ハードコアボウリング少女マンガ「最後のストライク」
これはボウリングに命を懸けた少女の物語である
こんにちはJ君です。当サイトでは今まで様々な特殊ジャンルマンガをご紹介してまいりました。ジェットコースターマンガしかり庭職人マンガしかり・・・そして前回のSF野球マンガしかり。しかしふとあることに気付きました。そういえばボウリングマンガってあるのかな?と。昔ビリヤードマンガは流行りましたけど、ボウリングマンガはあまり聞きません。
ボウリング、ビリヤード、カラオケといえば終電を逃した若者達の三大娯楽ですよ。そんな日本を代表するメジャースポーツであるボウリングのマンガが存在しないなんて、こんなに不条理なことがあるでしょうか。いや!・・・必ずボウリングマンガは存在するはずだ!
というわけで「ボウリング マンガ」でググってみますと、「ボウリング・キング」「俺のマイボール」「カラコカコーン」「ラッキーボウルへようこそ!」「ピンクスパット」等々、少年・少女マンガあわせてそこそこの数のマンガが存在することが分かりました。検索している最中に「ボウリング・フォー・コロンバイン」なんてのも出てきましたがなんかヒゲ面のオッさんが出てくるアメリカ映画だったのでスルー。まぎらわしいのでやめて欲しい。
というわけでボウリングをテーマにしたマンガはそれなりに存在することが分かったのですが、そんな中から最も熱いボウリングマンガとしてJ君がチョイスしたのがこの一冊
りぼんマスコットコミックス
「最後のストライク」
こちらでございます。この主人公の目の輝きからして業界随一といっても過言ではありませんね(ボウリングマンガ業界)。
爆弾ではありません
ページをめくれば、お花をバックにこぼれ落ちそうなでかい眼の美少女といういわゆる少女マンガの構図。しかし手に持っているのは少女マンガにはおおよそミスマッチな巨大な黒い球体。そう、彼女こそは女ボンバーマン・・・ではなくこのマンガの主人公、さすらいの女ボウラー「アニー」なのです。
そんな「最後のストライク」。ストーリーはまさに、次々とヒロインの身に悲劇が起こるという少女マンガの伝統的様式美とボウリングがコラボしている究極のハードコアボウリング少女マンガだったのでございます。さっそくご紹介してまいりましょう。
あまりに自己流なフォーム
主人公の阿川丹子、通称アニーはボウリングのフォームは自己流ながら天性の才能と勝負強さで各地の草ボウリング大会に参加しては優勝し、賞金を稼ぎまくる通称「賞金稼ぎのアニー」といわれるさすらいの女ボウラーでした。
アニーはその金に対する執着心と試合中の態度の悪さで多くのボウリング関係者から嫌われ、恨まれる存在となっていたのです。しかし、アニーにはどうしても金に執着しなければならない切実な理由があったのです。その理由とは・・・
目の見えない弟
父親のタバコの不始末で起こった火事によって失明した弟の手術費を稼ぐためでした。
お父さん(当時)
さすが少女マンガです。こんな悲しい理由があるんなら賞金稼ぎもやむなしですね。そう、少女漫画界では「普通に働く」などといった平凡な発想を決してしてはいけない鉄の掟があるのです。だからボウリングで賞金稼ぎをするのは「必然」であるといえましょう。
お父さん(現在)
ちなみにアニーのお父さんは心労によりこんなに変わり果ててしまいました。お父さん・・・。頭頂部にストレス溜めすぎ。
そんな感じで悲しい宿命を背負い、世間に悪態をつきつつもボウリングで賞金を稼ぎまくるアニーですから当然敵も多いのでした。なぜかアニーの前にことごとく立ちふさがる謎のキザ男が登場します。
昭和のイケメン
この男は、関東アマチュアボウリング大会でアニーの優勝を阻むため、全米学生女子ボウラーのチャンピオン「ロマ」を呼び寄せ、アニー潰しを画策するのでした。大会に場違いな雰囲気の外人がいるのを見つけてアニーは思わず・・・
よい子は言っちゃダメ!
「ケ・・・毛唐?」
女の子がそんなこと言うもんじゃありません!
