ触手みたいになってるレベル。いくらなんでもコマの中に収めようとして無茶しすぎです。
何?このメガネ
主人公のパートナーである黒人キャディ「アフロ」も相当異色です。戦争で視力を失った元プロゴルファーという設定なのですが、鼻の上にのっかっている謎の小メガネが気になります。おしゃれアイテムでしょうか。昔、ケミストリーの片割れの人が耳からサングラスぶら下げてたのと同じぐらいの違和感があります。しかしこのキャディ、目が見えないかわりに凄い特殊能力を持っていました。
超能力で芝目読み
なんと、芝に触れることなく、手をかざすだけで芝目が読めてしまうのです。完全に超能力です。セブンセンシズに目覚めたキャディー・・・これは最強すぎますね。
ありえないゴルフクラブ、ありえないキャディ・・・とくれば次に待ち受けているのは当然「ありえないゴルフコース」となります。そう、このマンガのゴルフコースのトリッキーさはまさに全米が泣くレベルでした。
プロゴルファー猿の場合はありえないコースといっても、断崖絶壁のゴルフコースで失敗するとボールごと奈落の底とか、ある意味分かりやすい命懸けのド派手な難関コースが多い気がするのですが、このマンガの場合は・・・なんというか地味にいやらしい仕掛けのあるコースが多いのが特徴です。
勝手に坂を上るボール
「常識にとらわれて心の眼を曇らせてはいけないコース」
なんともいやらしい仕掛けのあるグリーンのあるコースです。このコースはパターで上り坂に向かってボールを打ったはずなのに、まるで坂道を転がるように勢いよくボールが転がってしまい、グリーンを飛び出してしまったり、今度は下り坂だと思ってボールを打つと勢いが全く足りずに手前にボールが戻ってきてしまうというワケの分からない現象が起こります。
陰険な仕掛けですね
実は、このコースは樹やホールの旗など、グリーンの周りの全てのものが斜めに植えてあり、上り坂に見えて実は下り坂だったり、下り坂だと思うと実は上り坂だったりするトリックが仕掛けてあったのです。・・・ね、地味にいやらしいでしょう?
まさかの蜃気楼ネタ
「真実が幻であり幻が真実であるコース」
このコースは、なんとグリーンが二つあるというコース。お前は一体何を言ってるんだという感じですが、実は蜃気楼によって本来のグリーンの他に別のコースのグリーンが見えてしまうため、プレイヤーは間違ってそっちのグリーンに打ってしまうという悪夢のようなコースです。悪夢というかむしろ悪意のあるコースですよね。
これは無理
しかもこのコースはラフがスイカ畑になっています。間違ってラフに打ち込んでしまうと、ボールがスイカの中にめり込んでしまい、まずクラブでスイカを割らないとボールを打つことができないというこれまた罰ゲームのような仕掛けです。
さすがマンガ
しかし主人公の彼方はここで、スイカにボールがめり込んだ凹みの部分に向かって超ロングドライバー「アンフィニ」をスイング。大量の空気を送り込むことによって空気圧でスイカを破壊し、一打でゴルフボールを脱出させるというスーパーショットを披露。指の力だけでスイカを爆発させる高橋名人を髣髴とさせるすごい技ですね。
一見簡単そうなコース
「天使と悪魔が同居するコース」
ついに最後のコースまでたどり着いた彼方。最後は一見、グリーンまでフェアウェイだけの簡単なコースかと思いきや、いざ、打ってみるとバンカーにハマっていました。打ったときはバンカーなどどこにもなかったはずなのに何故・・・?
またトリックです
なんとそのバンカーから周りを見渡すと、今度は周りが一面バンカーになっているというトリッキーなコース。いったいどういうことなんでしょう。
みんなも試してみよう!
このトリックを読者に説明するのが難しいと見たのか、作者が思い切った手段に出ました。
なんと画期的な・・・。誌面に山折りとか谷折りとか切り取り線の入ったゴルフマンガなんてJ君はいまだかつて見たことがありません。
というわけで、地味ながらもありえないギミック満載のネタ系ゴルフマンガ「アルバトロス」をご紹介してみましたがいかがだったでしょうか。読めば読むほどに12話で終わってしまうのも頷けるような気がしないでもないという独特の味わいのある作品です。ゴルフマンガに興味のある方は一度読んでみるのもいいかもしれません・・・。
ちなみに「アルバトロス」の作者、さとう輝先生は、現在人気マンガ「江戸前の旬」で活躍されておられます。こちらはリアル路線のようでさすがに、「超ロングあなご一本握り」とかは出てこないようです。あ、寿司マンガだけにネタ系つながりなのか・・・ということでお後がよろしいようで。
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