そして概念へ・・・マンガ界のSTAP細胞「マジカルシェフ少女しずる」3巻レビュー
弁当にフタは必要ないのよ!
こんにちはJ君です。3月に発売された「マジカルシェフ少女しずる」3巻を献本いただきましたので今回もレビューしたいと思います。今まで作品中でさんざん打ち切りになるなる詐欺を繰り広げてきた「しずる」ですが、この3巻が本当の最終巻となります。1巻から呆れ気味でレビューし続けてきた当サイトですが、これが本当の偽りのない最後だと思うとなにか感慨深いものすらあります。
「弁当」と「魔法少女」という2つのコンセプトを軸にやりたい放題のプログレッシブ弁当魔法マンガ「マジカルシェフ少女しずる」ですが、第3巻は最後にふさわしく、あらゆるものに形を変え何度でもよみがえるマンガ界のSTAP細胞ともいうべき存在でした。
当サイトでは過去に「マジカルシェフ少女しずる」の1巻と2巻をご紹介していることは冒頭でお話したとおりですが、その輝かしくもいかがわしい軌跡を簡単に振り返ってみましょう。
まずは1巻のストーリーです。時は大弁当時代、料理に特化した超能力「能力(ツールズ)」を持つ人間だけを集めた超エリート学校「国立大勉富学園」の一年生の西ノ森しずるが主人公。しずるは行方不明の伝説の料理人チャーリー西ノ森を母に持つ弁当界のサラブレッド・・・のはずが、どんくさい落ちこぼれ生徒でした。
まどマギに影響受けてそうなキャラ しずる
しかし、母ゆずりの能力「賢者タイム」に目覚めて、究極の弁当バトルトーナメント「ベントーナメント」で見事入賞するのです・・・「弁当は人殺しの道具じゃない!」そんな名ゼリフを残しながら、伏線を全く回収せずに強引に終わらせる打ち切りエンドが清々しさすら感じる画期的な弁当魔法バトルマンガでした。
そりゃそうだ
その後、終了したかと思われた「しずる」がまさかの第2巻をしれっと発売。それなりに美しく終わったはずの1巻の流れを星一徹のごとくちゃぶ台返しして、全く別のマンガに変貌します。弁当探偵、弁当カードバトル、魔王や巨人も出てくるというなんでもありのカオスな展開です。
弁当カードバトル
そして「弁当とはフタを閉めるもの」という名ゼリフを大事なことだから2回言うというストーリーになっています。皆さんたぶん何言ってるんだか全然わからないと思いますが、安心してください。こうして書いている自分が一番良くわかっていません。
作品中最も重要なセリフです
というわけで内容が広がりすぎてグダグダに伸びきったラーメンのようになった2巻に続いての3巻ですからこれ以上一体何を描く気なんだ、十分やりきったじゃないか、お前はもうそれ以上頑張らなくていいんだ!と思ってしまうのですが、行くところまで行ってしまったマンガの行き着く先は果たしてどうなってしまうのか?ご紹介してまいりましょう。
第3巻注目の1話目では、突如として正統派の萌えドタバタ学園ラブコメが展開されます。しずるのボーイフレンドであり、学園の生徒会長である聡氏陽優(さとうじようゆう)が学園内でモテモテで、女子生徒達から弁当を使って恋の告白をする「弁告」をされまくって困っちゃう、ポロリもあるよという内容になっております。基本コンセプトとなる「弁当」を強引にぶっ込んでくるあたりはさすがといえましょう。
ポロリもあるよ1
ポロリもあるよ2
これは「デンキ街の本屋さん」に代表される萌えマンガ師水あさと先生の真骨頂ともいえる展開です。今まで他の作品との差別化のためにあえて封印されていたお色気萌えマンガ路線が大放出されるあたりはさすが最終巻という感じです。
恐るべき敵、外食
しかし、この後は予想だにしない展開となります。なんとシリーズ最大の長編となる「弁当VS外食編」がスタートし舞台は宇宙へ。やはり行き着くところまで行ってしまったマンガの最後の舞台は宇宙になるようです。J君はかつてそういう例をいくつも見てきました。
まさかの弁当戦艦
しずるは弁当を滅ぼそうとする恐るべきGAISHOKU軍団を倒すため、弁当戦艦「玉手」に乗り込んでGAISHOKUの母星、惑星Gに向かいます。弁当戦艦・・・いままでも弁当ロボだの弁当龍だのわけわからんブツが出てきましたけどさすが最終巻はスケールが違いますね。そんな弁当戦艦に乗ったしずるの攻撃がこれです。
これは攻撃なのか?
