「孤独のグルメ」 酒の飲めない日本人~下戸の憂鬱特集

 

「俺の食事に密はない」 by井之頭五郎
緊急事態宣言が解除されたと思ったら今度はマンボウになりました。と思ったらやっぱり緊急事態宣言すんのかい。せんのかい、宣言すんのかい!

まるで吉本新喜劇のように緊急事態宣言のドタバタ劇が続く今日このごろですが、とにかくお酒はダメ、という相変わらず飲食店には厳しい環境です。そんな中「孤独のグルメ」で貫かれるゴローちゃんのニューノーマル対応型のグルメスタイルが注目されていますね。なにしろ常に一人だし、黙食だし、そもそもお酒にいたっては飲めません。

もはや井之頭五郎か未成年か、というぐらい酒の飲めない人の代名詞となっている感があるゴローちゃんですが、実は「孤独のグルメ」ほど下戸にまつわるセリフが大量にあるマンガもそうそうありません。というわけで今回はお酒の飲めない井之頭五郎にスポットを当てた、「孤独のグルメ 下戸の憂鬱」特集をしたいと思います。

いよいよシーズン9が始まる「孤独のグルメ」ドラマ版では原作者の久住昌之先生が、名物コーナー「ふらっとQUSUMI」でビールを「麦スカッシュ」、日本酒を「井戸水」、ワインを「ブドウジュース」とよんでは美味しそうに呑んでいます。そんな下戸とは程遠い存在の人がどうしてゴローちゃんの気持ちをこんなにリアルに代弁できるんだろうか・・・?と常々不思議なのですが、そんな真に迫る下戸ゼリフの数々を早速ご紹介していきましょう。

 
 

■大きなお世話編

ゴローちゃんはなぜか酒が呑めるタイプだと勘違いされやすいらしく、そういうシーンが結構出てきます。

 

「井之頭さんて一滴も飲めないんでしたよね」「ええ、前世によほど酒で痛い目にあった者がいたとみえて・・・」


金持ってそうなオバサン

 

上客らしいオバサマに調子を合わせて下戸ジョークを飛ばすゴローちゃん。1巻の第3話。この頃はまだ比較的返しにも余裕がありますね。しかしこの後すぐ、ジョークを飛ばす余裕が全くないシーンが待っています。

 
 

「あんたビール飲まへん?」「いえ私飲めないんです」「いるんやこーゆー人な、いかにも飲みそうで飲まない人」

 


一人じゃないとロクなことがないゴロー

 

1巻第7話、大阪のたこ焼き屋台での一幕。東京者で完全アウェーのゴローちゃんに、ズケズケ行く地元の人々。相手はおそらく悪気がまったくないんですけどね・・・こういう状況ってたぶん下戸あるあるです。

 
 

「いらっしゃいお飲み物なんにします?」「いや飲み物はいらない」

 


即答すぎる

 

びっくりするくらいのクイックアンサーをする1巻第4話、北区赤羽の鰻丼の話での一幕。
居酒屋ではどうせ聞かれるだろうと思って、はじめから打ち返す準備をしているようですね。ここから、いくらどぶ漬け、岩のり、おしんこ、生ゆば刺し、鰻丼など怒涛のお食事ラインナップで、おつまみをおかずとして立ち上がらせているのです。飲まないから物量で勝負!

 

「あのウーロン茶ってありますか、ハイじゃなくて」

 


茶とハイは別物!

 

一方で逆にゴローちゃんから機先を制しに行くパターンもあります。2巻第4話、ウーロン茶って言っておきながら「ハイじゃなくて」と念押ししています。これは、ウーロン茶を頼んだつもりだったのにウーロンハイを出されたことのある苦い経験がある人限定のやつだ。ゴローちゃん、たぶん過去にやられてるんだな・・・。

 


医師公認のいい体

 

たぶん酒が呑めそうだと思われている原因の一つとして、ゴローちゃんが「いい体」してることも関係しているんだと思います。ガタイがいい人って酒も飲めそうなイメージありますよね。誤解です!いい体してても酒が飲めない人はいるんです!

 
 

■居酒屋で戸惑い編

酒は飲めないけど、居酒屋には美味いものがたくさんある、じゃあどうするのか?飲めないけど入ってもいいのか?そういう葛藤が「孤独のグルメ」にはたくさん出てきます。今どきのお店って別にソフトドリンクの注文でも文句言われないと思うんですが、お酒じゃないとお通しがでないとか、微妙に差別化されてるお店もありますよね。

 

「どう見たって居酒屋の面構えだ、それもちょっと高めの、ええい!ままよ」

 


高めの居酒屋ほど入りにくいものはないよね

 

2巻第7話、クライアントに紹介してもらった美味しい煮込み定食のお店。事前にお酒はない店だと分かっているのに、高級居酒屋風の店構えにビビってしまいます。「ええい!ままよ」って意を決しすぎ!

