「駅前の歩き方」 富士宮やきそば、ゼリーフライ、ババヘラアイス・・・時代を先取りしすぎたB級グルメマンガ

 

ご当地グルメとかB級グルメという言葉が普通に使われるようになって久しいですね。皆さんはどんなご当地グルメが好きですか?J君は行田のゼリーフライが好きなんですけど、他の人から同意を得られたことがありません。美味しいですよゼリーフライ。ゼリー入ってないし。

ところで「ご当地グルメ」というワードがメジャーになったのはいつ頃からでしょうか?おそらく2006年から開催されたB-1グランプリの影響が多大だったと思われます。特に富士宮やきそばB-1グランプリ優勝で一気に知名度が全国区になりました。サービスエリアで食べられるようになったと思ったら、東京のスーパーでも袋麺を見かけるようになったりして、ご当地焼きそばがここまでメジャーになるのかとたまげたものです。

本日ご紹介する「駅前の歩き方」という作品ですが、個人的には「孤独のグルメ」と双璧をなすグルメマンガの名作だと思っておりまして、実は以前もレビューしたことがあるんですが、見事なぐらいブレイクしませんでした。しかし、まだご当地グルメとかB級グルメとかいった言葉が全く認知されていない時代に、富士宮やきそばなどのローカルフードをいち早く紹介していためちゃくちゃ時代を先取りしているグルメマンガなのです。

「駅前の歩き方」の作者は森田信吾先生。ヤングジャンプで連載されていた「栄光なき天才たち」シリーズが代表作です。「駅前の歩き方」は1999年から2005年にかけて「モーニング」上で不定期連載されていたものが単行本化されたもので、2011年には「地方食ぶらり旅 駅前グルメの歩き方」という長い名前で新装版が復刻されています。エラいタイトルの変わりようですが、元のタイトルだとグルメマンガであることすら分からなそうなので、改題されたのも分かるような気もします。そう考えると「孤独のグルメ」ってこれ以上ないぐらいシンプルでキャッチーなタイトルですね。

 


主人公は若手作家

 

というわけで、作品の紹介をしていきます。「駅前の歩き方」の主人公は若手の人気作家・花房徹(はなぶさとおる)。編集者の加藤と共に日本各地を取材して、地元の人と触れ合いつつ、その地元だけでしか食べられていない独特のローカルフードに舌鼓を打ったりします。

 


求めてるのはそれじゃなくって・・・

 

花房先生はグルメではありますが、ガイドブックに載っているようないわゆる観光客向けの名物料理には興味ゼロ。本当に地元の人が日常的に食べている「常食(ジョウショク)」だけを求めているのです。このちょっと面倒臭くて独特な嗜好を、編集者の加藤が全く理解できず、常にすれ違っているところがこの作品の妙味です。

 
 

■長野県伊那市の「ローメン」

 


この辺は孤独のグルメに通じます

 

花房センセイは、名物料理を食いたがる加藤を尻目に、いかにも地元の人以外入りづらそうなお食事処に飛び込みます。

 


下世話な話題

 

作家魂を発揮し、地元の皆さんならではの下世話なローカルな話に耳を傾けつつ、注文したのは・・・

 


ローメン、知らなかった

 

長野県伊那市ローカルの謎メニュー「ローメン」

 


食ってみたい・・・

 

・・・自分は食べたことないですが、焼きそばより油っこくなくて食べやすいらしいです。とにかくこういう地元民しかしらないようなマニアックなスローフードを花房センセイは求めているのです。

 


名物料理とはちょっと違う

 

いわゆる伝統的な郷土料理とはちょっと次元が違うもの。地元の人が日常的にごく普通に食べているんだけど、その地域の人以外では全然知られてない、そんな食べ物。それをこのマンガでは・・・


要するにご当地グルメですけど

 

「常食(じょうしょく)」と呼んでいます。繰り返しますが、このマンガは1999年から連載されていて、ご当地グルメとかB級グルメという概念がほとんどない時代だったのです。

 
 

