高橋留美子先生の日常を描いた、もう一つのるーみっくわーるど「けも・こびるの日記」
少し前にX上で、若かりしころの高橋留美子先生を描いた姿が話題になっていました。チャイナドレス姿に濃い色のサングラス、くゆらせたタバコと放たれる大物オーラ。まるでチャイニーズマフィアの女ボスみたいな風貌です。
このコマは島本和彦先生の「アオイホノオ」30巻に掲載されており、主人公で若手漫画家のホノオモユルが、漫画家が一同に介する小学館の謝恩会で、高橋留美子先生に遭遇するシーンです。
26歳にしてこの貫禄
いやしかしこの貫禄。まさにレジェンド漫画家の極みといえましょう。一説にはラムちゃん並の抜群のプロポーションもお持ちだとか…まあ高橋先生巨乳説の真偽はこちらのまとめを読んでいただくとして、この「アオイホノオ」でもそうなのですが、高橋留美子先生は大御所作家としては、かなりあちこちでイジら…ネタにされているのです。漫画家の先生って作品とのギャップに気を使ってか、顔出し無しはもちろん、プロフィール自体が謎に包まれている人も多いですよね。でも、高橋先生はガンガン出ています。顔出しはもちろんのこと、自身をネタにした漫画も存在しているのです。本日ご紹介するのは、そんな高橋留美子先生自身を描いた漫画「けも・こびるの日記」です。
「けも・こびるの日記」とは、高橋留美子先生やアシスタント達の日常を描いた漫画で、いわばエッセイ漫画的な作品です。掲載誌は「少年サンデーグラフィック うる星やつら」という、いわば「うる星やつら」に特化したファンブックで、1982年から1986年にかけて、No1~No15までの全15巻が刊行されていました。そのうちのNo1~No11に掲載されています。
エラいことになってる高橋先生の仕事場
「けも・こびるの日記」とはずいぶん謎めいたタイトルですが、その由来は高橋留美子先生の同人誌時代のペンネーム「けも・こびる」から来ています。ちなみに留美子を逆から読むと「こびる」になるというアナグラムがあるのですが、「けも」の方は果たして一体どういう意味なのか…高橋先生がその由来を一切明かしていないため不明となっています。
ユルさが暴発気味
「けも・こびるの日記」の作品自体は「うる星やつら」「めぞん一刻」「らんま1/2」のようないわゆる高橋先生の代表的な作品に比べると、特にオチもなければ、内輪ノリも強め、そしてなにより緊張感がゼロ。とにかくユルユルに描かれており、るーみっくファンにとってはそこがたまらないのです。
そうは言っても高橋留美子先生の作品だから、めちゃめちゃ面白いんでしょ?と思われるかもしれません。それに対する答えはイエスでもノーでもなく、とにかく「ユルい」です。たとえば、少年サンデーグラフィックのNo2に掲載されていた話はというと…
メガネで誰かわかるね
高橋先生の仕事場(るーみっくプロ)のあまりの汚部屋ぶりに、アシスタントが本棚の購入を提案。その通り本棚を勝ったのはいいものの、一体いつ整理をするのか…しないのか…一向に進みません。
ゴミと机しかないのな
そんなこんなで最終的にきれいになりましたとさ…というお話です。いや、こういうのでいいんだよ、こういうので。リアル日常でそんなにおもしろイベントが頻発するはずがないんです。これこそが高橋先生のリアルなわけです。
第5巻
次にご紹介するNo5の掲載内容は…
職業病だよね…きっと
高橋先生が街で見かけた可愛い女の子をストーキン…ついていって観察するという話かと思いきや…
お酒も好きみたい
いきなり寝酒の話に飛び…さらに
肉腐ってんのかい
スタッフのために高橋先生が豚汁を作り始めるものの、肉が腐ってたので肉の部分だけ高橋先生が食べて、肉なし豚汁を振る舞うという、スタッフ想いの高橋先生の優しさが見て取れるような見て取れないような話になっています。ちなみにサンデーグラフィック…では正月料理にチャレンジする高橋先生の姿も。
さて、No9に行きましょう。
編集が同じ顔
友達も同じ顔
スタッフも友達も編集者もみんな高橋先生に似ていて見分けがつかないというお約束(?)の展開からはじまり…
日の丸扇子もよく見る
るーみっく作品ではおなじみのギャグ「ちゅどーん」のシーンを挟みつつ
まさに日常
仕事場にマッサージチェアーが導入され、スタッフがみんなハマってしまうという展開でした。
どうでしょう、このユルさとオチのなさ、伝わりましたでしょうか。タイトルにもある通り「日記」なのですからこれでいいのです。
けも、の24時間
ちなみに、番外編として「ダストスパート」という短編集に掲載されている「けもの24時間」という作品もご紹介しておきましょう。
目が座ってる?
「うる星やつら」連載開始初期の頃のアパート住まいの時代の話とのことで、こんな感じでトレードマーク(?)のメガネはしておらず、コンタクトをしている高橋先生の姿が珍しいですね。
押し入れで就寝
気分がなかなか乗らず、漫画を書き始められない高橋先生。最終的にはドラえもんのごとく押し入れで就寝します。
ちなみにタイトルの「けもの24時間」ですが、「けもの」だと思われないようにわざわざ「けも」の部分にルビが振ってあります。あくまで「けも」の24時間ということなんですね…だから「けも」って何なのさ??
というわけで、高橋留美子先生による高橋留美子の日常マンガ「けも・こびるの日記」をご紹介してみました。思えば、J君は「うる星やつら」アニメ放映第一回目でいきなりおっぱいポロリシーンがあったため、親に「うる星」を禁止され、それから数年後、中学生の頃に「らんま1/2」に出会って、そのあまりの面白さにスーファミ版の「らんま」まで買ってしまい、大人になってから読んだ「めぞん一刻」でツンデレ未亡人というジャンルにハマるといった業の深い人生を送ってきましたが、こんな作品もあったということで、改めてるーみっくわーるどの奥の深さを思い知らされた思いです。
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出典・引用)
「少年サンデーグラフィック うる星やつら2」 高橋留美子/小学館
「少年サンデーグラフィック うる星やつら5」 高橋留美子/小学館
「少年サンデーグラフィック うる星やつら9」 高橋留美子/小学館
「アオイホノオ」30巻 島本和彦/小学館
「ダストスパート」 高橋留美子/スタジオ・シップ