「木星汁放出」
全然意味がわかりませんね・・・まあ意味がわからないのはもう慣れましたけど。
なつかしのダイヤルアップ
そんな宇宙空間での戦いは突然終わり、次の弁当VS外食の舞台はなんとインターネットです。テレホタイムにダイヤルアップで電脳空間に潜入して外食を倒そうと試みます。っていうかテレホタイムだのダイヤルアップだの言っても分かるのはオッサン世代だけだろ・・・。
さて、電脳空間に侵入して外食を倒すといってもどういうことなのかよくわかりませんよね。実はこの世界で外食を支配しているのは「アウトイーティング」という1企業だったのでした。このアウトイーティングを潰すための手法がズバリ・・・
ネットといえばステマ
「ステ魔」です。なんかどこかで似たような言葉を聞いたことがある気もしますが、気のせいかもしれません。え、そんな言葉全然聞いたことないって?それならそれで、どうか健やかなネットライフをお過ごしください。
「ステ魔」とはソーシャルグルメアプリ「ぐるろぐー」でアウトイーティング系列のお店に悪い口コミを書きまくり、株価を下げて倒産に追い込むというもの。戦い方が非常に現代的ですね。ていうか、なんかこのアプリも聞いたことあるような気がしますけど「ぐる・・・なんとか」とか「食べ・・・なんとか」みたいな。まあ気のせいかもしれませんが。
ネットといえば課金
ステマならぬステ魔を実行すべく電脳空間に侵入したしずるはなぜか裸です。ちなみにアイテム課金をすれば服が買えるようです。ていうか課金のくだりは別に必要ないだろ・・・。
ヤフトピならぬソフトピ
そんなわけでステ魔が功を奏し無事、大手ポータルサイト「ソフー」のトップにアウトイーティング倒産のニュースが流れます。ヤフーじゃないですよ。念のため。
ついに外食を倒したかに思われたのですが、まだ終わっていませんでした。全ての元凶となる外食の本体が登場します。その名も「外食概念」。
概念ていわれても・・・
舞台は遂に前人未到の概念バトルへ突入します。前人未到と言いつつ「まどマギ」で似たようなものを見たような気もしますけど、多分気のせいでしょう。
やっつけな組織
嫌な弁当
やっつけな登場
この辺になるとJ君を含む殆どの人がストーリーについていけなくなっていると思いますが、最後に畳み込むように銀河弁当団なる組織が出てきたり、3Dプリンター弁当がでてきたり、作品を通して最も重要な人物だったはずの行方不明のしずるの母「チャーリー西ノ森」がドサクサに紛れてサクッと登場したりして大団円を迎えます。そしてここでいままで培ってきた弁当の概念を覆すような名ゼリフです。
えー!
「弁当にフタは必要ないのよ!」
やりやがった・・・!今までのストーリー全否定か!!さすがしずる、最後の最後ですごいことをやってくれました。そして感動のラストシーンはもちろん伝統芸能となった畳み込むような打ち切りエンドです。
これで本当に終わりなのか?
「第一章 完」
最終巻だと散々前フリしておいたのに第一章完て・・・まさか我々はまた騙されたのか?理研は一体何やってるんだ!(関係ない)
ちなみにページをめくるとすさかず第二章がはじまり、見開き2ページで完結となっております。第二章は2ページ分しかないのかよ・・・。第一章完とか言い出しはじめた時はまだ続くのか?という不安がよぎりましたがやはり本当にこれが最終巻のようです。
そんなわけでパロディ、打ち切り、テコ入れ、そして誰もついていけない超スピード展開・・・あらゆる要素を盛り込んだ魔法少女マンガ史上最大の問題作「マジカルシェフ少女しずる」第3巻をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?正直言って当初は一発ネタマンガだと思われていた「しずる」が実は単行本にして3巻になるほどの可能性を秘めていたことに一読者として感動せざるをえません。
そして作品は終わりましたが、しずるの意思を継いだ我々の戦いはまだまだ続きます。打倒外食!戦いはまだ始まったばかりだ!(ダイエット的な意味で)
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出典) 「マジカルシェフ少女しずる」3巻 水あさと /泰文堂
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