■静岡県富士宮市の「焼きそば」

富士宮市出身だった大学の同級生が作った不思議な食感の焼きそばが忘れられない花房センセイ。例によって相方の加藤には全く伝わっておらず、カタ焼きそばと勘違いされています。しかしひょんなことからその同級生の実家のお好み焼き屋に行くことになり、長年の謎だった不思議な食感の「焼きそば」の正体が判明するのです。

 


見た目はただの焼きそばだけど・・・

 

「食べたことのないグニャゴワした変な食感」
「もちもちアルデンテ」

 


食べるとレベルの違う美味さ

 

作品中におよそ焼きそばらしくない表現が並びますが・・・いやいや、いうてもただの焼きそばでしょ?表現が大げさすぎじゃないか?まだ富士宮やきそばを知らないかつてのJ君も、加藤同様にそう思っておりました。・・・そして時が経ち、富士宮やきそばが全国区となって初めて食べた時、「何この不思議食感、普通の焼きそばと全然違う!しかもめちゃ美味いじゃないか!!」と思ったのです。・・・ようやっとこのマンガで紹介している「もちもちアルデンテ」の意味が理解できたのでした。

 
 

■秋田県秋田市の「ババヘラアイス」

 


ババヘラ・・・インパクトのある名前です

 

秋田県秋田市のおばあちゃんがヘラで盛り付けてくれる名物アイス、通称「ババヘラアイス」も秋田の小学生達がこぞって食べる「常食」なのです。もしかして老いも若きも秋田でアイスを売ったらもれなくババア扱いなのか・・・インパクト抜群のスゴいネーミングセンスですよね。そして気になるそのお味は・・・

 


ドーパミンが出る美味さ

 

激甘だそうです。脳に届く甘さって相当ですよ。千葉のマックスコーヒーぐらい甘いんかな。

 


ババヘラじゃないんかい

 

ちなみに現在は大人の事情「ババヘラアイス」とは呼べないらしく、復刻版では「おばあさんのアイス」という無難なネーミングに変更されてました。なにそれ・・・それだと全然意味が違ってくるよ!!

 
 

■長崎県長崎市の「トルコライス」

 


トルコアイスみたいな名前だけど・・・

 

長崎ではスーパーガッツリご当地グルメが登場。トンカツ、ピラフ、ナポリタンの集合体「トルコライス」を超ハイテンションで食します。これは・・・どう考えてもカロリー過積載なヤツだ。ちなみにトルコ共和国はイスラム圏なのでそもそも豚肉がNG。つまり「トルコライス」はトルコと全然関係ないそうです。長崎、一体どうなってんだ?

  

■埼玉県行田市の「ふらい&ゼリーフライ」

 


名前だけ聞くと悪夢のよう

 

あまりに不思議すぎる名前が気になりすぎて、思わずJ君も実際に食べに行ってしまった行田市の「ゼリーフライ」そして「ふらい」。

 


実はどちらも美味

 

「ゼリーフライ」の正体はゼリー的なものは一切入っていない、じゃがいもとおからベースの揚げ物。さっぱりしたコロッケのようでメチャうまいです。また「ふらい」は揚げ物ではなく、薄いお好み焼きのような粉もの。こちらも普通に美味いB級グルメでした。ただ、とにかく名前がややこしい。行田、一体どうなってんだ。

というわけで、ご当地グルメマンガの元祖にして最高峰とも言える「駅前の歩き方」をご紹介してみましたがいかがだったでしょうか?コロナのせいで減退気味だったご当地グルメ欲がムクムクと頭をもたげてきたのではないでしょうか?

ちなみに復刻新装版の「駅前グルメの歩き方」 の方には新エピソードも含まれているので今から読むならこちらの方がお得になっています。ちなみに新エピソードのメニューは秩父の「岩茸寿司」。なにそれ・・・よりにもよってめちゃくちゃマニアックなチョイスでした。

 


ちょっと画の雰囲気変わったかも?

 
 

■■■

出典)
「駅前の歩き方」 「地方食ぶらり旅 駅前グルメの歩き方」 森田信吾/講談社

タイトルとURLをコピーしました