 
 

「酒を飲まないでお茶漬けだけを食べて帰るってアリだろうか」

 


自らハードル最高店へ

 

2巻第4話、小津安二郎の映画を見てどうしてもお茶漬けが食べたくなったゴローちゃんが三鷹のお茶漬けの店の前で葛藤するシーン。お茶漬けって酒の〆的なイメージがかなり強いメニューですよね。これは下戸には難易度高いんじゃないでしょうか。店の中が見えないのも入店難易度をさらに上げています。

 
 

「ボクも飲めないからその辛さがわかるんです」「部外者は黙ってろ」

 


パワハラ上司には制裁を!

 

お茶漬けが食べたくて入店したものの、部下に無理やり酒を飲ませるパワハラ客にムカついてしまったゴローちゃん。アームロックからの投げをカマしてKO。下戸の気持ちを代弁してやりました。しかも結局お店でお茶漬けが食べられないという伝説回!

 
 

「ランチあれど飲み屋は飲み屋だ、下戸には落ち着かない」

 


気持ちは分かるけどねえ・・・

 

2巻第9話、有楽町でランチジプシーに陥ったゴローちゃん。今や居酒屋もランチタイムをやっているのはごく普通のことですが、お店によっては昼呑み客がいたりしますよね。これがピュアノンアルコーラーのゴローちゃんにとっては嫌だったみたいで、結局素通り。揺れ動く乙女心のような繊細さを持ち合わせています。

 
 

「しかしこちとら酒は飲まないから、こういう店はどうも苦手だ」

 


突然の江戸っ子気質!

2巻第1話、静岡に来たついでに静岡おでんのお店を物色するも、下戸には入りづらいお店ばかりといういつもの展開。しかし結局・・・

 

「しかしみんなうまかったな、遠慮しないで入ってみるもんだな居酒屋も」

 


遠慮しなくていいぞ!

 

おでん屋に入った後はすっかりご満悦。真逆のセリフが飛び出します。この手のひら返し感もまたゴローちゃんの魅力といえましょう。酒が呑めなくても遠慮せず、居酒屋にガンガン入ってバカスカ食って、お店にお金を落としてあげればよいのです。

 
 

■やっぱりちょっとうらやましい、下戸の嘆き編

お酒が飲めないことに対し、基本的には強気の姿勢を崩さないゴローちゃんですが、時にはやっぱり弱気になります。そんな下戸の嘆きが込められたセリフの数々がこちらになります。

 

「酒を飲めないことをツライと思うことはないがこの場合はやはり酷だ、残酷です」

 


ノーライスがショックすぎて弱気に

1巻第18話、若者の街・渋谷でミドルエイジの星ゴローちゃんが、ちょっと飯を入れていくような店を探しに探して遂に見つけた餃子の旨い店。しかしそこは餃子にビールが基本の店で、ライスを頼むことができない。仕方なく焼きそばを追加するも、なんか違う。やっぱり餃子はライスだろう・・・なんで酒なんだよという嘆きです。

 
 

「俺ってつくづく酒の飲めない日本人だな・・・」

 


酒の飲めない日本人とは?

 

しまいにはこの虚ろな表情ですよ。「つくづく酒の飲めない日本人」て、ライスがないだけでそこまで落ち込まなくてもいいじゃないか!思わずゴローのメンタルが心配になってしまいますね。あと代用品として頼まれた焼きそばの立場がなさすぎてツライ。

 
 

「ボクもせめてつきあえる程度には飲めたらいいんだけど」

 


小雪との出会い

 

2巻第2話、ペルー料理を食べつつ、かつての恋人・小雪(サユキ)との出会いのエピソードに浸るゴローちゃん。セレブの集う立食パーティーで言ったこのセリフがきっかけで、同じく酒を飲まない小雪と意気投合。パーティーを抜け出して二人でスイーツを食べに行くことになるのです。ゴローちゃん、酒が飲めないきっかけでナンパなんて、なかなかどうしてちゃっかりしていますね。ちなみに1巻に出てきた小雪と2巻に出てきた小雪はだいぶビジュアルが違いますが、皆さんはどっちの小雪がお好き?(どうでもいい)

