『国民クイズ』もしも、国がクイズによって統治されたら……衝撃のディストピアマンガ

もしも、国がクイズによって統治されたら……衝撃のディストピアマンガ『国民クイズ』(日刊サイゾー2017/1/24掲載)

  

もしも、あらゆることがクイズによって決まる、クイズ至上主義の世界があったなら、あなたはどうしますか? エンタメ感にあふれ、戦争もない、ほのぼのした世界――。ちょっと住んでみたいと思いませんか?

今回ご紹介するマンガ『国民クイズ』(原作:杉元伶一、作画:加藤伸吉)はまさに、もし日本がクイズで統治される国になってしまったら……という世界を描いた作品。

舞台は、世界一の経済大国であり、軍事大国になった近未来の日本。民主主義を捨て、国民クイズ体制に移行してイケイケになった日本には、もはやアメリカも中国も、国連すらも逆らうことができないのです。

なにしろ、日本国憲法に『国民クイズ』は<国権の最高機関であり、その決定は国権の最高意思、最高法規として行政・立法・司法その他のあらゆるものに絶対、無制限に優先する>などと記載があります。ほのぼのどころか、ガチでクイズが支配する社会なのです。

  


国の最高機関です

  

国民の関心の中心は、日本国政府「国民クイズ省」の提供により、毎日夜7時から11時まで放映されるテレビ番組『国民クイズ』。なにしろ、国民クイズで優勝した国民は、どんなあり得ない望みでもかなえてもらえるという、ジャパニーズドリームな番組なのです。国民が熱狂するのもうなずけますね。

  


クイズでどんな望みでも叶う

  

「いなくなった愛犬を探してほしい」「アダルトビデオのモザイクを消してほしい」なんてスケールの小さいものから、「お隣の奥さんを殺してほしい 」「100億円欲しい」「エッフェル塔を自分の物にしたい」などというトンデモないものまで、日本国が責任を持ってかなえてくれます。実際、国民クイズで「佐渡島を日本から独立させたい」という望みがかない、佐渡島は佐渡島共和国となっています。

  


佐渡ヶ島は独立国

  

当然ながら、問題は難問ばかりです。国民クイズでは、全国から地方予選を勝ち抜いてきた500名が、一次予選「ふるい落としクイズ」にかけられます。そこから決勝クイズに行けるのは、なんと100問中100問……つまり、全問正解した者だけ。失格者は人間のクズとして、強制労働に従事させられるのです。あまりにハイリスクハイリターンなルール。出場者は、文字通り人生を賭けてクイズにチャレンジしているのです。

では、果たして、どんな難問が出題されるのでしょうか? ちょっと見てみましょう。

  


分かるかそんなもん

  

「昨年初潮を迎えた日本全国の少女のために炊かれた赤飯の総量は?」
(1)3トン (2)50トン (3)800トン

「新橋の蕎麦屋『長寿庵』のカツ丼には、グリンピースがいくつのっている?」
(1)4個  (2)6個 (3)オヤジの気分次第

「宇宙人はいるでしょうか?」
(1)いる (2)いない (3)わからない

もうね、「そんなん知るか!」としか言いようがない難問・奇問の数々。赤飯の総量とか、どうやって調べるんだよ!? ラストの100問目に至っては、サイコロの目を当てるという、完全に運だけの問題。単に知識があるだけではどうにもならない、クイズ王も涙目のルールです。

奇跡的に決勝クイズに進出できたとしても、決勝クイズで自分の望みに相当する得点に達さなければ失格。当然ながら、望みのレベルが高ければ高いほど、必要な得点は高くなります。

  


お隣の奥さん逃げてー!

  

「愛犬を探してほしい」190点
「お隣の奥さんを殺してほしい」110万6,482点
「エッフェル塔が欲しい」 6,021万1,905点

といった具合で、失格者は足りなかった点数によって、最高裁でA~Dの戦犯判決を受けることになります。

  


失格者はまさに地獄

  

A級戦犯は全財産を没収され、その財産および自分自身の身までもが日本武道館でオークションにかけられるという、まさしく身の破滅。B級戦犯でも「刑務所の掃除夫20年」や「シベリア送り」など、やはり地獄のような処遇が待っています。クイズの結果で戦犯扱いって……クイズが、ものすごく恐ろしいものに感じますね。

  


国民クイズの絶対的司会者K井K一

  

『国民クイズ』の主人公は、その国民クイズの司会者を務める、K井K一。圧倒的な演出力とカリスマ性で国民支持率98%という絶対的人気を誇る人物なのですが、彼もまた、売れない役者時代に国民クイズに出て失格となり、B級戦犯者として奉仕労働で司会をやらされている身だったのです。

  


カリスマ司会者も実は奴隷の一人

  

K井K一は次第に、国民クイズ体制を転覆しようとする反体制派のテロリストや佐渡島共和国の国民クイズ打倒計画に共鳴するようになり、表面上は国民クイズを象徴する大人気司会者を演じながらも、国家転覆を謀るスパイとして活動するようになるのですが、果たして……。

  


国家転覆計画が動き出す

  

そんなわけで、軽い気持ちで読み始めると、予想以上にスケールが大きくて、とてつもなく緻密な設定にグイグイ引き込まれる作品、『国民クイズ』をご紹介しました。もし本当にこんなクイズ至上主義の世の中になったら、一体どうしたらいいんでしょうね? とりあえず、カツ丼にのってるグリンピースを数えるところから始めたいと思います。

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引用)
『国民クイズ』
杉元伶一 / 加藤伸吉 / 太田出版 / 講談社

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