「スーパーマシンRUN」背徳のスーパーカーマンガ

背徳のスーパーカーマンガ 「スーパーマシンRUN」









片輪走行は漢の浪漫!

日本古来から男子向けマンガの1ジャンルとして常に存在し続けた「カーマンガ」。しかし、女子には見向きもされず、車に興味のない男子にも読み飛ばされる。そう、カーマンガは宿命的に読者を激しく限定するジャンルなのです。そこで最近のカーマンガはカーマニアや走り屋達の支持を求め内容のストイックさ、リアルさを重視してきました。頭文字D湾岸ミッドナイト・・・現在生き残っている多くのカーマンガがその傾向にあります。



しかし、本日ご紹介するマンガは全然違います。あまりに大味な展開は、女子はもちろんのこと、カーマニアや走り屋さえもドン引き間違いなし。一体誰が得するんだか分からない捨て身のスーパーカーマンガ。それが本日ご紹介する「スーパーマシンRUN」なのであります。


例えば、現代のリアルカーマンガのひとつ「湾岸ミッドナイト」なんて、おっさんたちがガレージで「ポルシェっていいよな・・・」「ポルシェはドイツが生んだ芸術だ・・・」「ポルシェは後輪駆動だからトラクションが云々・・・」的なポルシェ賛歌を延々語り合うだけのシーンが何ヶ月も続くマンガです。タイトルはむしろ「ポルシェに恋して」とかのほうが相応しいのではないかと思うぐらい。とにかく完全に一般人置き去りの展開です。



しかしながら現代カーマンガの唯一の生きる道はこのストイックさでガッチリとカーマニア層を掴むことにあるのです。もはやリアルのないカーマンガは生き残れない。・・・ところが本日ご紹介する「スーパーマシンRUN」は全然違います。女子にも媚びず、カーマニアさえも全く眼中にしない。読者の支持など全くクソくらえという勢いだけの展開が魅力です。





大味です



片輪走行!

・・・すごいですね。まさにスーパーマシン。この時点でリアル路線を完全に捨ててます。描いているのは渡辺諒先生。代表作としては野球マンガ「はるかかなた」あたりでしょうか・・・こちらも微妙な作品ですが・・・。さて、「スーパーマシンRUN」のストーリーをご紹介しましょう。





世界で最も過酷なレース「ワールド・グランド・マスター」に出場中、無念の死を遂げた名ドライバー秋月大二郎。彼には、息子と娘がいました。運送屋でドライビングテクニックを磨いた兄、秋月勇騎。ドイツの工科大学で車の技術を学んだ妹、秋月ラン。この二人の兄弟が、亡き父の意志を継ぎ「ワールド・グランド・マスター」出場を目指す・・・。そんなお話です。



兄妹の野望が今はじまる・・・





兄と妹の設定になぜか相当な格差がある気がするのですが、まあそれはそれとして、ドイツ帰りの天才少女ランの開発したオリジナルスーパーカーと運送屋で慣らした兄のドラテクで数々の強敵とカーバトルを展開します。主人公の車が既存のスポーツカーではなく全く架空のオリジナルスーパーカーというのがポイント。作品の大味さが無限に広がります。ではそのスーパーマシン「ラン号」のコックピットをとくと御覧下さい。






無駄にすごい計器類



すげえ!

この計器類の無駄なゴテゴテ感。よく分からんがやたらとハイテクな雰囲気が漂っており、内装の派手さだけなら場末のデコトラにも負けない勢いを感じます。やはりスーパーカーたるもの装備もスーパーさが必要ですよね。通常、サーキット仕様の車などは軽量化のために無駄な計器類を極力省く傾向にありますが、そんなの関係ねえ!メーターがド派手じゃない車はスーパーカーにあらず。そんな意気込みが伝わってきます。









ハリウッド級の登場



巨大トランスポーターからいざ出陣!夜の首都高でテストラン開始です。登場もハリウッド映画並みのド派手さですね。こんなの首都高で実際にやったら壮絶に事故りそうですが。





スーパーカーなので直角に曲がれます



そして、この動き・・・これこそまさにスーパーカーです。普通の車ではありえません。





ある意味、痛車



そこに現れる敵の車がまた思いっきり頭が悪そう。末路が見えるようです。



しかし「ラン号」はオリジナルスーパーカーなので、もちろん秘密の機能が搭載されています。スピードが上がってくるといろいろと変形!ボンドカーもビックリ!




