「サルでも描けるまんが教室」 読んでも描けない!?マンガ界が戦慄する禁断の書 ”サルまん” レビュー

読んでも描けない!?マンガ界が戦慄する禁断の書「サルでも描けるまんが教室」 ”サルまん” レビュー

ちんぴょろすぽーん!!
人間誰しも、単なるサラリーマンになるよりも、己の才能一本で勝負してみたいなんて願望があるものです。特にマンガ大国日本ですから、漫画家になってみたい人も多いのではないでしょうか?最近はWEBからデビューするなんていう道もあったりして、ド素人がスターになれる可能性も出てきましたし、正直言うとJ君だって漫画家になりたかったよ!俺にもS村河内守氏のような才能があれば・・・(自分で描く気はないらしい)

とまあ、ゴースト的な話は置いておいて、明日のクールジャパンを背負って立つかもしれない漫画家のタマゴさんが読んでおくべき究極のマンガHowTo本を本日はご紹介しましょう。マンガ界を戦慄させた伝説の名著「サルでも描けるマンガ教室」。通称”サルまん”です。


「サルでも描けるマンガ教室」竹熊健太郎先生相原コージ先生のコンビ作です。1989年にビッグコミックスピリッツで連載されていた作品ですが、単行本が過去に何度も復刻されており、いかに本作品がバイブル的存在となっているかを物語っています。25年以上前の作品のため、古臭いんじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、なかなかどうして今のマンガでも十分に通用する・・・いやむしろ今だからこそ一周りして、新鮮に感じられる熱いマンガ論で溢れています。


竹熊先生と相原先生

こんな感じで竹熊先生と相原先生が新人漫画家としてデビューして、野望を達成していくというストーリーです。ちなみにこの画柄には元ネタがあって、「野望の王国」という作品のパロディとなっています。「野望の王国」は、メンズに生まれたからには、一生に一度は読んでおかなければいけないマストアイテムです。年内中に必ず読んでおくように!


男の必読書 野望の王国

さて、漫画家になったらまず何を決めるか?ペンネームだろ!!ということで、まずは成功するペンネームの決め方から教えてくれます。そこから教えてくれるのか!手取り足取りすぎる!!


ペンネームはちゃんと決めよう

マンガ界におけるペンネームのルール・・・名付けて「ペンネーム四戎」
要するに、無名の時にテキトーにペンネームをつけていると、いざ売れた時に後悔することになるぞ!とそういうことですね。ガチョン太朗とかね。しかも、これはマンガ業界以外でも当てはまります。例えば「じゃまおくん」とかふざけた名前をつけている奴がいるのですが、イベントで名前を呼ばれる時、恥ずかしくてホント悲惨な思いをしたそうです(なぜか伝聞形式)。


こよりを使え!

その他にも、ワク線を引いたら原稿用紙がインクで滲んでしまった時の対処法とかも紹介されていて、伊東家の食卓並みに実践的。そんな細かいことまでレクチャーしなくてもいい気もしますけど。


パクリはまんがの本質


みんなやってるよ!

人物のポーズやら構図に困ったら、他の作品をパクれというありがたいアドバイスもあります。トレス疑惑とか言われてネットで叩かれそうな懸念もありますが、みんなやってるって言うんだから全然問題ないですね!

さて、今まではほんの序の口。ここからがすごいです、なんとマンガのタイプ別にウケるマンガの描き方がレクチャーされています。つまりこの通りに描けば大ヒット確実というわけです。

■ウケる少年まんがの描き方


パンチラ進化論

まず少年マンガにおける重要要素としてあげられるのが「パンチラ」です。少年マンガにおけるパンチラ表現の進化について紹介されています。たしかにパンチラは大事です。J君なんかパンチラのないマンガは一切読みませんからね!!

しかし、少年マンガでもっと重要なのは「バトル」一日一勝負が少年マンガの基本なのですが、ここでバトルマンガの宿命「強い奴のインフレ」という現象が発生します。


少年マンガの永遠の課題

インフレが進み過ぎると最終的は「悪の概念」みたいなよく分からないのと闘わざるをえなくなるため、敵の強さはスケジュールに合わせてバランスよくパワーアップしていく必要があるのです。インフレは計画的に!


罰ゲームじゃん

主人公にさせるべき「特訓」についても網羅されてます。ギプスに回転ノコギリにワニ・・・特訓アイテムの定番ですね。


あるある

ラストシーンは主人公の顔を大空どどーんと載せるのが少年マンガのお約束。確かにこういうマンガ結構見たことある!少年マンガのラストシーンって最初から決まっていたのか!!

