「すもも」ポップな絵柄でほんのりスケベ、あまりに異色なジャンプ打ち切りマンガ

 

 

本日は久しぶりに黄金期の週刊少年ジャンプを彩った、とある打ち切りマンガをご紹介したいと思います。ジャンプの打ち切りマンガって、いともあっさりと打ち切られるので存在感が全く無いかと思えばさにあらず、その異質さ故に読者には狼牙風風拳よりもよっぽど深い爪痕を残しているんですよね。

あえて空気を読まずにジャンプに掲載され、散っていった打ち切り作品、当サイトで紹介した物でいうと
「セコンド」「くおん…」「恐竜大紀行」「梨本小鉄」などがあります。どれも、当時のジャンプ読者なら読んだ瞬間に、あ、これ寿命が短いやつだ…と本能的に感じ取れたはずです。だけど終わってみたらなぜかトラウマとなって脳裏に焼き付いている、そんなすごい作品ばかりなのです。そして、今回ご紹介する作品は、週刊少年ジャンプに1985年23号から32号の10回にわたって掲載された「すもも」という作品。

「すもも」の作者は天沼俊先生。ストーリーは鎌倉CITYに暮らす一人暮らしの少女、雪野すももの元にお手伝いロボット「はたらき小僧」がやってくるというもので、実はその「はたらき小僧」が不良品で、CMでやってるような賢くて礼儀正しいロボットではなく、すももにいたずらしたりスケベなことをしたり…というドタバタコメディとなっています。

  
覚えてる人どれぐらいいるだろうか…
 

特筆すべきはストーリーよりもなによりもこの絵柄です。Drスランプとかストップひばりくんあたりに通じそうなポップな絵柄ではあるんですが、それともちょっと違うような、まるで昭和のファンシー文具を見ているようです。

  
背景がとにかく白い
 

ヒロインのすももはこんな感じ。工藤静香みたいな髪型に、おっとりほんわか系の表情。当時の流行を反映しつつ独特のクセも感じます。当時の少年たちが「北斗の拳」「キン肉マン」「魁!!男塾」で切った張ったの展開を見て血糖値が上がりきったところで突然のラブ注入ですよ。この高低差の激しさが当時のジャンプ読者に強烈なインパクトを与えたんです。

そして、このときに読者は直感するのです。ああ、これはそんなに長く続かないやつだ…と。

  
目がイッちゃってる
 

これが、作品中、最もキーとなるキャラクター「はたらき小僧」(不良品)です。ナダルみたいにイッちゃってる目をしてます。ちなみに不良品じゃないやつはこんな感じです。

  
全然違うじゃねえか
 

家に届いたお手伝いロボが欠陥品っていうフォーマット自体は昔からありますよね。古くは「がんばれ!!ロボコン」だったり「ドラえもん」もある意味そうです。比較的最近の作品だと「ぽんこつポン子」とか。

  
なかなかのセクハラ
 

  
嫌なAI搭載
 

で、ほんわか系コメディかと思えば、そうでもなく、割と強めのセクハラを繰り出します。金払ってパンツとかう◯こに執着するロボットが送られてきたらそりゃあ返品したくなるってもんですよね。

  
もはや返品しかない…
 

すももはセクハラに対する対抗策として、サポートセンターに返品の電話をするフリをするのですが、両親がおらずに寂しいすもも、エッチなことばっかりしてくる不良品ロボットでも次第に家族のような情が湧き、毎回すんでのところで踏みとどまるのです。

  
決めギャグ(たぶん)
 

決めゼリフはこの「あんぽんたんぽん」です。打ち切り作品ですから当然流行りませんでした。真意は謎ですが微妙にこれもセクハラっぽいセリフな気がします。(考えすぎか)

  
追加のサブキャラも煩悩の塊
 

中盤では、すもものボーイフレンド、宗近君が登場しますが、すももでエロい想像しては鼻血を吹き出すという特異体質のため、基本的に話の方向性はなんにも変わりません。

昭和のマンガってそもそも「セクハラ」という概念自体がなかったので、スカートめくりとかおっぱいタッチなんかがギャグ漫画の要素の一部として普通だったんですよね。そういうものがモラル的に許されなくなった平成以降の代替的なエッチの表現方法として「ラッキースケベ」が主流になっていったのではないかと思っています。自発的にスケベなことをしようとしてないからセーフ、みたいな。

  
急にシリアスじゃん…
 

たぶん打ち切りが確定したからでしょうか、8話ぐらいからストーリーが急展開を見せます。すももが不在の間に、突然サービスセンターが不良品のはたらき小僧を回収してスクラップにしてしまいます。これまで、すももにいたずらをしては間一髪で回収&スクラップを逃れるというストーリーだっただけにあまりに急な展開。

  
語尾のヨとかネもわりと昭和っぽい
 

すももにとって、もはや家族としてかけがえのない存在になっていたはたらき小僧が、勝手に連れ去られてスクラップにされてしまい、悲しみにくれるという鬼畜展開。さすが打ち切りが決まったジャンプは容赦しねえぜ…。とはいえラストシーンは、感動のハッピーエンドとなるのですが、ずっとまったり展開だっただけに急にシリアスになるとびっくりしますよね。まあジャンプの漫画ではそれが日常だったわけですが…。

  
やっぱり背景が白い
 

というわけで、おそらくごく一部の人だけが、あー、あったあったこんな作品、となること請け合いのジャンプ違和感打ち切り漫画「すもも」をご紹介しました。ちゃんと電子版になっていてラストまで読むことができるので興味がある人は是非とも読んでみてください。そして一緒に感じてほしい、「これはジャンプでは無理だよなあ…」と。

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出典・引用)
「すもも」
天沼俊/集英社/創美社/Benjanet

Kindle Unlimitedで読めます

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