庭師一代 日本庭園バトル

職人マンガの世界 ガーデニングバトル「庭師一代」

この庭は死んでいる!

こんにちは、J君です。日本には職人マンガというジャンルがあります。メジャーなところでは料理人、特に寿司職人のマンガなどは数限りなく存在しています。どうもマンガの世界では職人といえば、「べらんめえ口調→気むずかしくて頑固→短気でけんかっ早い」というパブリックイメージが強いらしく、職人をテーマにしたマンガでは大抵がバトルに突入する傾向にあるようです。当サイトではそんな日本ならではの伝統文化、職人マンガのディープな世界をお伝えして行きたいと思います。

というわけで、職人マンガの世界第1弾のテーマはズバリ「庭師」。庭師が己の技巧を凝らした庭を見せ合って勝負を決する庭勝負マンガ(今風に言うとガーデニングバトル)その名も「庭師一代」をご紹介いたします。

「庭師一代」は料理人劇画の大御所、故・たがわ靖之先生の作品。当サイトでご紹介した料理人仕置きマンガ「夜の料理人」もたがわ先生の手によるものといえば、そのテイストはお分かりいただけるかもしれません。

さっそく作品をご紹介していきましょう。主人公は庭一造園の若手庭師、東快道

 

技で造って欲しい・・・

 

「庭は度胸よ、心意気で造るんじゃい!」

などと熱く吠える庭師界の若きホープです。

いきなり「庭勝負」といわれても一般ピープルにはなんのことやら分からないと思いますが、おおよその展開としては、主人公の庭師・東快道が、他の職人が作った庭に向かって、

 

庭師版ケンシロウ

 

「この庭は死んでいる!俺ならもっとマシな庭を造れるぜ!」

などと難癖をつけ、そのまま庭勝負にもつれ込むという展開。マンガとしては面白いですけど、実際にこんな職人がいたらすごくウザイですね。

 

営業妨害です

 

第一話では、和風レストランチェーンを経営する成金社長が、大手造園業の西山ガーデンと主人公、庭一造園の東快道を呼びつけ、庭勝負を命じます。庭勝負に勝ったら今後のチェーン店の作庭の仕事を全部引き受けられるという大勝負。

 

バトル開始です

 

この成金社長、よほどの庭好きと見えます。なにしろ庭勝負用にわざわざパーティションで2つに区切った庭を用意するぐらいですから。超用意周到

 


ここがバトルフィールドです

 

庭勝負用の作品イメージを膨らます快道。しかしそうそう事はうまく運びません。なんとライバルの西山ガーデンが、仕入れ業者に圧力をかけて、庭石を手に入れられなくしてきました。ライバルが圧力をかけて主人公の材料仕入れを妨害するという展開は、ミスター味っ子などでも時折みられる伝統的な手法です。この手法を使えばたちどころにライバルの卑怯っぷりが際立ち、話ががぜん盛り上がります。ずるいですね

 

そりゃ大変だ

 

「なんだとォ! 伊予青石(いよあおいし)が手に入らねえ?」

・・・意味はよく分からないですけどなんか話が盛り上がってきましたよね。

西山ガーデンの卑怯な手口により、大ピンチのまま決戦の日を迎えた快道。果たして、まともな庭が造れたのでしょうか?まずは、先にライバルの西山造園の庭からお披露目です。

 

うーん・・・

そ、そうなの?

 

「見事なり」

・・・もう全然、素人目にはどの辺がどう見事なのかさっぱりピンと来ないわけですが、とにかく敵はすごい庭を造ってきたようです。そして、ついに快道が造った庭のお披露目です。

 

似たようなもんじゃ?

えー!ダメなの?

 

「なんじゃァこの庭はー」

・・・なんか社長がすごい怒ってます。例によって素人目には何に怒ってるのかさっぱり分からないんですけども、石の置き方やら草の据え方やら灯籠の位置が全然ダメらしいです。快道、一話目からいきなり負けてしまうのか?しかし、なにか依頼人の様子がおかしいです。

 


社長がキラキラしてます

 

なぜか突然、夢中になって快道が造った庭を直しはじめる成金社長。しかも、とても楽しそうです。一体どういうことなんでしょう。そこへ、突然後ろから出てきた快道の師匠である庭一造園の社長が解説をはじめます。

 

全て計算です(ドヤァ)

 

「これは”不全の庭”です」

・・・つまり快道は、あえて不完全な庭を造って、主人に手を入れさせる楽しみを残した巧妙に計算された庭だというのです。断じて手抜き工事の言い訳ではありません。成金社長も大満足、というわけで快道が見事に逆転勝利です。

そんなこんなで、一般人の理解のはるか斜め上を行くとてもディープな庭勝負の世界。その後も快道の庭勝負は快進撃。

 

目の錯覚を利用

 

目の錯覚を利用して庭を広く見せる必技「変幻の庭」等々、心意気で庭を造ってるわりには妙にインチキ臭いテクニックで連戦連勝を続けていきます。

 

心意気はどこへ?

 

そんなエピソードの中でも特に圧巻なのは、二階で寝たきりになって、戦時中にゼロ戦に乗っていた思い出話ばかりする老人のために造った庭の話、一階から見ると普通のカッコいい庭ですが、二階から見ると、・・・

 

ゼロ戦が見えます

木でゼロ戦を表現

 

なんとソロモン海上の空を飛ぶゼロ戦が見えるという究極の庭を造ったのでした。もうなんていうか庭っていうか、トリックアートの世界ですね。

 

おじいちゃん大感動

 

快道はそんな熱い職人魂を持った男ですから、その頑固さもハンパじゃありません。快道のモットーは決して「御用庭師」にはならないこと。つまり、客に媚びた庭でなくあくまで自分の造りたい庭を造るというスタンスです。

 

客より俺が大事

 

たとえば樹齢300年の御賜木をメインに庭を造ってくれという客のオーダーなのに「先祖の業績にとらわれていたら何もできん」という俺判断で、勝手に御賜木を切り倒して庭を造ります。

 

樹齢300年が・・・

 

また、超高価な伊予青石をメインに庭を造ってくれという客のオーダーでも、あれこれと無茶な注文を出してくる依頼人にブチ切れ、伊予青石をハンマーで真っ二つに破壊したりと、おおよそ客商売の原則を完璧に無視した職人魂を発揮してくれます。・・・っていうか訴訟もんだろこれ

 

訴えられるぞ・・・

 

そんなわけで休日にパパ・ママがやっているぬるーいガーデニングなどとは全く次元の違う熱き庭勝負マンガ「庭師一代」をご紹介して参りましたがいかがだったでしょうか?「御用庭師にはなりたくねえ!」心に染みる名ゼリフだと思いますが、職を失いたくないのでJ君にはとてもマネできそうもありません。

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出典) 「庭師一代」 講談社/たがわ靖之

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