「試みの地平線」女人禁制!ハードボイルド人生相談

女人禁制!ハードボイルド人生相談「試みの地平線」










童貞なんですがどうしたら・・・ ⇒ ソープへ行け!

こんにちは、J君です。皆さんは「試みの地平線」という本をご存知でしょうか?ハードボイルド作家、北方謙三先生がヤリたい盛りの中高生男子向けモテマニュアル本「ホットドッグ・プレス」に連載していた、悩める若者たちのための人生相談コーナーです。



その内容はまさにハードボイルド人生相談であり、そこには一貫して「男とは何か?」という熱いテーマがあります。今日、ケータイ小説「あたし彼女」なんかが流行るご時勢だからこそ、「試みの地平線」をご紹介して、真の男の生き様とは何かということについて、改めて考え直してみたいと思います。ちなみに・・・あまりにハードボイルドすぎる内容のため今回は女人禁制です。


「試みの地平線」は1982年~2002年までホットドッグ・プレス(略称HDP)で連載されていた北方謙三先生による人気コーナーですが、現在は文庫本「試みの地平線 伝説復活編」という作品で復刻されており、文字通り伝説というにふさわしい内容です。まず、前書きからしてハードボイルド。意気込みがハンパない。


俺がこの本を出版するのは、おまえらに、もっと深く、もっと友情をこめて、語りかけたいからだ。

女など、うるさい時は張り倒せ。女がほんとうに悲しんでいる時、苦しんでいる時、困り果てている時、助けてやれる男であればいいのだ。それよりも、男の時代を作ってみろ。世紀末のこの十年間を、男の時代の出発点にしてみろ。そのために必要なのが、俺は男だ、という思いだ。



・・・開始早々「男」をフルスロットルで押し出しています。「男の時代」・・・今日びなかなか言わないフレーズですよね。現在ここまで熱く男を語れるのは北方謙三先生か車田正美先生ぐらいではないでしょうか。あと、田嶋陽子先生に怒られそうなフレーズもちらほら散りばめられておりますが、女人禁制ということで一つご容赦を。



さて、さっそく青臭いDQNガキどもの相談に答えるコーナー「試みの地平線」をご紹介しますが、質問内容ははっきりいってかなりしょうもないものも含まれていますが、どんな質問にも正面からぶつかりハードボイルドに回答する北方先生の姿はまさに「兄貴」と呼ぶにふさわしいものです。(アッー!的な意味ではありません)


■初体験をスムーズに済ませる方法は?

北方さん、はじめまして。僕はいまだに童貞の17歳の学生です。僕は高校に入学してから2人の女の子と付き合いましたけど、いまだにやったことがありません。(中略)

どうしたらスムーズにできるか、教えて下さい。今あせってるので、早く教えて下さい。(埼玉県17歳)



■先生からのお答え

俺は17歳で童貞を喪(うしな)った。それでちょうど良かったと思う。17歳、18歳、19歳・・・その間に汚れたシャツは脱いでしまうべきだと思うね。(中略)

さて君は17歳で同じ齢ぐらいの女の子を想定して悩んでいるようだが、筆下ろしはベテランとやった方がいい、と俺は思う。(中略)

ソープランドに行け。ソープランドのお姐さんに「俺は童貞だ。セックスというものを知りたいから教えてほしい」と言ってみろ。ほとんどの人は親身になって、熱心に教えてくれるはずだ。相手は30歳でも40歳でもいいじゃないか。



来ました。いきなり結論、「ソープに行け」です。これこそハードボイルド人生相談の真骨頂といえましょう。しかもよく読んでみるとさりげなく熟女推奨です。相談した埼玉県17歳も、たぶん想像のはるか斜め上の回答にさぞかしビックリしたのではないでしょうか。また「童貞=汚れたシャツ」という表現がいかにも文学的ですね。ネットでは30歳まで童貞だと魔法が使えるようになるという都市伝説がありますが、とすると、「30年間汚れたシャツ=魔道師のローブ」ということになりますね。なりませんかそうですか。




■どうしたらもてるようになるか。

はっきり言って俺はもてません。ファッションやヘアスタイルなど、HDPを読んで研究し、最先端できめてるつもりなんだけど、女のコにもてない。俺には何が欠けてると思いますか?(東京都20歳)



■先生からのお答え

頭の中身が欠けている。
男というのは服でもなければ髪形でもない。ただひとつ、頭の中身である。腹のすわり方である。

髪形でいうなら、俺は中学一年の頃から25年間、一度も床屋に行ってない。全て自分で刈っている。だから後ろはめちゃくちゃになってるはずだ。(中略)

ようするに外見なんて気にする必要はないということだ。俺は髪はかっこよくはないかもしれないが自分で刈る。ジーパンで、ぞうりみたいなものを履いて銀座にだって出かける。それなのに、どうだ。女はたかってくる。男は一芸に秀でれば、黙っていても女はたかってくるのである。