■ウケる少女まんがの描き方


遅刻×食パン=出会い

少女マンガで重要なのは、ヒロインが「ドジっ娘」であることです。
朝、遅刻しそうになってパンを咥えたままダッシュ、見知らぬ男子学生と激突。その日、クラスの転校生として、朝ぶつかった男子学生が入ってくる・・・という一連の出会いフラグがヒットする少女マンガのセオリーです。


なぜか猫にやさしい

そして、嫌なやつだと思ってた男子が、実は捨て猫を拾う心優しい一面があるのを目撃してしまい、胸キュンしてしまうわけですね。その男子がバンドマンだったりするとさらにポイントアップです。

■ウケる青年まんがの描き方


ぼっきーん!がポイント

青年マンガでヒットする要素として、竹熊先生は「エロコメ」を提唱しています。「エロコメ」とは、一般青年誌では到底受け入れられないエロマンガの中に、コメディの要素を入れるだけで、一般青年誌に掲載が可能になるだけでなく、ヒット作品になってしまうという魔法のような手法。


擬音が大事!

エロコメとエロ劇画の違いも懇切丁寧に解説。同じシチュエーションでも擬音を変えるとこんなに違った雰囲気になるんですね。


スポーツ新聞のマンガにありがち

成人誌と青年誌の微妙なラインをくぐり抜けるエロコメだからこそ必要な「間接的性器表現大全集」なんてものまで紹介されてます。まさにマンガ界の叡智の結晶といえましょう。ちなみにオットセイを見てピンときた人は結構なオッさんのはず!!

■ウケるレディコミの描き方


秀逸な例え

J君がほとんど免疫のないレディコミの世界ですが、ズバリ「レディコミはテトリス」であると。

平凡だけど優しい夫、何不自由のない生活。幸せなはずなのにどこか満たされない、そんな欠けたピースのスキマを埋めてくれるセクシーなジゴロタイプの男の登場、1日限りのアバンチュールのつもりがズルズルと・・・(以下無限ループ)というわけでドロドロのドラマが始まっていくわけですね。なるほど深い考察です。


能條純一風

他にも、麻雀漫画では麻雀のルールが分からなくても、画でハッタリを効かせておけばなんとかなってしまう・・・などなど珠玉のアドバイスも。ほんとだ!全然麻雀のルールに触れてないのになんかそれっぽい!

さて、マンガが描けた後は、いよいよ編集部へ持ち込みにいくわけですが、そのアドバイスも非常に実践的です。なんと持ち込み雑誌別に攻略法が載っています。これは画期的!

例として「桃太郎」をマンガ化した場合。雑誌別のカラーにあわせて作品の内容もこのように変える必要があります。


世紀末風テイスト

「少年ジャンプ」に持ち込む場合は、北斗の拳のようなテイストを利かせつつ友情・努力・勝利がテーマになっている必要があります。


楠みちはる風?

「少年マガジン」の場合はお色気青春スポーツものです。お色気はやっぱり必須。


フォントがラブリー

「少年サンデー」はポップなラブコメ風。主人公は桃太郎だろうと金太郎だろうと女の子にすべし。


どおくまん系?

「少年チャンピオン」は硬派な応援団風・・・かな?
チャンピオンだけ世界観が別次元な気がしますね。


飯が重要

持ち込みに行ったらあとの編集者の対応によって脈アリかどうか分かります。レストランで飯奢ってくれたらかなり有望とのこと。

さらにさらに、入門書だというのに作品の「打ち切り」が決まった時の振る舞い方や、正気の保ち方まで至れりつくせりです。まさにゆりかごから墓場まで面倒見てくれる感じですね。ちなみに竹熊&相原コンビはどうなったかというと・・・


これはひどい

仲間割れしたり・・・


病んでます

作画が崩壊して完全にイッちゃってたり・・・って全然対策できてねーじゃん。
これが後の「なにがオモロイの?」あたりに繋がっていくんでしょうね。

ところで、マンガの入門書ですから、本書には当然ながら竹熊先生と相原先生によるサンプルマンガが掲載されています。その名も「とんち番長」という作品。これがサンプルマンガなのに異常にクオリティ高いのです。


本書のエッセンスを凝縮した作品・とんち番長


熱いとんちバトル

その名の通り、とんちバトルマンガです。ケンカではなく「とんち」を使ってバトルして、日本全国の番長達を打ち負かしていくというストーリー。「とんち勝負」に敗れると、頭に埋め込まれた爆薬が爆発してしまうというハードかつスリリングな設定で、単なる一休さん現代版みたいな作品とは一線を画しているのです。

後半は、悪の組織が率いる「黒とんち」と、とんち番長による正義の「白とんち」による闘いで割とカオスな感じですが、これだけでも一つのマンガ作品として十分に読む価値があります。

というわけで、「サルでも描けるマンガ教室」をご紹介しました。薄々感じていたかもしれませんが、新人漫画家向けのHow To 本であるかのような体で、マンガ業界の裏事情を暴露しまくった挙句、おそろしい打ち切りの現実まで。読み終わった後はむしろ漫画家目指すのやめよっかな・・・という気分になってしまう戦慄の書なのでありました。最後は竹熊先生が考えた渾身の一発ギャグでお別れしましょう。


マンガには一発ギャグも必要です

ちんぴょろすぽーん!!

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出典) 「サルでも描けるマンガ教室」 相原コージ/竹熊健太郎/小学館

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