『冬物語』グダグダすぎる主人公を反面教師に! 全国の浪人生に贈る、予備校生マンガ

グダグダすぎる主人公を反面教師に! 全国の浪人生に贈る、予備校生マンガ『冬物語』(日刊サイゾー掲載2015/11/11)

予備校は受験勉強するところ? いえいえ……恋をするところです!
皆さんは、予備校に通ってましたか? 最近は少子化で、すっかり予備校の存在感は薄れており、目立っているのは「今でしょ!」の林修先生ぐらいですが、1970~90年代前半までは大学受験バブル。大学行くなら浪人して当たり前という、予備校天国の時代でした。かくいう僕も、かつては予備校で浪人生をしてました。

予備校といえば、その代名詞ともいえるのが駿台予備学校、河合塾、代々木ゼミナールのいわゆる3大予備校。「生徒の駿台、机の河合、講師の代ゼミ」なんて言われてました。いま思うと、「机の河合」って、扱いがヒドすぎますね。

そんな浪人、予備校ブームの最中に生まれた『冬物語』というマンガがあります。浪人して予備校に通う受験生たちの、まさしく「冬」な心境を描いた作品です。主人公の森川光は大学入試で、ことごとく不合格。残るはスベり止めに受けた「八千代商科大学」のみという状況。


自らフラグを立てに行くスタイル

「バーカ! あそこ(八千代商科大学)落ちたら人間やめるよ!」
「そーよ、あそこならだいじょーぶよ! あんなとこ小学生だって受かるわよ!」
「大学生っても、あそこじゃなあ…」

これぞまさに「Fラン大学」といった趣ですが、光はなんと、その「八千代商科大学」すら不合格。つまり小学生以下、人間やめろ状態です。付き合っていた彼女の和美ちゃん(専修大合格)にはあきれられた挙げ句にフラれ、どん底冬状態で浪人生活がスタートします。


この後、フラレました

この作品の見どころはなんといっても、主人公・光のすさまじいばかりの優柔不断さ、川の流れのようによどみなく流れていく意志の弱さにあるといえましょう。


初代マドンナ、東大命のしおりちゃん

浪人が決定し、通い始めた予備校、山の手ゼミナール(代ゼミがモデル)では、なんと「東大専科コース」に申し込む光。Fラン大学すら落ちた男が、なぜに東大専科コースを……? 実は、予備校で見かけたかわいい女の子(ヒロインの雨宮しおり)が東大専科コースに申し込んでいるのを見て、ついフラフラと、うっかり申し込んでしまったのです。なんだコイツは!? いきなりダメすぎる!!

当然、東大レベルの授業に、まったくついていけない光。模試の成績も赤点だらけ。さすがに、しおりちゃんにも心配されてしまいます。もちろん東大を受ける学力がないのは、本人が一番わかっているんです。でも、でも……!

「好きなコがいるんだよ…東大…東大目指してる好きなコが…だから…」

ドサクサに紛れて、しおりちゃんに遠回しな告白をする光。しかし、対するしおりちゃんは、それに気がつくどころか……。

「あたしも…光くんと同じなの…好きな人いるの! 東大に…」


フェードアウトする光の表情に注目

遠回しに告ったと思ったら返す刀で速攻轟沈。そう、しおりちゃんは、東大に入った彼氏を追いかけて一生懸命勉強している一途な女の子だったのでした。

しおりちゃんに脈がないことが判明したので、さっさと東大専科コースをやめればいいのですが、しおりちゃんに未練タラタラの光。いつまでもクヨクヨして、やめるやめないで悩み続け、ついに私大文系コースへの変更を申し出た時には単行本1巻のラストシーンでした。ここまでほとんど勉強せず。ダメだこりゃ!!

単行本2巻では、やっと夢から覚めた光。私大文系コースで目標を日東駒専に定め、再スタートを切ったのですが……。光の前に、新たなヒロインが登場。その名も、倉橋奈緒子。


慶応命の二代目マドンナ・奈緒子ちゃん

天真爛漫で積極的なキャラクターながら、青学、中央を蹴って一貫して慶応を狙う才女です。この奈緒子がダメ男好きなのかなんなのかわかりませんが、光をひと目で気に入り、ちょっかい出しまくり。予備校そっちのけで映画に誘ったり、家に呼んだりと誘惑し、しまいにはキスまでしちゃいます。もともと意志の弱い光、これは勉強どころではありません。

これだけでも十分浪人生としてヤバい状況なのですが、奈緒子の一途な思いを裏切るように、しおりちゃんへの未練が再燃。勉強はできないくせに、恋愛だけはイッチョマエの恋多き予備校生として進化しています。

そんなこんなで迎えた、受験シーズン。一年浪人したその成果は……現役の時に落ちた「八千代商科大学」だけ合格! まあ、一応の成果はあったようです。親御さんも一安心です。


せっかく受かった大学を親に黙って勝手に休学

そのまま八千代商科大学でキャンパスライフを送るものの、やっぱり納得できない光。勉強できないくせに、プライドだけは一人前。親に黙って勝手に休学届を出して、再び予備校へ舞い戻ってきます。そう、二浪目突入です。しかし、ほどなくして休学がバレ、家族会議に。弟もこれから受験なのに、二浪させるお金なんてないとカーちゃんが泣いてます。身につまされるシーンです。

弟「俺、大学行く気ねーからさ。ま、がんばってよ」
父「金のことは心配するな、ボーナスとかその他にも多少は貯えあるから」

弟はともかく、父ちゃんのセリフ、明らかにムリしてます。


勝手に二浪して親を泣かせる光、クズすぎ・・・

親を泣かせてまで選んだ二浪の道は、まさに修羅の道。今度こそ心を入れ替えて勉強を……と決意したところ、同じく東大に合格できず二浪目に突入したしおりちゃんと予備校で再会。再び、泥沼のノー勉強ライフへ……。

そんな感じで光のダメっぷりにイライラしたり、俺はさすがにこんなにヒドくなかったわーとか安堵しながら読むのが、この『冬物語』のたしなみ方ではないかと思うのです。

マンガではありえないほど情けなく見える光ですが、実はリアルな予備校生のひとつの姿だともいえます。中学・高校と違い、予備校生は基本的に時間の制約がないため、好きな時に好きなだけ勉強できる代わりに、自己管理ができないと、どんどん落ちていきます。誘惑に負けない意志の強さが求められるんです。

ちょっと最近サボり気味でヤバいなと思っている受験生の皆さんには、ぜひ『冬物語』を読んでいただき、勉強しなかったらコイツみたいになっちゃう! と光を反面教師にしつつ、頑張るのがオススメですよ!

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引用)
『冬物語』
原秀則 / 小学館

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