「刑務所の中」で学ぶムショグルメの世界
禁断の甘味、ムショスイーツ
こんにちはJ君です。幾多のB級グルメマンガを取り上げてきた当サイトではございますが、さすがにこれは手を出してなかった、という禁断のグルメがあります。いわゆるB級グルメならぬM(ムショ)級グルメ。
本日は刑務所での生活を克明に漫画化した作品「刑務所の中」を通して知られざる刑務所グルメの世界をご紹介してみたいと思います。そして貴方は「究極のスイーツ」が刑務所の中にあることを知って驚愕することでしょう。
刑務所グルメマンガといえば、土山しげる先生の「極道めし」というマンガがあるのですが、こちらは刑務所の食べ物というよりはシャバにいた頃に食べた「一番旨かったもの」について語るのがメインのマンガ。食べ物そのものよりも、いかに旨そうに語るかがの勝負の決め手になってるので、シャバ最強のグルメがなぜか「玉子かけご飯」だったり「パインの缶詰のシロップ」だったりという結論になります。B級にもほどがある。
「極道めし」
さて、今回ご紹介するマンガ「刑務所の中」ですが、作者である花輪和一先生が、自身の刑務所服役経験をリアルに漫画化したことで話題になり、2002年には山崎努さん主演で実写版映画にもなった作品。厳しく殺伐としたイメージのある刑務所生活にあって、その「ゆるーい」部分を抽出して描いており、「ムショの生活も案外アリかも」という本末転倒な展開になっているところがユニークな作品です。
とはいえ、やはり刑務所の生活は厳しい・・・。作業中にはトイレに行くのはもちろん、落とした消しゴムを拾うだけでも
用便願いまーす
「願いま~す」と
お上の許可が必要。どんなにオシッコ漏れそうでも「用便願いまーす」の声が聞こえなければアウト。これはなかなか大変です。
懲罰房行きに絶望した!
その他にも雑誌に載っているクロスワードパズルを勝手にやったりするだけで懲罰房行きなど。理解しがたいほどに厳しい世界です。
そして、TVや新聞など外部からの情報が徹底的に制限されてしまうため、自ずから受刑者同士の会話も
小学生レベルの会話
「あいつのちん●でっけえよな」とか
島田カワイソス
「島田の乳首、すごくちっちぇえよ」など
いい歳したおっさん達が小学生並みの会話をするようになるのです。すごいですね。
そんな獄中ライフをユニークに描いている「刑務所の中」ですが、とりわけ毎日の食事は受刑者にとって最大の楽しみ。刑務所メニューについての描写の細かさは尋常でなく、まさに刑務所グルメの全貌が明らかになっているといっても過言ではありません。
飯の描写がやけに細かい
コーンラーメン・・・そういうのもあるのか!
その他にも麦飯に醤油をかけて食ったら死ぬほど美味かった、次はソースでやるぞとか
禁断の醤油かけご飯
春雨スープが大盛りだったことに感激したりとか
「おっ!ビューだよ!」(意味不明)
当然タバコは吸えないので、仁丹を口に含んで、丸めた紙をくわえ、消しゴムをライターがわりにタバコを吸った気分に浸るとか、エピソードには事欠きません。
スモーカーにとってはまさに地獄
そんなんでいいのか
しかし驚いたことに、刑務所でもお正月には、豪華なお節メニューが振る舞われるそうです。
たいねり?そういうのもあるのか!
こ、これは・・・。はっきり言って去年のJ君の正月よりよっぽどいい物食ってます。読んでて大変切なくなった。
刑務所ライフを送っていると、甘いものやコッテリしたものへの欲求がとりわけスゴイことになるそうです。筆者の花輪先生が半月も前から楽しみにしていたメニュー。パンにマーガリン、そしてフルーツサラダに小倉小豆・・・。
シャバではなんて事のないメニューですが、甘い物に飢えている彼等の脳内では・・・
これがムショスイーツ
妖精が舞っています。
食べる時の描写もまるで何かのクスリでキマってしまっている時のようです。
まるでヤク中です
これぞまさにスイーツ脳ですね。
とにかく甘味に対する欲望の表現が尋常ではありません。どんな女性誌よりもすさまじいスイーツへの探求心。甘い物こそ頑張った自分への最高のご褒美。最強のスイーツ脳は刑務所内にありました。
さらに模範的な受刑者にのみ月1回映画鑑賞会が催され、お菓子と缶ジュースを食べながら映画を鑑賞できるという、刑務所の中ではディズニーリゾートに匹敵する夢のようなイベントがあります。
そこで振る舞われる缶のコーラ。これがすごい。普段は味がほとんどないお湯同然のお茶しか支給されない受刑者にとって、コーラはまさに戦後の配給さながらの魅惑のドリンク。キュウリ味のコーラを一口飲んでは捨て、ダイエットと称してなんとかNEXを浴びるように飲んでる輩は自分がいかに贅沢をしているのかよく噛みしめるといいです。この罰当たりが!・・・すいませんJ君のことでした。
コーラが美味すぎる
そして、お菓子はブルボンのアルフォート。シャバでは存在感の薄いマイナーなチョコ菓子にすぎないアルフォートも刑務所においては「憧れスイーツ」。おそらく塀の中の男達にとってはクリスピー・クリームドーナツなんかよりもよっぽど恋い焦がれられている逸品です。
神スイーツ「アルフォート」
というわけで、臭い飯といわれた禁断の刑務所グルメの世界においても様々なドラマがあり、夢があり、そしてスイーツがあることがお分かりいただけたことと思います。もちろんそれ以外にも日常では想像もつかないエピソードが満載の「刑務所の中」。未読の方は是非読んでみて下さいね。実写版映画も驚くほど完成度が高いです。とりあえずJ君はコンビニにアルフォート買いに行ってくるので今日はこの辺で。
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出典) 「刑務所の中」 講談社/花輪和一