嗚呼、清原……『かっとばせ!キヨハラくん』で、かつてのプロ野球界のアイドルの全盛期を振り返る

嗚呼、清原……『かっとばせ!キヨハラくん』で、かつてのプロ野球界のアイドルの全盛期を振り返る

ご存じの通り、清原和博氏がクスリで逮捕された事件は、日本列島に衝撃を与えています。10代の若者からすれば「元野球選手かなんか知らないけど、ヤクザみたいなオジサンが逮捕されて、なんでこんな大騒ぎになってるの?」という感じかもしれません。しかし、我々アラフォー世代にとっては、清原といえば、野球に興味があるなしにかかわらず、誰でも知っている国民的大スターだったわけです。

そんな清原の全盛期の人気ぶりを象徴するのが、なんといっても、マンガ『かっとばせ!キヨハラくん』でしょう。

1987年から94年まで「月刊コロコロコミック」(小学館)で、単行本にして15巻分の長期連載がなされていたのですから、当時の子どもたちへの影響力は絶大だったといえます。今でいうピカチュウ、ジバニャンと同等レベルの知名度といって差し支えないでしょう。

連載がスタートした87年ごろといえば、清原がシャブではなくホームランを打ちまくっていた時代。くしくもお笑い界では、マーシーこと田代まさしが「ギャグの王様」「ダジャレの帝王」と呼ばれてバラエティ番組を席巻し、アイドル界ではのりピーこと酒井法子が「のりピー語」をひっさげて衝撃のデビュー。歌謡界ではCHAGE and ASKAが「恋人はワイン色」「LOVE SONG」「SAY YES」を立て続けにヒットさせていました。


本当にアイドルだったんです

『かっとばせ!キヨハラくん』の主人公は、西部ライアンズの四番打者キヨハラ。第1話からファンの女の子にキャーキャー言われているシーンが、当時のアイドル的人気を物語っています。そのほかには、モリ監督、ピッチャーのクドー、イシゲ、アキヤマといったライアンズの面々や、パ・リーグ、セ・リーグの有名選手たちが登場し、毎回彼らとのドタバタギャグが繰り広げられます。内容はといえば、子どもたちが好きそうな下ネタあり、ダジャレありの、くっだらないギャグのオンパレードです。


お子様が好きそうなギャグを網羅

たとえば、先発ピッチャーに悩むモリ監督が、クドーやワタナベに打診したところ拒否されてしまいます。そこで、「代わりにやりましょうか?」とキヨハラ。おもむろにモリ監督の頭をシャンプーしだします。「洗髪=センパツ」というわけです。

ほかにも、モリ監督が出したスクイズのサインを見てウグイスと間違えて「ホーホケキョ」と言ってみたり……。クドーの投げた牽制球がキヨハラの股間に当たり、チ●チンが膨れ上がったり……。いかにも小学生が大好きそうなギャグなのですが、大人が読んでも十分笑えるクオリティです。

そしてなんといっても、学生時代からのライバルである東京カイアンツのクワタの存在が作品の面白さを際立たせています。天然ボケで肉体派のキヨハラと、根暗でネガティブなクワタの掛け合いがバツグンに面白いのです。


クワタの根暗ギャグが冴える

クワタのキャラクターはかなりエキセントリックで、五寸釘を藁人形に打ち込んだり、いつもブツブツ言ってる不気味なキャラで、助っ人外国人や審判に変装したり、時にはウグイス嬢に女装するなど、ありとあらゆる手段でキヨハラの練習や試合を妨害します。主役のキヨハラを食うレベルの活躍で、作品中で『がんばれ!クワタくん』というスピンオフ作品を生んだほどでした。

このように、子ども向けギャグマンガの王道を行く『かっとばせ!キヨハラくん』でしたが94年に一旦終了。その後は、松井秀喜をモデルとした後継作品『ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん』がしばらく連載されます。しかし、2003年に松井が大リーグ入りしたタイミングで、巨人に移籍した清原がモデルの『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』が開始されます。

……しかし、この『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』がエライことになっていました。タイトルの通り、番長キャラに変貌した主人公キヨハラ。モトキをはじめとした舎弟たちを引き連れ、丸刈り、関西弁、目は据わっており、やたら裸になって筋肉を誇示します。ハラ監督やヨシノブ(高橋由伸)をはじめとした気の弱そうなキャラクターたちを恫喝して笑いを取るギャグが多く、『かっとばせ!』時代とは完全に別のキャラクターとなっているのです。ある意味、リアルさを追求した結果といえなくもないですが、これはこれでちゃんと笑えるギャグになっているところが、作者・河合じゅんじ先生の職人技なのかもしれません。


前作から変貌しすぎ

まるで何かのクスリをやっているのではないかと思うほどのキャラの変貌ぶりで、バイオレントに暴れまくるキヨハラですが、ここでもクワタが、暴走するキヨハラのストッパー役として登場。2人の掛け合いで、見事にギャグが成立しています。まるで長年連れ添った夫婦のようなコンビネーション。光と影、陰と陽。やはり、この2人は切っても切れない関係なのです。リアルの清原も、釈放されてイチから人生をやり直すとしたら、やっぱり一番頼りになる存在は桑田なのかもしれませんね。

ちなみに、14年から刊行されている大人版のコロコロコミックである「コロコロアニキ」では、番長時代ではないほうのマンガ『かっとばせ!キヨハラくん』が復活し、好評連載されていました。そして今回の事件を受けてその存続が心配されていましたが、残念ながら「諸般の事情」により休載が発表されています。一応「休載」ですから、いつの日か復活するかも……。そんなわずかな望みにかけて、再開を待ちたいと思います。

<日刊サイゾー「ザオリク的マンガ読み」>

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引用)
『かっとばせ!キヨハラくん』
『モリモリッ!ばんちょー!!キヨハラくん』
河合じゅんじ / 小学館

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