 
 

「こんな晩ちょっと飲めたらいいのかなぁ」

 


しんみりしてます

 

同じく2巻第2話。ペルー料理の店を出た後も、小雪となんで別れてしまったのかと未練たらたらのゴローちゃんですが、こういう寂しさMAXの時に酒の力を借りれないっていうのが下戸の悲しさなのでしょう。インカコーラでは心のスキマは埋められなかったようですね。

 
 

■下戸の大逆襲~ポジティブ編

 

「なくてけっこう コケコッコー」

 


雑なオヤジギャグが炸裂

 

めちゃくちゃ嬉しそうな表情のゴローちゃんが印象的な、2巻第7話のセリフ。お酒の飲めないお店だけどいいですか?と確認された時に思わず飛び出したセリフです。酒の飲めない店、全然結構!むしろウェルカムであるという心情を表していますね。それにしてもこういう雑なオヤジギャグは読者が赤面してしまうのでやめていただきたいものです。

 
 

「酒は飲めないけど酒の肴は何でも好きだ」

 


酒の肴=飯のおかず

 

酒の肴は御飯のおかずにもなるというゴローちゃんの持論を象徴する一コマですが、実際ゴローちゃんは酒を飲まない代わりに食い物をやたらめったら頼むので、肴と酒でチビチビやる客よりも、よっぽど潔くお店にお金を落としてくれる上客と言えるのではないでしょうか。誰にも迷惑をかけない食い尽くし系スタイル。それが井之頭五郎です。

 
 

「いつも行く寿司屋とは大違いだが・・・それでも酒を飲まない俺にはこっちのほうが気が楽でいい」

 


回転寿司は下戸の味方

 

1巻第2話、吉祥寺の回転寿司でランチを決めるゴローちゃん。老舗の蕎麦屋とか回らない寿司屋って、食事というより日本酒と合わせて嗜む・・・みたいなのが粋とされてる風潮がありますよね。とにかくお腹いっぱい食べたいというキッズのようなモチベーションでお店に入ると面食らう時があります。しかし回転寿司ならそんな気遣いは無用です。完全に自分のペースを掌握できる、そういった気持が吐露されているといえます。でもさり気なく、普段は高い寿司屋に行ってるアピールをしていることも見逃してはなりません。

 
 

「酒飲みの肴で飯を食うのってなんか痛快、下戸の大逆襲、この店にして大正解!」

 


よっぽどフラストレーション溜まってたのね

 

2巻第11話、大手町でのランチタイムにて。博多とんこつラーメンの店でラーメンにライス、さらに夜の飲み屋メニューであるサンマの味噌煮缶詰を発見し、追加注文した時のセリフです。
たかが缶詰ですが、飲み屋向けメニューをあえてライスのおかずとしてランチタイムに加え、一矢を報いた瞬間、下戸としていろいろと抱えてきたゴローちゃんのストレスが大開放されてしまったのです。そのセリフこそが「下戸の大逆襲」。ゴローよ、お前はゴジラか。

 
 

「酒を飲まなくても、肉を焼かなくても、ゴキゲン」

 


でも肉は焼きたい

 
 

2巻第9話、有楽町のガード下で居酒屋ランチ華麗にスルーし、流れ流れて焼肉メインじゃない韓国料理の店にたどり着いたゴローちゃん。冷麺とチャーシュー丼を頼んだ後のこのセリフ。ゴキゲンみたいで何よりです。

 
 

「そうだったな、俺達がここを気に入ったのは、ハラル料理で酒がないとこ、酔っぱらい皆無」

 


パリでも下戸ゼリフ

 

2巻第13話、フランスパリのアルジェリア料理。かつてパリで小雪と一緒に暮らしていた頃を思い出し、パリ出張で思い出のアルジェリア料理屋に。ハラル料理のために酒がないのが下戸のゴローちゃんにとってお気に入りだったようです。でも代わりに頼んだジュースがイマイチで、下戸の大逆襲 in Parisとはいかなかったようです。

というわけで、「孤独のグルメ」「孤独のグルメ2」よりゴローちゃんの下戸ゼリフの数々をご紹介しました。下戸云々よりも、小雪への未練が凄すぎてちょっとアレでしたね。まだまだ先は長そうなコロナ禍、お酒が飲めないなら飲めないなりに、ワクチンが在庫不足で打てないなら打てないなりに、それなりに楽しいグルメライフを送りましょう。

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出典)
「孤独のグルメ」 「孤独のグルメ2」 久住昌之/谷口ジロー/扶桑社

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