毛●ボウラーロマ
今までとは圧倒的に実力の違う刺客「ロマ」に動揺するアニー。未知の毛●ボウラーの前でアニーは初めての敗北を喫してしまいます。
しかし、敗北に納得がいかず、再戦を執拗に要求するアニーに向かってロマのさらなる屈辱の一撃が・・・
屈辱の札ビラビンタ
「くれてあげるわこの守銭奴に!!」
出ました、札ビラビンタ!(with守銭奴)。おなじみ、土下座と並ぶ日本人最大の屈辱シーンです。しかも相手が外人なので屈辱感倍増。同じ少女マンガでも「のだめ何とか」あたりには絶対出てこない衝撃シーンですね。さすが本格派少女マンガです。
今までにない屈辱に打ちひしがれるアニー。しかも宿敵ロマはプロテストを受けるためにアメリカに帰国してしまいました。そこで、アニーもロマに対抗してプロテストを受ける事を決意。ター坊の手術費を出すことを条件にアニーをスカウトしてきた会社、藤村観光に行ってみると・・・
目がキレイですね
例のキザ男が登場です。
この男は藤村観光の副社長、藤村隆史。ボウリング界で悪評を広げるアニーをこらしめるためになにかとアニーを妨害していたのですが、その後、目の見えない弟の事情を知り、アニーに協力することになったのでした。
しかし今の自己流フォームではとてもプロテストには合格できそうもありません。そこで藤村コーチによるフォーム矯正のための地獄の特訓が開始されます。
いかにもな特訓
見るからに地獄の特訓ですね。
その地獄の特訓により新フォームがようやっと身に付いてきたその時、再び悲劇は起こるのです。なんと、手術中だった弟のター坊が麻酔のショックで昏睡状態になったとの一報が!
病院に駆けつけるアニー。しかしそこは本格派少女マンガ、さらに不幸が加速して止まりません。運が悪いことに道ばたでぶつかった男達が、アニーのことを恨んでいた不良共だったのです。そして、リンチにあうアニー。ボウリングの命である右手にまで大怪我を負ってしまいます。
不幸は続く・・・
不良が立ち去り瀕死の状態で病院にたどり着いたアニー。しかし弟は依然昏睡状態。再手術は絶望的な状況でした。そして、さらにさらに最悪の事態が発生。右手に負った大怪我を藤村コーチに発見されてしまいます。コーチはアニーが不良とケンカをしたのだと勘違い。アニーは破門されてしまうのでした。
どこまで堕ちるのか・・・
ちょっと、ちょっとちょっと!(超酷い)
どうですか、この状況。この絶え間ない不幸の波状攻撃。「ハチ何とかクローバー」には絶対出てこなそうなこのどん底シーンこそ本格派少女マンガの醍醐味ですよ。
弟もボウリングも、全てを失ったアニーはついに意識を失い、雨の中で倒れ込んでしまいます。そして、意識を取り戻したアニーはなぜか・・・
注)ボウリングマンガです
漁船の中にいました。
少女マンガで漁船て!っていうかボウリングマンガで遠洋漁業て!なんだこの過酷すぎる展開!少女マンガの醍醐味とかいうレベルを超えてきた気がします。
しかし、アニーは一週間の遠洋漁業を経て幾多の試練をかいくぐってきた海の男達に励まされ、再びボウリング界への再起を誓うのでした。
そして再び、藤村コーチと共にプロテストに向けてボウリングを始めたアニーは、ケガをしている右手を封印し左手で特訓を開始。昏睡状態だったター坊は意識が回復し、プロテストまで合格してしまいました。ビックリするほど運気が回復しましたね。どんなジェットコースタームービーですかこれは。
プロになったアニーはついに宿敵の毛●ボウラー「ロマ」との因縁の再戦に臨みます。
掛け合いボウリング
「これでどう?」 「なんの!」
などといった実にボウリングらしい掛け合いのバトルの末、ついにアニーが勝利。アニーとロマの間に友情が生まれつつ、その後藤村コーチと婚約というハッピーエンドになります。やっぱり少女マンガたるもの最後はコーチとイイ感じになるのが定石。少女マンガはこうでなければいけませんね。
お約束のハッピーエンド
というわけで、ボウリングというマイナーなジャンルに、不幸のどん底からハッピーエンドという少女マンガの王道を見事にコラボさせ、なぜか遠洋漁業までも盛り込んだ究極の少女ボウリングマンガ「最後のストライク」をご紹介しましたがいかがだったでしょうか?
これを機会にマイナースポーツと少女マンガのコラボレーションの相性の良さが見直され、新しい作品が続々と生まれてくれることを心より祈っております。誰かゲートボールの特訓でマグロ漁船に乗りこんだりする熱血スポ魂少女マンガとか描いたりしてくれないですかね。もちろんタイトルは「ゲートをねらえ」で。
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出典) 「最後のストライク」 井出ちかえ(井出智香恵)/集英社