「危ない!生徒会長」AKIRAっぽさ0%!大友克洋先生の幻の少女マンガ

AKIRAっぽさ0%!大友克洋先生の幻の少女マンガ「危ない!生徒会長」を鑑賞する

 

 

アキラ0%な少女マンガ!
大友克洋先生といえば、代表作「AKIRA」「童夢」を始めとしたサイバーパンクなSF作品で国内外の多くの漫画家・アニメーター、そしてアーティスト達に多大な影響を与えた大先生であることは、今更自分が語るまでもないことなのですが、もしかしたらそんな偉大なる大御所先生の黒歴史に触れることになるのかもしれません。

実はあのサイバーでパンクでSFな、時にはハードボイルドな作風で知られる大友先生が描いていた幻の少女漫画が存在するのです。もちろんAKIRAを女装させたような作品なんかではなく、純然たるガチ少女漫画。その名も「危ない!生徒会長」です。

  

SOS大東京探検隊(1996 講談社)

  

「危ない!生徒会長」は大友克洋先生が1996年に出した短編集「SOS大東京探検隊」に掲載されています。「SOS大東京探検隊」自体も非常に見どころの多い短編集で、収録作品は

「SOS大東京探検隊」マンガ少年(1980年)
「RUN」GORO(1979年)
「SPEED」JUST COMIC(1982年)
「猫はよく朝方に帰ってくる」ヤングコミック(1981年)
「危ない!生徒会長」コミックアゲイン(1979年)
「訪問者」SFアドベンチャー(1984年)
「サン・バーグズヒルの思い出」漫金超(1980年)
「大友克洋の栄養満点!」rockin’on(1979年)
「マドロスくん」バラエティ(1982年)
「とことんそれまでくん/日常の中の物語」アニメージュ(1987年)
「上を向いて歩こう」ヤングマガジン(1985年)
「火之要領」COMIC CUE(1995年)

となっています。そんな雑誌あったっけ!?みたいな雑誌名が結構あります。

  

SOS大東京探検隊

  

短編集のタイトルにもなっている「SOS大東京探検隊」は少年たちが戦後に建設途中で中止になった幻の地下鉄駅「丸ノ内駅」を探してマンホールから地下に入り地下迷宮を探検するというジュブナイル物。本作品をベースとして、2006年には「新SOS大東京探検隊」というタイトルでアニメ化もされています。

  

メッチャ細か!

  

地下廃墟の描き込みの細かさとかはさすが大友先生です。すごいですよね。

  

サン・バーグズヒルの思い出

  

その他にも刑事物、探偵物、時代劇物など渋くてハードボイルドな作風の物やバンド・デシネ風な物などなど、どれもこれもがカッコいいです。大友先生によるゆるーい4コマ漫画も収録されてましてお宝感満載です。

  

落ちが「ンガー」

  

こういった作品群の中に、明らかに異質な・・・あれ、大友先生の作品じゃないやつが紛れ込んでない?っていう作品が一つだけ収録されてるんですよ。それが少女漫画「危ない!生徒会長」であります。

  

大友先生が描いてます

  

掲載誌は「コミックアゲイン」みのり書房 1979年11月号・・・だそうで申し訳ございませんが存じ上げませんでしたという雑誌名なのですが、掲載時の煽り文句もなかなかイカしておりまして

「さわやか秋のオトメチック企画」
「青春コミックの王子様克ちゃまが汚れなき少女たちに送る、愛とロマン、涙と感動の学園ドラマ、少女よ熱くなれ!」

といったフレーズが踊っています。青春コミックの王子様 克ちゃまとか、そんな呼ばれ方していたんですか・・・。

  

生え際危ない少女

  

ストーリーは至って普通の女子高生、宮沢ふみ子が何故か生徒会長候補に選出されるというシーンから始まります。女子高生にしては生え際が危なっかしいですが、それ以外はいたって普通のストーリーに思えますが果たして・・・。

  

全てがノーマルな主人公

  

ふみ子本人もなぜ候補に選ばれたか全く思い当たるフシがない模様。それくらい何もかも普通スペックの女子高生なのです。グチをいいながらも候補者の集まる教室へ。そこに待っていたのは、学園No1の才女・大川志津と500人もの子分を率いると言われるスケバン川西敏子。この二人が生徒会選挙のライバルとなるわけです。

  

マスクはコロナ対策ではありません

  

ライバルの二人はとんでもない実力者、そして全くやる気のない普通女子のふみ子、ふみ子の落選はもはや確定に違いないと諦め気味のふみ子でした。

  

演説がきな臭い

  

しかし最有力候補と言われる大川志津さんの選挙演説、なんかちょっと・・・なんだろ、様子がちょっとアレです。プロ市民的な。

  

マスクは花粉症対策ではありません

  

他の二人の演説も終わり、あとは結果発表を待つのみとなりましたが、その結果はなんとビックリ!!

  

なぜかふみ子が勝利

  

505票でふみ子の圧倒的勝利!プロ市民女子高生の大川は259票、マスクガールのスケバン川西にいたっては18票です。一体何が起こったのか!?

  

なにやらスケールがデカくなってきた

  

実は、これは大川と川西による巧妙に仕組まれた計画だったのです。才女過ぎてやっかまれている大川、はみ出し過ぎの川西、どちらも生徒会長になるには問題がある、そこで間を取って超ド普通のふみ子を生徒会長にしちゃおうという企みです。そして、その目的は・・・

  

恐るべき野望

  

「乗っ取るのよ、生徒会を、私達でね・・・」
「今迄にない強力な生徒会に生まれ変わるのよ、」
「暁女学園の大頭脳 大川志津と暁のカワ子を番長とする500人のスケバングループ、それが全部あなたのもの」

何その野望の王国みたいなの!普通の少女漫画かと思いきや、なんか急に話のスケールがデカくなってきました。まるで車田正美先生の漫画を見ているようです。さすが大友先生。単なる少女漫画を描くわけがありませんでした。

  

生徒会長と言うか・・・姐さんです

  

こんな感じで、すっかり大川&川西の神輿に乗っかって、学園一の実力者になった普通女子代表の宮沢ふみ子会長。しかし、ここで怒涛の急展開が!!

  

以下次号(続かない)

  

突如として、前科十犯以下は入れないという超ド悪の男子校「私立獄東学園」と合併することに!ていうかそんな学校あるかよ!どうするんだふみ子会長!以下次号!!(続かない)

という感じで話がぶった切られて終了しています。まあ、読み切りですからね。続きなんかないのです。

というわけで、読んだ後もまだ大友先生が描いたとは信じられない感じなのですが紛れもなく”青春コミックの王子様克ちゃま”が描いた少女漫画「危ない!生徒会長」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?

 

実は、短編集のあとがきには本作品の解説がちゃんとされていて、「少女誌をいっぱい買ってきて技法を研究しまくって描いた作品」であることや、続きとして「合併先の男子校の裏番長が、カッコいいやつを表の番長に仕立ててやってきて、女の子たちがそいつに惚れちゃって、最後は利権のために学校を合併させていた奴をみんなで暴く」というストーリーを、大友先生原作で別の少女漫画家に描いてもらおうとしていたことなどが書かれています。

やっぱり壮大なストーリーだったんですね、そうなると俄然続きを読んでみたくなります。絶対描かれないと思いますけど・・・。

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