「頭の中身が欠けている」ガツンと来ました。確かに20歳にもなってこれだけイラッとさせる質問をする人も相当アレだと思いますが、そんな質問にも目の覚めるようなハードボイルド回答ですよ。「中身があれば女はたかってくる」。カッコイイ!男なら一生に一度でもいいから言ってみたいセリフですね。でも床屋にはちゃんと行った方がいいと思います。




■ペニスが小さいことで悩んでいる

私の悩みは、非常にペニスが小さいことです。平常時で4cmくらい、縮んだ時は2cmくらいしかありません。(K市27歳)



■先生からの回答

おまえはSEXをしたことがあるのか?もしないのならば、すぐにソープに行け。そして、「俺のものは小っちゃいか」と訊いてみろ。(中略)

「多少の違いはあるけど、男のペニスなんてみんな同じよ」と答えるに決まっている。それが真実だよ。(中略)

男が問われるのはペニスの大きさではない。金玉の大きさだ。もちろん象徴的な意味での金玉でぶら下がっている金玉じゃないぞ。その意味は、小僧どもみんなで考えてみろ。



またソープ!まるで斡旋業者のように次々と読者をソープへ送り込む先生。熱いですね。ていうか「俺のものは小っちゃいか」と訊いてみろ、てこれはかなりのレベルの罰ゲームですよ。あと、読者のレベルを考えてちゃんと真に受けないように「もちろん象徴的な意味で」と注釈を入れているあたり、気配りが行き届いてますね。さあ、みんなで「金玉」の意味を考えてみよう。




■ほっぺたが赤くて悩んでます。

北方さん、僕の悩みをきいてください。僕は小さいころからほっぺたが赤く、(中略)

友達からリンゴ病じゃないかといわれて病院にいったけど、医者にはリンゴ病ではないといわれた。これでは彼女ができません。治す方法があったら教えてください。(山口県高校3年)



■先生からの回答

俺の肩には毛が生えてる。凄い毛が生えてる。それも左肩だけだ。高校時代から生えていて、当時はずいぶん馬鹿にされた。(中略)

そんな男が今、何をやってるか。「男の倶梨伽羅紋紋(くりからもんもん)、見てみるか?」とか言って、グッと肩を出して自慢しているのだ。(中略)

そうすると女の子は、俺に抱かれているときに、肩の毛を触っている。ああ、この男なんだ、と確認できるのは肩の毛なのだよ。一度、俺に抱かれた女は、絶対に忘れることもないだろう。



自らの体毛までネタにして若者を励ます先生。しかも自らのコンプレックスな部分を武器にまでしてしまうなんて・・・本当の男はこのぐらい豪快でないといけませんね。勉強になります。質問した少年も、きっと今頃は赤いほっぺたを「男の倶梨伽羅紋紋」へと昇華させていることでしょう。(無理か)




■仮性包茎で悩んでいます。

北方さん、僕は17歳の学生です。僕の悩みははずかしいんですが、包茎なんです。(中略)

どういう病院に行き、いくらくらいお金がかかるのか、もしよろしければ教えてください。なさけないです・・・・。(大阪府17歳)



■先生からの回答

正直に告白すると、俺も仮性包茎気味なのだよ。どちらかというと皮が余分にある。でも俺はむしろそれがいいと思っている。というのはあそこがいつも敏感になっているからだ。(中略)

俺はこの前、東ヨーロッパを旅行してきた。あちこちの公衆便所で、隣でやってるやつのを見たが、包茎がいっぱいいたね。(中略)

仮性包茎なんてたいした問題ではないと、国際的感覚で俺は考えるね。



この質問、どう考えても司馬遼太郎賞作家の北方先生よりも高須クリニックあたりに相談した方がいい気がするのですが、それでもちゃんと回答する先生。しかも自分の皮の余り具合まで暴露です。こうなってくると説得力も全然違ってきますね。国際的観点から包茎を語る、本当の男ならこうありたいものです。




■口臭と体臭がひどくて悩んでいる。

私の悩みは、口臭と体臭がとてもひどいことです。それに気づいたのは中3の二学期です。クラスメートに「臭いからあっちにいけ」と大声で言われました。凄くショックを受けました。(?県?歳)



■先生からのお答え

越前に永平寺という禅寺がある。そこに行って、三年間修行してこい。(中略)

あらゆる煩悩から脱却し、悟りを開く。そこで3年間修行すれば、口臭や体臭なんて絶対気にならなくなる。それが嫌ならもう少し図太くなって考えろ。たとえば、ニンニクを毎日食う。それで「ニンニク臭い」と言われても、「当たり前だ。俺のこのパワーの源はニンニクだ」と言えるぐらいの図太さがあれば、悩みは自然に消える。

とりあえずソープに行ってみろ。ソープ嬢に「クセェ」と言われたら、「これが俺の臭いだ」と言ってやれ。



きっと励ましてくれると思いきや、いきなり禅寺修行かニンニクを食うか、究極の選択を迫る先生。読者の期待をはるかに上回るハードな回答こそがハードボイルド人生相談の真髄です。それにしても、悩みの行き着く先がことごとくソープなのでソープ嬢も困っちゃうだろうなあ。




■彼女の下着を盗んでしまった!

