ゆるふわ度ゼロ! 超絶ストイックな狩りガールマンガ『クマ撃ちの女』(日刊サイゾー2019/8/22掲載)
毎年この時期になると、たびたび報じられる「クマ出没」のニュース。今年も北海道や秋田県を中心とした日本各地でクマが出没したことが大きなニュースになっていますね。しかも今年は特に出没回数が多くて、人が襲われる被害も出ています。地元の人にとっては、シャレにならない事態ですよね。
今回ご紹介するのは、現在「くらげバンチ」で連載中の、クマ狩りハンターのマンガ「クマ撃ちの女」です。どストレートなタイトルからもわかる通り、主人公は女猟師、いわゆる「狩りガール」なのですが、クマを撃つことに対する異常なまでの執着心とストイックさがすごすぎて、ただならぬテンションになっています。タイトルからして「クマうちっ!」とかじゃなくて「クマ撃ちの”女”」ですから、ガーリーさとかゆるふわさみたいなものはハナから排除されているのです。
熊を撃ちたくてたまらない女、チアキ
本作のヒロインは小坂チアキ。31歳の兼業猟師です。猟師だけでは食べていけないのでバイトもしているのですが、ファッション感覚で猟師をするような雰囲気は一切ありません。なにしろチアキの狙いは鳥やイノシシ、鹿などではなく、日本最強生物「ヒグマ」です。とにかく、ヒグマに対する異常な執着を持っています。
フンでテンション上がりまくり
山中でヒグマのフンを見つければ、このようにスイーツを見ているかのように目を輝かせます。クマのフンを見てこんなにルンルンしている女子って、考えられないですよね。ルンルンしている理由はもちろん近くにクマ(ターゲット)がいるからです。
■男勝りな狩りガール meets 駆け出しのライター
生きるためにはフンまみれも余裕
しかもこの後、自分の気配を消すためにクマのフンを体に塗りたくったりもします。変態ではありません。あくまでガチのクマハンターです。
アンコウの吊るし切りみたい
こんな感じで、撃ったエゾシカの解体なんかもサクッとやっちゃう男勝りな狩りガールなのです。
そんなチアキのもとに、駆け出しのフリーライター・伊藤カズキが訪ねてきます。伊藤はフリーとして独立したてで、本を出して一発当てるためにチアキに同行取材を依頼します。女だてらに クマを撃ったことがあるということで話題性も十分です。初めは渋っていたチアキも、撃った獣を解体したり運んだりする労働力に使えると踏んで、伊藤の同行取材を承諾。両者の思惑が一致し、デンジャラスすぎるクマ撃ち取材が敢行されます。
超危険な同行熊ハンティング
なにしろ一歩間違えば命を落とすクマ撃ち取材ですから、モタモタしてたらこんな感じでチアキにぶん殴られます。……首、折れ曲がってますね。
人より熊が大事
伊藤の同行取材を許可しているとはいえ、なによりクマ撃ちが最優先のチアキ。もし、取材中に伊藤が死んだとしてもクマ撃ちを優先させると宣言。
■ストイックなのは、因縁めいた過去が原因?
どうしても熊を撃ちたい理由が
あまりにストイックすぎるチアキですが、どうやらクマに憎悪を燃やす因縁めいた過去がある模様。それは作品が進むにつれ徐々に明らかにされていきます。
やはり熊は恐ろしい
過酷な同行取材もだんだん慣れてきたところで、油断したのか、雨で足を滑らせて崖から転落したチアキ。しかし、そこにはヒグマが。銃を構える時間もなく、完全に不意を打たれてしまい、このままでは殺される、そんな時……。
シャレにならんオトリ作戦
なんと、同行していた伊藤にクマの注意を向けるという大胆なオトリ作戦を敢行するチアキ。一転、伊藤が大ピンチ。伊藤が死んでも熊を撃つ……有言実行すぎる女、チアキです。
ついに熊を倒す
そして見事、クマ撃ちに成功しました。まさに危機一髪です。
■自らさばいた鹿肉にウットリ
こいつヤベエ
思いっきり伊藤をオトリにした後で、これですからね……。もはやサイコパスの域です。しかし、結果的にクマ撃ちを見ることができた伊藤にとっても、取材は大成功だったのでした。まさに結果オーライです。
鹿肉を持ってウットリ
こんな感じで猟の時のテンションがすさまじいマンガなのですが、一転して獲った獣をさばいて食べるオフシーンも魅力。さばいた鹿肉を持ってウットリするチアキの表情を見てください。繰り返しますが、スイーツじゃないですよ。獣肉です。
美味そう
次から次へと熊や鹿などのジビエ料理が出てきます。実にうまそうですね。
マニアックなライフル解説もあります
また、「恋人はライフル」なスタンスなので、銃に対するマニアックな解説もいろいろ登場します。チアキはバリバリのハンターですが、心の中にいろいろ闇を抱えてそうなのです。猟が思い通りにいかず、壁に頭をガンガン打ちつけるシーンも。ゆるふわどころかメッチャ情緒不安定、メンタルがヤバいです。
やっぱり危ない人かも・・・
今回も、クマを仕留めて満足なのかと思いきや……。
「私は一流のクマ撃ちになりたいんです。圧倒したいんです。何頭も何頭も撃ちたいんです」
なぜ、ここまでクマ撃ちに執着するのでしょうか……。
実は、チアキのお姉さんがクマに襲われ、一命を取り留めたものの片足を失うという悲劇が過去にあったのです。自分の姉が熊に襲われるのを目撃しながら何もできなかった自分を戒めるかのように、クマへの憎悪を燃やし続けているのです。
姉を襲った悲劇
残虐なシーンも結構あります
こんな感じで、人がクマに襲われ、喰われてしまうシーンなども容赦なく描かれています。とにかくこの漫画に出てくるクマは怖い。
そして「クマ撃ちの女」は現在、人を何人も襲っている最凶の人喰いヒグマとの対決シーンがクライマックスを迎えています。ますます目が話せない展開となっているのですが、設定のリアルさも相まって、読むと野生のクマの恐ろしさが本当に伝わってくるマンガです。人里に降りてきた熊を殺すべきだとか、可哀想だから殺すべきではないとか、ドングリを蒔けばいいだとか……何かと物議を醸す昨今の熊出没のニュースをみて色々思うところがある人は、是非とも読んでみることをおすすめします。
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出典・引用)
「クマ撃ちの女」 安島藪太/新潮社