はじめっから出しておけばいいのでは?





さらに、限界点を超えると、さらなる隠し機能が!

タイヤが外にニョキッと飛び出し、厳しいコーナも楽々クリア。



ニョキッと・・・



気持ち悪い動きです





変形にビビッた敵車はコーナーで事故って大炎上。レースに負けた瞬間、なぜか敵車が大爆発するのは古き良きカーマンガのお約束ですね。カーマンガはやはりこうでないと。



悲惨ですね



現実ならシャレにならない惨事





次に現れたのは黒ずくめのポルシェ3台です。敵が車の外からやたらと話し掛けてくるのもこの手のマンガのお約束です。車外から話しかけても絶対聞こえないと思うんですが。



マンガならではの車同士の会話



今度は峠でのバトル。そして、ラストは直線での一騎打ち。ポルシェより最高速で劣る「ラン号」最大のピンチ。しかし、そこでやはり隠し機能が発動!





隠しメーター



そりゃあ驚くわ



メーターを振り切るほどにアクセルを踏んだ瞬間、なんと、タコメーターの下にさらにメーターが!そしてやっぱり車が変形。パワーアップしてポルシェをブッチ切りです。





あーあ



そして負けたポルシェはエンジンブローで大爆発。(なんで)

それにしてもピンチになるまでいちいち機能を隠しておくというのはデメリットしかない気がするのですが(ビックリして事故るかもしれないし)、マンガ的にはその方が断然盛り上がるのだから困ったものです。隠しフィーチャーが多ければ多いほど盛り上がるのはスーパーマリオと同じ原理ですね。






もはや無意味なスペック紹介



そんなこんなで公道のライバル達を押し退けたラン号は、目標の第一歩「ワールド・グランド・マスター」の日本予選に出場。そこに登場するライバル達は当然フェラーリやらカウンタックやら、そうそうたるスーパーカー勢揃い。そして、次から次へそのスペックのすごさが紹介されるわけですが、結局のところ主人公のオリジナルマシンが一番すごい気がします。だって他のマシンは変形しないし



ついにレース開始!





いきなりカオス



・・・と思ったらレース開始直後に先頭グループが壮絶にクラッシュ。なんというカオスな展開。道が完全にふさがれてしまいました。後方にいたラン号はいきなりピンチです。しかし、スーパーマシンはそんな状況も楽々クリアです。





これは酷い



片輪走行があるから!





カウンタック軍団て。



さらにレース中盤、群れをなしたカウンタック軍団が激しくブロック。カウンタック軍団という発想もいかにもマンガ的ですが、とにかくここを乗り越えなければ先頭グループには追いつけません。そこでトンネル内で勝負を賭ける「ラン号」。スーパーカーならではの秘技が飛び出します。





大味すぎ



・・・やはり片輪走行!

もうね、ワンパターンすぎ。スーパーカーの真髄は片輪走行にあるということなんでしょうか?これならバイクに乗ってる方がいい気がします。



その他、ライバルカーを妨害してるうちに収拾がつかなくなって、対面したままバックで走ったりしながらピンチを切り抜けます。バックのまま時速200キロとか正気の沙汰ではありません。さすが世界で最も過酷なレースです。ある意味デスレース2000年より酷い。



妨害にもほどがある




これはレースなのか?





結局、作品はラン号が「ワールド・グランド・マスター」の日本予選を優勝したところで終了。大人の事情で世界大会までは描かれることはありませんでした。やはりリアル路線を捨てたカーマンガに明日は無かったのでしょうか・・・。



というわけで、リアル路線に完全に背を向けた漢のスーパーカーマンガ「スーパーマシンRUN」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?リアル路線カーマンガには食傷気味ですのでそろそろ再び、脱リアルな大味カーマンガがブームになってくれることを個人的には期待しています。そんな日はたぶん絶対に来ないと思いますが。



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出典) 「スーパーマシンRUN」 集英社/渡辺諒

参考) Amazon →   

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