北方先生、はじめまして。僕は彼女と、彼女の部屋でナニをしていたんです。そのときに彼女のY子がティッシュペーパーを取りに、部屋から出て行ったんです。そのすきに、僕はY子のタンスから、パンツをかっぱらってしまいました。はっきりいって、Y子に合わせる顔がなくてこまっています。(埼玉県高校3年)



■先生からの回答

「俺は好きなんだ、とくに、お前が好きだから、お前が穿いているものが好きなんだ」といったような、詭弁を使うしかない。(中略)

ちなみに俺は、女の子のあそこのヘアを集めるのが好きだ。グッと掴んで、ギュッと引っ張ると、指の間に二本か三本ひっかかってくる。で、その女が帰った後で、それをジッと見つめて、こういうヘアを持っている女はどういう性格なのか、分析する趣味がある。これだって正常とは言えないだろう。



どう考えても嫌がらせに近いレベルの質問ですが、それでも先生はキレずに回答します。聞いてもいないのに自分の性癖まで暴露してしまって結構シャレになっていない気がするのですが、先生が言うとなぜかカッコよく聞こえてしまうから不思議。





■ソープに行ったが立たなかった。


童貞である僕は、北方先生の助言通り、ソープに行きました。しかし僕のアソコは立ちませんでした。緊張のせいだと思い、2回、3回と行きましたが、やっぱりダメでした。(神奈川県23歳)



■先生からの回答

二、三回行ってダメだったら四回、五回と行く、それしか方法はない。ただし、一つだけ助言しておく。気に入った女の子がいたらその子のところに通え。そして、「僕は童貞です。どうしても君で童貞を捨てたいんです」と、お願いしろ。そうしたら、きっとなんとかしてくれるさ。(中略)

童貞なんてものは、濡れたシャツみたいなもんだ。着心地が悪いんだから、早く脱いで乾いたシャツに着替えたほうがいい。(中略)

その方法でやってみろ。そして、見事に童貞を捨てることができたら、また手紙をくれ。



ついに、先生の言われたとおりソープに行く奴出現。しかし、ソープで起こった出来事はあくまでソープでの解決を促す先生。ハードですね。そして、今度は「童貞=濡れたシャツ」説を提唱しています。繰り返しになりますが、この場合の30歳魔法使いの着ているシャツはさぞかしビショ濡れになってることでしょう、ドラクエだとこれを「水の羽衣」といいます。





■妻に何度バレても浮気がやめられない。


35歳、結婚5年目のサラリーマンです。私の悩みは浮気がやめられないことです。(中略) さらに問題なのは、私はワキが甘く、必ずバレるのです。(大阪府35歳)



■先生からの回答

必ず女房にバレてしまうというのは、ワキが甘いわけでも何でもない。ただ単におまえ自身がバラしたいと思ってるからだ。おまえは女房に浮気がバレること自体が快感なんだ。(中略)

要するにおまえはただのMだSMクラブに行け。SMクラブに行って女王様に思う存分虐めてもらえ。



最後にご紹介するのは、35歳のいい歳したサラリーマンのしょうもない質問ですが、本当に悩んでるのか自慢したいのか良く分かりませんね。そこへ先生がガツンと一喝。おなじみ「ソープへ行け!」・・・が来るかと思いきや「お前はMだ!SMクラブへ行け!」でした。予想を裏切って一番ハードなところに行きつきました。言われた方はたまったもんじゃないと思いますが、読んでる方は実にスカッとする回答。先生ありがとうございました。





というわけで伝説のハードボイルド人生相談「試みの地平線」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?北方先生の厳しくも暖かいメッセージが感じ取れたことでしょう。

他にも、ここではとても紹介しきれなかった先生の必殺技「必殺恥骨ゆさぶり」のやり方などが公開されていたりと、読み応えがありすぎることになっています。



また、このテキストでは特に面白おかしい部分だけ取り上げておりますが、いじめや自殺を考える若者に対する真剣な回答や女性相談者に対しての回答もあり、悩める現代人への生きる指針が盛りだくさんです。未読の方は是非一読をおススメします。真の男に近づくことができるかもしれませんよ。



ちなみに、この「試みの地平線」の最大のサプライズは先生が作品後半で「俺自身はソープへ行ったことがない」と言ってることです。なんという壮大なお前が言うなオチ・・・いろんな意味で伝説の一冊です。





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出典) 試みの地平線 伝説復活編
 講談社/北方謙三

参考) Amazon →  レビュー →

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